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第4章 ジャペン編
98話 異世界人
しおりを挟む「じゃあさ、じゃあさ! ウチにもそのギャルってヤツ、教えてよっ!」
「は……?」
彼女の思いもよらない言葉によって、黒とピンクに彩られた部屋に沈黙が流れた。
「いやいや。『は……?』じゃなくって……! ウチにも教えてよっ! "異世界"のギャルってやつをさ!」
――彼女は何を言っているんだ……?
この口ぶりや、ギャルを知らない事から察するに、彼女は異世界人じゃない……?
でも、それじゃあ何で彼女の口から"異世界"や、"ギャル"って言葉が出てくるんだ?
「ちょ、ちょっと待て……。君は、その……異世界人では、ないのか……?」
「えー? 何言ってんの、そんな訳ないしー! 僕ちん、さては馬鹿だなー? キャハハーッ!」
戸惑う俺を置き去りに、彼女は腹を抱えて笑っている。
「じゃ、じゃあ何で君の口から、異世界とかギャルって言葉が出てくるんだよ!? おかしいじゃないか……!」
俺が取り乱した様子で詰め寄ると、彼女は途端に真面目な顔付きになり、ゆっくりと口を開いた。
「別になーんもおかしくなんかないよ。だって、ウチのママ――――異世界人だもん」
「何……だと……?」
――ウチのママ異世界人。ウチのママ異世界人。ウチのママ異世界人。ウチのママ異世界人……。
俺の頭の中で、彼女が放った言葉が永遠にループし続けた。そして、唐突に告げられた俺以外の異世界人の存在に、俺は頭の中を掻き乱され、理解が追いつかないでいた。
「へ、へぇー……」
「あれー? 意外と薄い反応だねー? ウチ、何かまずいこと言っちゃった?」
――俺以外の異世界人の存在……。
今まで出会った奴らの中に、とりわけ現代を連想させるような奴はいなかった。
加えて、これまでも考えなかったわけではないけど、魔王が俺で勇者はユーリということもあって、そんな心配を一切して来なかった。
それより俺、さっき彼女に自分が異世界人だとバラしてしまったよな……?
彼女はロクサーヌ、若しくはその部下の魔族。
つまりは敵かもしれない相手に俺は、秘密を知られた事になる。
これは、控えめに言ってもまずくね……?
「あ、あのさ……。俺が異世界人って事、誰にも言わないでくれないか……?」
「ん? 別に最初から誰にも言うつもりなんてないよー? てか、ウチのママが異世界人だってバラしたのも僕ちんが初めてだしー?」
「そ、それならよかった……。悪いけど頼むわ……」
俺は安堵の表情を浮かべ、ホッと胸を撫で下ろした。
すると彼女はそんな俺を見て、ニヤリと笑い口を開いた。
「キャハ……。でもー。タダでお願いを聞くなんてのも面白くないよねー?」
「ふんっ。交換条件ってわけか……。いや、この場合、等価交換か……」
俺の言葉を聞いてなのか、表情を見てなのか、彼女はニコニコとした笑顔で俺を見つめ、何度も頷いていた。
「で、どーすんの!? ウチが出す条件、呑むの? 呑まないの?」
「う……わかった。何でもする。だからこの事は黙っておいてくれ……」
俺は秘密を守る事を約束してもらう代わりに、どんな条件でも呑む事を了承した。それだけ、俺が異世界人だということが周りにバレるのはまずいと考えていたからだ。
その理由はいくつかあるが、最も大きな要因として、俺が異世界人だとバレれば、争いを止める事が困難になる恐れがあるからだ。
例えば、カップルの喧嘩に知らないおじさんが割って入ったとして、カップルは喧嘩を辞めるだろうか?
答えは、否だ。
なぜならカップルにとって、そのおじさんは部外者だからだ。部外者の言う事など、この上なくどうでもいい事。聞くに値しないのだ。
そしてそれらをこの世界に置き換えた場合、カップルが人間と魔族。そしておじさんが俺だ。
そんな奴の言う事を誰が聞き入れるだろうか。
だから俺は異世界人という事を隠し、魔王として行動する必要があるのだ。
――まぁ、今となってはただのショタとして行動している事の方が圧倒的に多いんだけどね……。
「おけー! 決まりねー! じゃあ早速だけど――――」
「――――待て。その前に、いくつか聞きたいことがある」
俺がそんな事を考えていると、彼女は軽い返事をして、早速本題に入ろうと口を開いた。だがその前に、俺は聞きたい事もあった為、一旦それを制止する。
「えー、何ー? 聞きたいこと?」
「そうだ。君の母親についてだ……」
「ママのこと?」
「あぁ。俺はこの世界に転生して来て一〇年。未だ他の異世界人と出会った事がない。だから教えてくれないか、君の母親の事を……」
「いーよー! じゃあーまず、何から聞きたい? ママとパパの馴れ初めとか?」
――えらく軽い返事だな……。
まぁ教えてくれるみたいだし、別にいいか。
「あぁ。君の話しやすい様に話してくれて構わない。もし聞きたい事があれば、俺がその都度質問するよ」
「わかったー! じゃあまず、ママの事だけど。ママは異世界ではギャルってヤツだったらしいんだよねー。こっちに来たのは一八歳の時だったんだってー!」
「あ、あのさ。いきなりで悪いんだが、その……君の――――」
「――――ママでいいよ!」
「君の……ま、ママは……異世界で死んだのか……?」
「うーん、死んだとかは言ってなかったかなー? なんか寝て起きたらこの世界にいたらしいよ!」
――死んでいない……?
つまり俺の様な"転生"ではなく"転移"なのか?
寝て起きてってことは、女神様とも会っていないだろうし、チート能力も無しか。
それにどうやらこの世界の人間に召喚されたって訳でもなさそうだ。
「それでー、とりあえず行く宛ても無いし、やる事どころか住む所もなかったママはー、一旦近くの街の店で働く事にしたんだって。でー、その働いた店ってのが所謂、居酒屋だったんだけどー、そこの常連さんだったパパと出会って五日で付き合って、半年で結婚したんだってー!」
――五日で付き合って半年で結婚……!?
ギャルの生きる速度ハンパねぇー……。
いきなり異世界転移して来て、そんな事出来るかよ普通……?
すげぇなマジで……。
「そ、そうなのか。それですぐ、君が生まれたわけか。それからママはどうしたんだ?」
「うーん。それからは別に普通だと思うよー? パパは街で普通に働いてたし、ママも私の事をちゃんと育ててくれてたしー?」
「そうか。じゃあ君のママはちゃんと馴染んでたんだな、この世界に……」
「だねー。でも自分がギャルって事だけは、どうしても捨てきれなかったみたいでさー、家の中はマジでこんな感じー。そりゃあーウチも影響されるよねーって話だよねー! キャハハーッ!」
――なるほど。この子のギャルっぽい口調や外見、趣味趣向は、現代ギャルだった母親の影響って事か。
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「まぁそらそうだよな。で? 君のママはどこにいるんだ? 君が生まれた街でパパと二人で暮らしているのか?」
「え? 何言ってんのー? ママもパパもとっくの昔に死んじゃったよー?」
「は……? いや、だって君……あっ……」
彼女の言葉を聞き、俺は一瞬動揺してしまったが、すぐに彼女が死人である事を思い出し口を噤んだ。
「キャハ……。その反応……。僕ちん、ウチが死人だって事、気付いてるよねー?」
そう言うと彼女は、口角を上げてニヤリと笑いながら俺を見つめていた。
――今のはマズったな……。
まぁしょうがない。ここまで来たらもう隠せないだろう。
「あぁ。気付いてるよ。君の手に触れた時からな」
「あちゃー……。そうだったのー? じゃあ言ってくれればよかったのにぃー!」
「言えるわけないだろ……。それより、死人とわかったついでに、ひとつ聞きたいんだが」
「何ー?」
「君の両親は人間なんだろ? じゃあ何故君は死人になってしまったんだ?」
「キャハ……。それ聞いちゃうー?」
「いや、普通に気になるだろ……」
「まぁそっかー。そうだよねー……。じゃあ教えてあげる。私が死人になった理由はー……」
ゴクリ……。俺は生唾を呑み、彼女が次に発するであろう言葉を待った。
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俺は再び、理解が追いつかないスパイラルへと誘われてしまった。
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