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第15話『人に限らないが、生命という物は環境に適応し、出来た物が生き残り、生命を繁栄させてきた』
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テオドール様の魔術をただボーっと見ていた私は、気が付くとイービルサイド家の中庭から見知らぬ場所の中庭に立っていた。
「……あれ? ここは」
「王城の中庭だよ。時間が無いのでね。転移魔術で移動した」
「そ、そうですか。転移魔術」
確か王城へ行く為には何日もかかるけれど、世の中には凄い魔術もあるんだなぁと関心してしまう。
そして、スタスタと中庭を歩くテオドール様に付いて、私も王城の中を歩いていった。
「さぁ、ここだ。少し緊張するかもしれないが、全て私に任せてくれればいい」
「は、はい」
テオドール様は穏やかな笑顔でそう私に告げると、その大きな扉の前で横に立っている人に目くばせをした。
扉の前に立っていた人たちは、小さく頷くと、二人でその大きな扉を左右に開いていくのだった。
そしてテオドール様は開いていく扉の中央を堂々と歩いて行く。
「お話の最中に失礼」
「……っ、何用だ」
「いえ。我が父より聞き捨てならない話を聞きましてね。こちらへ来た次第です」
「聞き捨てならぬ話だと?」
テオドール様の言葉に、部屋の一番奥に座っていた男の人が威圧感のある声を出して、空気を震わせる。
道の途中には左右に多くの人が立っているし、やけに注目されている気がして、今すぐ逃げ出したい気持ちだった。
でも、逃げ出してはいけない場だという事も何となく察するのだ。
「我が妹を、国王陛下が妻に迎えるというお話です」
「……!! 我が、妹だと!? まさか貴様!!」
「えぇ、その通り。こちらに居るエリカは我が、公爵家の末娘となった! 無論これはエリカ嬢もイービルサイド家も、そして当然ながら、我がデルリック公爵家も認識している事ですよ。叔父上。いいえ、国王陛下」
「舐めた事を。それほどまでに玉座が欲しいか! お前たちは!」
「これは異なことをおっしゃる。玉座に座っておられるのは陛下では無いですか。数十年前にそう決まったと記憶しておりますが。父も納得しておりますし。今更玉座など求めてはいませんよ」
「ならば、何故我の邪魔をする!! 聖女は我が」
「年端も行かぬ少女を! 己が欲望の為に使おうなどと、見苦しい真似はお止めください。伯父上。貴方は王となった。王になる道を選んだ。それは民草の為でしょう!? それを忘れ生きるのであれば、未来はありませんよ」
「それは、反逆の意思があるという事か!? 貴様!!」
「ただの忠言です。先ほども言いましたが、玉座を求めるのであれば、数十年前にやっております。今の状況をよく考えて下さい。本当に大事な物が何なのか」
「……っ」
「では、お伝えすべき事も全てお伝え出来ましたので、私と新しくデルリック公爵家の娘となりました。エリカも共に退出させていただきます。失礼」
テオドール様は深々と頭を下げると、そのまま私の手を取ってその大きな部屋から出て行くのだった。
そして、部屋の外に出てからテオドール様はまた中庭に向かい、そのまま魔術を使って、また別の場所へと向かう。
次にたどり着いたのは、見知らぬ小さな部屋の中だった。
「あっちへこっちへと申し訳ないね。だが、もう用事は終わったからゆっくりしよう。お茶にこだわりはあるかい?」
「い、いえ」
「では適当に入れさせてもらうよ」
テオドール様は近くにあった椅子に座る様に促すと、そのまま部屋の隅でお茶を用意し始めた。
それからそんなに時間を掛けずに、サイズの違うカップにお茶を入れて、近くのテーブルにそれを置く。
「あぁ、紹介が遅れたね。ここが私の研究室だ」
「ここが」
「そう。そっちの棚には色々と研究資料があるし、こっちの棚には素材が置いてある。一応気を付けてくれ」
「はい」
私は研究資料と言われて、思わずそちらの方をジッと見てしまった。
「気になるかい?」
「あっ、申し訳ございません」
「気にしなくて良いさ。君は私の妹だし。それにこれからは私の助手だ。興味があるのならば、それに越したことはない。見てみるかい?」
「見てみたいです!」
「うむ。素直で良い事だ。では私の研究テーマを説明しよう。簡単に言うと、私の研究テーマは魔術、精霊契約についてだ」
テオドール様はそう言うと、棚から複数の紙がまとまったファイルを取り出して、テーブルの上に置いた。
そして、一ページ目をめくりながら、内容を説明してくれる。
「さて。君がどの程度魔術について知識があるのか分からないが、一応イチから説明しておこうか」
「はい。ありがとうございます」
「うむ。では魔術、つまりは精霊契約について話そうか。そもそも精霊契約というのはその名の通り、様々な属性を持つ精霊と契約を行う事で、魔術を使えるようにするという事だが、この契約にはいくつかの欠点がある」
「欠点、ですか?」
「そうだ。この精霊契約だが、基本的には一つ無いし、二つの精霊としか契約が出来ないという事だ。それは精霊が好む性質をその人が持っていたとしても同様だ。例えばアリス君。君の妹君だね。彼女は現在光と水の精霊と契約しているが、彼女自身様々な精霊に好まれる人間であり、火や風の精霊とも契約をする事が可能なんだ。しかし、出来ない。何故だと思う?」
「えと、精霊さんが喧嘩してしまう、とかでしょうか?」
「面白い着眼点だが、理由はもっと別の場所にある」
「別の場所……」
「そう。実はね。本来人は精霊と契約して魔術を使える程、体が強くは無いんだよ」
「え!?」
驚きのあまり、私は思わず声を出してしまっていた。
だって、私はこの世界に来てから精霊さんたちと契約して、当たり前の様に魔術を使っていたからだ。
「驚くのも無理はない。だがこれは真実だ。だからこそ、シャーラペトラが現れた時、一部の限られた人間以外は精霊と契約する事が出来なかった。契約して力を使ってしまえば命を落とすと精霊がよく理解していたからだね。ならば、何故現代の人類が当たり前の様に魔術を使う事が出来るのか。これは長年謎とされてきたんだが、私はここで一つの仮説を立てた」
「……」
私はゴクリと唾を飲み込んで、テオドール様の話に集中する。
「私が立てた仮説としては、我々が精霊との契約に慣れたという物だ」
「慣れた。ですか?」
「そう。慣れたんだ。適応したという言い方でも良いかもしれないね。人に限らないが、生命という物は環境に適応し、出来た物が生き残り、生命を繁栄させてきた。例えば、そうだな。レイクミュービーという魔物を君は知っているかい? 大きな湖の傍で生活する鳥の様な魔物なのだが」
「いえ、知らないです」
「ふむ。そうだろうな。何故ならこのレイクミュービーという存在は既に滅んでいるからだ」
「……」
「彼らは巨大な湖に住み、湖の中に生息する小型の魔物を食べて生きていたが、それを長く続けていく内に、いつの間にか湖の中から彼らが餌とする小型の魔物が消えてしまったんだよ。その結果、彼らは食事が出来なくなってしまった」
私は思わず、その状況を想像して驚き、口を手で塞いでしまった。
「食事が出来なければ生きていく事は難しい。しかし、レイクミュービーは湖から離れて生活する術を知らない。どこまでも飛んで行ける翼を持とうとも、飛ぶ意味を持たなければ意味がない。その結果、一部のミュービーたちが湖から離れ、森に生きる小型の魔物を捕食する事で生き永らえたが、殆どのレイクミュービーは滅んでしまったという訳さ。そして残ったモノたちも森で生きるミュービーという事でフォレストミュービーと呼ばれるようになり、レイクミュービーは滅んだという訳さ」
「……つまり、人間も精霊と契約出来ない人は生きる事が難しく、より多くの精霊と契約を結べる者同士が子供を作っていたから、現代の様な状態になっていると」
「察しが良いね。そう。つまりはそういう事さ」
なるほどと頷きながら、私はテオドール様の話を楽しく聞いた。
そしてふと疑問に思った事を聞く。
「ですが、歴史上には三つ以上の属性を操った方が居ましたよね? そちらの方々は」
「ふむ。確かにいるね。だが、彼らについては二つの可能性がある。一つは、彼らが精霊の血を継ぐ者だったという可能性だ」
「精霊の血? というと、精霊さんと子を成した方が居たという事でしょうか」
「私も詳しくは無いがね。そういう人が居た事は確からしい。そしてその精霊の血を継いだ者は多くの精霊と契約出来たという事だ。そしてもう一つだが、こちらはもっと稀有な存在だ。いわゆる聖人と呼ばれる人々だね。聖女アメリアも同じだが」
「もしかして、あの様々な物語で語られている方々でしょうか」
「そう。よく知っているね。英雄とも呼ばれる者たちの事さ。まぁ、彼らに関しては詳しい資料が殆ど残っておらず、一説には大きな精霊の力を使う者たちが集まり、力を合わせて戦う姿を見た者が、複数の精霊と契約していると勘違いしたという話もあるが、詳細は不明だな」
「そうなんですね」
私は何となくその物語に出てくる様な英雄たちの姿を夢想して、思いを馳せた。
様々な精霊さんと話をして、力を発揮する人たちの事を。
「うむ。という訳で私は君が今気づいた疑問の様な事を調べ、魔術をより深く識る為に研究しているという訳だ。理解出来たかな?」
「はい」
「よろしい。では、最後に一つだけ注意しておくことがあるから、よく聞く様に」
「……」
私は不意に酷く真面目な顔になったテオドール様に驚きつつ、静かに頷いた。
「精霊契約というのは非常に便利だが、それと同時にとても危険だ。過去、精霊契約を研究している過程で、本人が受け入れる事が出来る限界以上の精霊と契約して死に至った者も居る。よく気を付けること。良いね?」
「はい」
「うむ、。良い返事だ。では明日からよろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
私は椅子から立ち上がり、元気よく頭を下げるのだった。
「……あれ? ここは」
「王城の中庭だよ。時間が無いのでね。転移魔術で移動した」
「そ、そうですか。転移魔術」
確か王城へ行く為には何日もかかるけれど、世の中には凄い魔術もあるんだなぁと関心してしまう。
そして、スタスタと中庭を歩くテオドール様に付いて、私も王城の中を歩いていった。
「さぁ、ここだ。少し緊張するかもしれないが、全て私に任せてくれればいい」
「は、はい」
テオドール様は穏やかな笑顔でそう私に告げると、その大きな扉の前で横に立っている人に目くばせをした。
扉の前に立っていた人たちは、小さく頷くと、二人でその大きな扉を左右に開いていくのだった。
そしてテオドール様は開いていく扉の中央を堂々と歩いて行く。
「お話の最中に失礼」
「……っ、何用だ」
「いえ。我が父より聞き捨てならない話を聞きましてね。こちらへ来た次第です」
「聞き捨てならぬ話だと?」
テオドール様の言葉に、部屋の一番奥に座っていた男の人が威圧感のある声を出して、空気を震わせる。
道の途中には左右に多くの人が立っているし、やけに注目されている気がして、今すぐ逃げ出したい気持ちだった。
でも、逃げ出してはいけない場だという事も何となく察するのだ。
「我が妹を、国王陛下が妻に迎えるというお話です」
「……!! 我が、妹だと!? まさか貴様!!」
「えぇ、その通り。こちらに居るエリカは我が、公爵家の末娘となった! 無論これはエリカ嬢もイービルサイド家も、そして当然ながら、我がデルリック公爵家も認識している事ですよ。叔父上。いいえ、国王陛下」
「舐めた事を。それほどまでに玉座が欲しいか! お前たちは!」
「これは異なことをおっしゃる。玉座に座っておられるのは陛下では無いですか。数十年前にそう決まったと記憶しておりますが。父も納得しておりますし。今更玉座など求めてはいませんよ」
「ならば、何故我の邪魔をする!! 聖女は我が」
「年端も行かぬ少女を! 己が欲望の為に使おうなどと、見苦しい真似はお止めください。伯父上。貴方は王となった。王になる道を選んだ。それは民草の為でしょう!? それを忘れ生きるのであれば、未来はありませんよ」
「それは、反逆の意思があるという事か!? 貴様!!」
「ただの忠言です。先ほども言いましたが、玉座を求めるのであれば、数十年前にやっております。今の状況をよく考えて下さい。本当に大事な物が何なのか」
「……っ」
「では、お伝えすべき事も全てお伝え出来ましたので、私と新しくデルリック公爵家の娘となりました。エリカも共に退出させていただきます。失礼」
テオドール様は深々と頭を下げると、そのまま私の手を取ってその大きな部屋から出て行くのだった。
そして、部屋の外に出てからテオドール様はまた中庭に向かい、そのまま魔術を使って、また別の場所へと向かう。
次にたどり着いたのは、見知らぬ小さな部屋の中だった。
「あっちへこっちへと申し訳ないね。だが、もう用事は終わったからゆっくりしよう。お茶にこだわりはあるかい?」
「い、いえ」
「では適当に入れさせてもらうよ」
テオドール様は近くにあった椅子に座る様に促すと、そのまま部屋の隅でお茶を用意し始めた。
それからそんなに時間を掛けずに、サイズの違うカップにお茶を入れて、近くのテーブルにそれを置く。
「あぁ、紹介が遅れたね。ここが私の研究室だ」
「ここが」
「そう。そっちの棚には色々と研究資料があるし、こっちの棚には素材が置いてある。一応気を付けてくれ」
「はい」
私は研究資料と言われて、思わずそちらの方をジッと見てしまった。
「気になるかい?」
「あっ、申し訳ございません」
「気にしなくて良いさ。君は私の妹だし。それにこれからは私の助手だ。興味があるのならば、それに越したことはない。見てみるかい?」
「見てみたいです!」
「うむ。素直で良い事だ。では私の研究テーマを説明しよう。簡単に言うと、私の研究テーマは魔術、精霊契約についてだ」
テオドール様はそう言うと、棚から複数の紙がまとまったファイルを取り出して、テーブルの上に置いた。
そして、一ページ目をめくりながら、内容を説明してくれる。
「さて。君がどの程度魔術について知識があるのか分からないが、一応イチから説明しておこうか」
「はい。ありがとうございます」
「うむ。では魔術、つまりは精霊契約について話そうか。そもそも精霊契約というのはその名の通り、様々な属性を持つ精霊と契約を行う事で、魔術を使えるようにするという事だが、この契約にはいくつかの欠点がある」
「欠点、ですか?」
「そうだ。この精霊契約だが、基本的には一つ無いし、二つの精霊としか契約が出来ないという事だ。それは精霊が好む性質をその人が持っていたとしても同様だ。例えばアリス君。君の妹君だね。彼女は現在光と水の精霊と契約しているが、彼女自身様々な精霊に好まれる人間であり、火や風の精霊とも契約をする事が可能なんだ。しかし、出来ない。何故だと思う?」
「えと、精霊さんが喧嘩してしまう、とかでしょうか?」
「面白い着眼点だが、理由はもっと別の場所にある」
「別の場所……」
「そう。実はね。本来人は精霊と契約して魔術を使える程、体が強くは無いんだよ」
「え!?」
驚きのあまり、私は思わず声を出してしまっていた。
だって、私はこの世界に来てから精霊さんたちと契約して、当たり前の様に魔術を使っていたからだ。
「驚くのも無理はない。だがこれは真実だ。だからこそ、シャーラペトラが現れた時、一部の限られた人間以外は精霊と契約する事が出来なかった。契約して力を使ってしまえば命を落とすと精霊がよく理解していたからだね。ならば、何故現代の人類が当たり前の様に魔術を使う事が出来るのか。これは長年謎とされてきたんだが、私はここで一つの仮説を立てた」
「……」
私はゴクリと唾を飲み込んで、テオドール様の話に集中する。
「私が立てた仮説としては、我々が精霊との契約に慣れたという物だ」
「慣れた。ですか?」
「そう。慣れたんだ。適応したという言い方でも良いかもしれないね。人に限らないが、生命という物は環境に適応し、出来た物が生き残り、生命を繁栄させてきた。例えば、そうだな。レイクミュービーという魔物を君は知っているかい? 大きな湖の傍で生活する鳥の様な魔物なのだが」
「いえ、知らないです」
「ふむ。そうだろうな。何故ならこのレイクミュービーという存在は既に滅んでいるからだ」
「……」
「彼らは巨大な湖に住み、湖の中に生息する小型の魔物を食べて生きていたが、それを長く続けていく内に、いつの間にか湖の中から彼らが餌とする小型の魔物が消えてしまったんだよ。その結果、彼らは食事が出来なくなってしまった」
私は思わず、その状況を想像して驚き、口を手で塞いでしまった。
「食事が出来なければ生きていく事は難しい。しかし、レイクミュービーは湖から離れて生活する術を知らない。どこまでも飛んで行ける翼を持とうとも、飛ぶ意味を持たなければ意味がない。その結果、一部のミュービーたちが湖から離れ、森に生きる小型の魔物を捕食する事で生き永らえたが、殆どのレイクミュービーは滅んでしまったという訳さ。そして残ったモノたちも森で生きるミュービーという事でフォレストミュービーと呼ばれるようになり、レイクミュービーは滅んだという訳さ」
「……つまり、人間も精霊と契約出来ない人は生きる事が難しく、より多くの精霊と契約を結べる者同士が子供を作っていたから、現代の様な状態になっていると」
「察しが良いね。そう。つまりはそういう事さ」
なるほどと頷きながら、私はテオドール様の話を楽しく聞いた。
そしてふと疑問に思った事を聞く。
「ですが、歴史上には三つ以上の属性を操った方が居ましたよね? そちらの方々は」
「ふむ。確かにいるね。だが、彼らについては二つの可能性がある。一つは、彼らが精霊の血を継ぐ者だったという可能性だ」
「精霊の血? というと、精霊さんと子を成した方が居たという事でしょうか」
「私も詳しくは無いがね。そういう人が居た事は確からしい。そしてその精霊の血を継いだ者は多くの精霊と契約出来たという事だ。そしてもう一つだが、こちらはもっと稀有な存在だ。いわゆる聖人と呼ばれる人々だね。聖女アメリアも同じだが」
「もしかして、あの様々な物語で語られている方々でしょうか」
「そう。よく知っているね。英雄とも呼ばれる者たちの事さ。まぁ、彼らに関しては詳しい資料が殆ど残っておらず、一説には大きな精霊の力を使う者たちが集まり、力を合わせて戦う姿を見た者が、複数の精霊と契約していると勘違いしたという話もあるが、詳細は不明だな」
「そうなんですね」
私は何となくその物語に出てくる様な英雄たちの姿を夢想して、思いを馳せた。
様々な精霊さんと話をして、力を発揮する人たちの事を。
「うむ。という訳で私は君が今気づいた疑問の様な事を調べ、魔術をより深く識る為に研究しているという訳だ。理解出来たかな?」
「はい」
「よろしい。では、最後に一つだけ注意しておくことがあるから、よく聞く様に」
「……」
私は不意に酷く真面目な顔になったテオドール様に驚きつつ、静かに頷いた。
「精霊契約というのは非常に便利だが、それと同時にとても危険だ。過去、精霊契約を研究している過程で、本人が受け入れる事が出来る限界以上の精霊と契約して死に至った者も居る。よく気を付けること。良いね?」
「はい」
「うむ、。良い返事だ。では明日からよろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
私は椅子から立ち上がり、元気よく頭を下げるのだった。
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