最強ショタ魔王の家出録〜ショタ化した元おっさん、偶然出会った勇者と共に世界平和を目指します〜

青王(あおきんぐ)

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3章 第二の街 ウォルトス

44話 言い訳

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 魔族の男(シギサ)と遭遇したユーリ達はスカーレットにその正体について詰め寄っていた。
 

「あの男は何なんだ!? 魔族なんだろう!?」
 
「いいえ。あれは――――仮装です……!」

「は……?」

「仮装!? そんなわけないでしょう!?」

 スカーレットが口にした言い訳はまさかの仮装というものだった。
 スカーレットの予期せぬ言葉にリリィは唖然とし、セリーヌは声を荒らげて返した。

 
 ――おいおい、スカーレットさんよ。
 仮装ってそれは無理があるだろー。
 それで騙されてくれるのは余程のアホだけだぞ……。

 
「本当です。今日このオフィスでは仮装パーティーが行なわれているのです。先程皆さんが見た男はシギサさんです」

「えぇ!? あ……でも確かに少し似てたかも?」

「た、確かに言われてみればオイラもそんな気がしてきました」

 しかし俺の予想とは裏腹にユーリとボンズは簡単に騙され始めていた。
 そこでスカーレットは未だ疑いの目を向けている女性陣に対し、更に追い討ちをかける為の秘策を実行した。

 
「エル様! こちらへ!」

 スカーレットは部屋の隅で様子を伺っていた俺を呼んだ。
 俺はスカーレットに気付かれていた事に驚いたが、そんな素振りは一切見せず彼女らの元へと向かった。


「さて、皆様。よーくご覧下さい。こちらが、魔族の姿に仮装したエル様です!!」

「え……!?」

 そう言いスカーレットは俺の姿を皆にお披露目した。
 そして俺はこの時気が付いた。
 シギサ達にあれだけ指示を出していたというのに、自分の姿を【隠蔽】し忘れていた事に。

 ――まずい……!!
 このままでは俺が魔族だってバレてしまう……!
 どういうつもりだ、スカーレット!?
 
 あぁ……これで全部終わった……。
 もうここは潔くユーリ達に俺は魔王として殺されて世界を平和に……。

 俺がそう考えているとセリーヌとリリィが一斉に俺に抱きついて来た。

「可愛い過ぎるぅーー!!! エルきゅんヤバすぎぃぃぃぃ!!!」

「エル……可愛すぎだよ……。こんなに可愛い魔族がいたらリリィ困る……」

「え……えぇーーー!?」

 しかし俺の心配を他所に、彼女らはスカーレットの嘘に綺麗に騙されて俺のこの姿が仮装だと思い込んでいるようだった。そして何故だかとても大好評であった。

 
「え、え? 二人とも、僕のこの姿を見て怖くないの?」

「怖い? 可愛いの間違いでしょう? こんな角まで付けて。本当に可愛いわぁエルきゅん……♡」

「セリーヌ、もういいでしょ……。次はリリィがエルを可愛がる番……。あぁ、全部の魔族がエルくらい可愛かったらいいのに……」

 二人は俺の頭や角を撫で回し、全力で俺を愛で倒した。
 俺はこの状況に戸惑いを隠せないでいた。
 スカーレットはそんな俺に目配せをした。
 
 ――いやいやスカーレット……。
 これがお前の策だと言うのか……。
 こんな形でこの状況を打破するとは……。
 だとしたら……。

「――――グッジョブ……!」

 俺はスカーレットに満面の笑みでグーサインを送った。すると彼女はすこぶる嬉しそうな表情を浮かべた。

 ――あぁ、最高だ……。
 二人に抱き着かれ、色んな所を押し付けられて俺の身体が幸せだと叫んでいる。
 
 俺の体の前方に伝わる柔らかい感触……。
 これはセリーヌの大きい胸だ。
 彼女はスカーレットにこそ及ばないが、そもそもとんでもない美女だ。
 
 そして後ろから伝わる小さな膨らみと幸せ……。
 これはリリィだろう。
 彼女は成長しきっていない部分もあるが、顔はとても可愛いし、素晴らしいロリっ子だ。
 
 そんな可愛く、美しい二人の幸せな感触に包まれ、俺は今すぐにでも天に召されそうになっていた。
 その時、ユーリが突然我に返り口を開いた。
 

「は……! つい、ぬるぬるのスカーレットに見とれてて忘れてたよ……! 俺達はシギサに騙されてたんだった!」

「そうですよ! スカーレットさん、エル君! シギサさんはどうなったんですか?」

 ユーリに続いて、ボンズは俺とスカーレットに真面目な表情でそう聞いて来た。
 俺はセリーヌとリリィの温もりから離れ、ユーリ達に向き直った。

 ――そういえばその件の事、すっかり忘れてたな。
 シギサに言えば金は返してくれるだろうし、まぁ問題はないか。
 
 それよりも、ユーリ達にどうやってアイツらと友好関係を結んだ事を伝えるかだな。
 魔族に回復薬を作らせて人間との関係を――――なんて言えるわけないしな……。

 
「んー。まぁとりあえず騙し取ったお金は返してもらえる事になったよ! でもあの人にも少し事情があったみたいなんだ」

「お金は返って来るのか、よかったー! でも事情って……?」

 俺の言葉を聞き、ユーリは怪訝な表情を浮かべた。
 しかし俺はそんなユーリに構わず説明を続けた。

「シギサは凄い回復薬を作る為に研究してるんだって。でもその為にはお金が必要。……だからあんな詐欺みたいな事をしちゃったんだって言ってたよ」

 俺はユーリに本当の事を正直に説明をした。
 アイツらが魔族だということだけを伏せて。
 
 普通の人にならこんな事を言っても『だから何?』って言われるのがオチだろうけど、このアホは違う。
 
「そっかぁー! 凄い回復薬かぁー! それを作る為ならしょうがないね!」

 ――やっぱりそうなったか。
 だが、俺は信じていたよ。
 ユーリ、お前がどこまでいってもド級のアホだということを……!

 
「うん。だからシギサに悪気は無かったみたいだし、許してあげてくれる?」

「あぁ勿論だよ! そんな凄い回復薬を作ろうとしてるいい人なら、これからも頑張って欲しいしね!」

「セリーヌとリリィは……? あの薬のせいで二人は大変な目に遭っちゃったけど……」

「エルきゅんがそう言うなら全然許すわ……! そもそも騙されたアホが悪いんだし」

「リリィも同感……。ユーリとボンズがアホだっただけ……。リリィも許すよ、エル可愛いし……」

「二人ともエル君に盲目すぎでは……? でも二人がいいならオイラも騙された事は水に流すよ」

 こうして見事シギサは許された。
 俺とスカーレットの嘘によって。

 ――それにしてもこの件はシギサの嘘から始まって、俺の嘘によって終わるって何とも皮肉な話だよな。
 まぁコイツらはそれに気付いてないけど。

 でもこれでアイリス達が作る回復薬を人間に売る事を怪しまれなくなったな。
 後はこのままこの場を上手く立ち去って……。

 
 俺がそう考えているとその場へ突然ワープゲートが開き、アイリスが現れた。そして彼女は俺の前に膝まづき、頭を下げた。


「魔王様。少し確認したいことがあるのですが……」

「………………。」

 俺はアイリスの言葉に何も返答しなかった。
 いや、出来なかった。

 ――おいおいおい……!
 アイリス……!?
 何で帰ってきた!?
 しかも今俺の事魔王様って言っちゃったよね!?
 これはまずい、完全にバレた。
 もう終わりだ……。


「魔王様……? どうかなさいましたか?」

 すると更にアイリスは俺に声を掛けて来た。
 
 ――アイリス、もうやめてくれぇー!
 オーバーキルだよそれはァ!
 ほら、ユーリ達もこっち見てるし!
 
 はぁ……もう諦めるか……。
 ここまで来たらもう誤魔化しようがないだろう。

「いや大丈夫だ。何でもない。それで、アイリスよ。確認したい事とは何だ?」

 俺の完全な魔王ムーブを目にしたユーリ達は大きく口を開けて呆然としていた。
 そんな中、セリーヌがおもむろに言葉を発した。

「エルきゅん……? 今のって――――」

 ―― そうだよ、セリーヌ。
 これが俺の本当の姿だ。
 驚いたよな。ショックだよな……。
 ごめんな、騙してて。

 俺がそう心の中で呟いているとセリーヌは続けて思いもよらない言葉を口にした。

「エルきゅん今のって魔王の真似……? 可愛すぎるんだけど……」

「え?」

「エルきゅんの魔王の真似、可愛いすぎるぅーー!!」

「あれ?」

「なっ……!?」

 セリーヌはそのまま俺に物凄い勢いで再度抱き着いて来た。その一部始終を見ていたアイリスは戸惑いを見せている。そしてそれは俺も同じだった。

 ――セリーヌはよくわからない勘違いをしてくれているけど、他の皆はどうだ……?
 俺はこのまま魔王バレしてユーリ達に殺られてしまうのか……?

 いや、まぁ正直負ける気は全くしないが。
 とにかく次はアイリスを上手く動かさないと、俺とスカーレットの苦労が水の泡になってしまう。

 しかしこのアイリスの登場がこの場の展開を更に加速度的に俺の都合が良い方へと向かわせるのだった。

 
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