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章1
好きな人の好きな人の話を聞いている気分の好きな人とかいうゲシュタルト崩壊(2)
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「そ、っか」
顔を上げた勝宏が、透の言葉にぼんやりと返す。
これで誤魔化せたかどうかは、分からない。
けれど少なくとも、彼が謝ることはないのだとだけでも伝わってくれればいい。
「それより、あの、さっきの戦いで勝宏の体に何か変な光が入っていったんだけど、大丈夫?」
厳密に言うとウィルが無造作に弾き飛ばしたものが勝宏の方に飛んで行ったのだが、騒動に騒動が重なってその光については未だ確認が取れていない。
「うん? いや、別になんともないけど……」
「ステータスの文字化けが増えたりしてない?」
「えーっと……あれ」
透に訊ねられてステータス画面を確認した勝宏が、首を傾げる。
「増えるんじゃなくてこれ、減ってる? か? あ、でも増えてる?」
どういうことだろう。
こちらが訊き返す前に、彼はステータス画面を開示設定にしてくれた。
<英雄>
――模倣はやがて理想になる
【!】アリアルの種子スキルです。スキルの進化先が3通り用意されています。
↓
①<?クサ?ココ??ャ>
――?????ケ??ヲ??ッ?????ソ??ョ?オ??????ク
*進化条件が揃っていません。
達成済:熟練度
未達成:<??イ??「>の討伐
②<強欲>
――?????ケ??ヲ??ョ?。????????????ョ?????ョ?クュ??ォ
*進化条件が揃っていません。
達成済:熟練度
未達成:種子(1/2)
③<傲慢>
――好奇心とは追放の契機である
*進化条件が揃っていません。
達成済:種子(2/2)
未達成:熟練度
確かに、文字化けの比率は減っている。
魔物に転生していた<暴食>の人は、確かもっと文字化けしていた気がするが――これが例の光の影響だろうか。
それとも、アリアルが何か勝宏のデータをいじった、とか。
「し、詩絵里さんに、見てもらおう」
「ああ……」
自然と思い至ってしまった可能性に肝が冷えた。
慌てて立ち上がって、部屋の扉を開ける。
「透」
出ていこうとした透の背中に、勝宏が呼びかける。
「まだ、ついてきてくれるか?」
……それは、いつかの彼の「お願い」と、とてもよく似た問いかけだった。
迷うことはある。未だに言えない秘密がある。
悲しいことだって目を背けたいことだって、たくさん知らされてきた。
でも、その重たい全部を抱え込んで苦しい思いをしても、彼に望まれているうちは、逃げるようなことはしたくない。
「うん、もちろん。……これからは俺も、もう少し役に立てるはずだから」
待っててね。ベッドの上に勝宏を残して、女性陣の休む部屋に向かった。
連れてきた詩絵里に同じようにステータス画面を見てもらう。
ノートパソコンを持ち込んだ詩絵里は、自分のステータス画面を見比べて頷いた。
「……妙な光が透くんたちのところに向かっていったのは、私も見てたわ」
「私も見ました! なんか、蛍の光みたいなふわーっとしたやつでしたね」
「可能性として考えられるのは、透くんの回復魔法が影響して文字化けが改善されたって説と、その光が入り込んだことで文字化けが改善されたって説の二つだけど――」
詩絵里がノートパソコンで開いているのは、例の七つの大罪のスキルをまとめた表計算シートだ。
虫食いのような状態だった表に、次々と新しい情報が埋められていく。
・傲慢(スペルヴィア)……仕様不明。候補者:既に脱落済み。→勝宏へ譲渡
・憤怒(イーラ)……嫉妬と似た条件下で発芽する模様。修復もしくは回復補助スキル。候補者:【不明】、【不明】
・嫉妬(インヴィディア)……発芽条件は「不幸」? 今回ウルティナに使われようとしていたもの。どこかに飛んで行った。防御系スキル。候補者:【ウルティナ】、【不明】
・怠惰(アケーディア)……転移系スキル。候補者:【リファス】、【不明】
・強欲(アウァーリティア)……仕様不明。候補者:【勝宏】、【不明】
・暴食(グーラ)……捕食による模倣と吸収スキル。候補者:既に脱落済み。
・色欲(ルクスリア)……練成系スキル。候補者:【詩絵里】、【不明】
「まず、あの敵対していたショタはSスキル持ちだったわ」
「イベント作成スキル、なんてポイントで取れたら神にもなれるスキルですしね。勝宏さんの身体強化スキルとはえらい違いですけど……」
「たぶんそれは、あのショタが既にスキルを進化させていた……と考えるのが妥当でしょうね」
詩絵里が作成した表を、ルイーザと勝宏ものぞき込む。
彼らにはこのデータを作成していたことを話していなかったので、これが初のお披露目である。
「対になるSスキル持ちの転生者は、あいつにもう倒されてたってことか?」
「ええ。光が「Sスキル所持者を倒した時に手に入る種子」だったとするなら、<傲慢>があのショタの持っていた、進化済みのSスキルだわ」
そして、この書き方だと勝宏がもともと持っていたSスキルの進化先は、<強欲>であることがわかる。
この場で最も情報を所持しているのは透だ。
<怠惰>に対応する悪魔がウィルであるように、<強欲>や<傲慢>に対応する悪魔も、おそらくはアリアルだろう。
とすると、アリアルの力は巣――ゲームをもとに「世界」を作るもの。
<強欲>もしくは<傲慢>に、世界を作るスキルと似たような効果のSスキルが含まれている可能性は高い。
それこそ、イベント作成スキルなんてまさしくゲーム作りのスキルである。
「あの、詩絵里さん……」
「なに透くん、他に気付いたこととかある?」
きっと、今ここで――この世界がゲームの世界であること、アリアルが疑似的な世界を作るスキルを持っていることを話せば、このデータの精度は上がる。
勝宏の進化先のスキルのことだって、詩絵里が考察してくれればもっと具体的なことが分かるかもしれない。
「いえ……気のせいでした」
打ち明ける勇気はまだ、なかった。
顔を上げた勝宏が、透の言葉にぼんやりと返す。
これで誤魔化せたかどうかは、分からない。
けれど少なくとも、彼が謝ることはないのだとだけでも伝わってくれればいい。
「それより、あの、さっきの戦いで勝宏の体に何か変な光が入っていったんだけど、大丈夫?」
厳密に言うとウィルが無造作に弾き飛ばしたものが勝宏の方に飛んで行ったのだが、騒動に騒動が重なってその光については未だ確認が取れていない。
「うん? いや、別になんともないけど……」
「ステータスの文字化けが増えたりしてない?」
「えーっと……あれ」
透に訊ねられてステータス画面を確認した勝宏が、首を傾げる。
「増えるんじゃなくてこれ、減ってる? か? あ、でも増えてる?」
どういうことだろう。
こちらが訊き返す前に、彼はステータス画面を開示設定にしてくれた。
<英雄>
――模倣はやがて理想になる
【!】アリアルの種子スキルです。スキルの進化先が3通り用意されています。
↓
①<?クサ?ココ??ャ>
――?????ケ??ヲ??ッ?????ソ??ョ?オ??????ク
*進化条件が揃っていません。
達成済:熟練度
未達成:<??イ??「>の討伐
②<強欲>
――?????ケ??ヲ??ョ?。????????????ョ?????ョ?クュ??ォ
*進化条件が揃っていません。
達成済:熟練度
未達成:種子(1/2)
③<傲慢>
――好奇心とは追放の契機である
*進化条件が揃っていません。
達成済:種子(2/2)
未達成:熟練度
確かに、文字化けの比率は減っている。
魔物に転生していた<暴食>の人は、確かもっと文字化けしていた気がするが――これが例の光の影響だろうか。
それとも、アリアルが何か勝宏のデータをいじった、とか。
「し、詩絵里さんに、見てもらおう」
「ああ……」
自然と思い至ってしまった可能性に肝が冷えた。
慌てて立ち上がって、部屋の扉を開ける。
「透」
出ていこうとした透の背中に、勝宏が呼びかける。
「まだ、ついてきてくれるか?」
……それは、いつかの彼の「お願い」と、とてもよく似た問いかけだった。
迷うことはある。未だに言えない秘密がある。
悲しいことだって目を背けたいことだって、たくさん知らされてきた。
でも、その重たい全部を抱え込んで苦しい思いをしても、彼に望まれているうちは、逃げるようなことはしたくない。
「うん、もちろん。……これからは俺も、もう少し役に立てるはずだから」
待っててね。ベッドの上に勝宏を残して、女性陣の休む部屋に向かった。
連れてきた詩絵里に同じようにステータス画面を見てもらう。
ノートパソコンを持ち込んだ詩絵里は、自分のステータス画面を見比べて頷いた。
「……妙な光が透くんたちのところに向かっていったのは、私も見てたわ」
「私も見ました! なんか、蛍の光みたいなふわーっとしたやつでしたね」
「可能性として考えられるのは、透くんの回復魔法が影響して文字化けが改善されたって説と、その光が入り込んだことで文字化けが改善されたって説の二つだけど――」
詩絵里がノートパソコンで開いているのは、例の七つの大罪のスキルをまとめた表計算シートだ。
虫食いのような状態だった表に、次々と新しい情報が埋められていく。
・傲慢(スペルヴィア)……仕様不明。候補者:既に脱落済み。→勝宏へ譲渡
・憤怒(イーラ)……嫉妬と似た条件下で発芽する模様。修復もしくは回復補助スキル。候補者:【不明】、【不明】
・嫉妬(インヴィディア)……発芽条件は「不幸」? 今回ウルティナに使われようとしていたもの。どこかに飛んで行った。防御系スキル。候補者:【ウルティナ】、【不明】
・怠惰(アケーディア)……転移系スキル。候補者:【リファス】、【不明】
・強欲(アウァーリティア)……仕様不明。候補者:【勝宏】、【不明】
・暴食(グーラ)……捕食による模倣と吸収スキル。候補者:既に脱落済み。
・色欲(ルクスリア)……練成系スキル。候補者:【詩絵里】、【不明】
「まず、あの敵対していたショタはSスキル持ちだったわ」
「イベント作成スキル、なんてポイントで取れたら神にもなれるスキルですしね。勝宏さんの身体強化スキルとはえらい違いですけど……」
「たぶんそれは、あのショタが既にスキルを進化させていた……と考えるのが妥当でしょうね」
詩絵里が作成した表を、ルイーザと勝宏ものぞき込む。
彼らにはこのデータを作成していたことを話していなかったので、これが初のお披露目である。
「対になるSスキル持ちの転生者は、あいつにもう倒されてたってことか?」
「ええ。光が「Sスキル所持者を倒した時に手に入る種子」だったとするなら、<傲慢>があのショタの持っていた、進化済みのSスキルだわ」
そして、この書き方だと勝宏がもともと持っていたSスキルの進化先は、<強欲>であることがわかる。
この場で最も情報を所持しているのは透だ。
<怠惰>に対応する悪魔がウィルであるように、<強欲>や<傲慢>に対応する悪魔も、おそらくはアリアルだろう。
とすると、アリアルの力は巣――ゲームをもとに「世界」を作るもの。
<強欲>もしくは<傲慢>に、世界を作るスキルと似たような効果のSスキルが含まれている可能性は高い。
それこそ、イベント作成スキルなんてまさしくゲーム作りのスキルである。
「あの、詩絵里さん……」
「なに透くん、他に気付いたこととかある?」
きっと、今ここで――この世界がゲームの世界であること、アリアルが疑似的な世界を作るスキルを持っていることを話せば、このデータの精度は上がる。
勝宏の進化先のスキルのことだって、詩絵里が考察してくれればもっと具体的なことが分かるかもしれない。
「いえ……気のせいでした」
打ち明ける勇気はまだ、なかった。
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