【完結】魔力不足はえっちで解決!師匠、俺それ望んでねぇから!

名もなき萌えの探求者

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「貴方はええと」
「あ、俺の名前はダイス。ダイス=フィオランテ」

 ユカリ=ケンジロウの持ってきたコーヒーを飲みながら、ダイスは自己紹介をする。
 家系的には呪術師はいないが、たまたま自分に才があったらしく、それならば人の役に立とうと思って呪術師を目指したこと。
 自分の才能を信じてくれたのがウィルソンで、縁あってそのまま弟子入りしたことなど。
 特に話す予定のなかったことまでしゃべってしまい、思わず「ユージーンさん、貴方は俺になにか仕掛けたのか?」と聞いてしまう。
 ユージーンは笑って「いいえ」と返した。

「何も。ただ、聞く姿勢でいただけですね」
「そういうものか」
「ええ。さて、では次は恋バナ行ってみましょうか」
「…は?」

 唐突な言葉に、間抜けな声が出てしまい、その声を聞いてユージーンはまた笑った。
 ウィルソンに頭を下げていた時のような悲壮感が消えていて、「ああ、この人は隠し上手なんだな」とダイスは思う。
 自分の心を、話を、突っ込まれたくないから、自分の話ではなく相手がうまく自分の話で盛り上がるように相槌で誘導する。
 おそらく、もう癖になっているだろうくらい自然なそれに気づいたのは、自分の恋人も、少し似たようなところがあるかもしれない。

「…、なんで恋バナなんだ?」
「おや、だってダイスさんと先ほどの彼は恋人同士でしょう?」
「っ!?」
「私は人間観察も趣味の一環なんです。伊達に歳食っておりませんし」

 ニヤニヤと笑っているユージーンに、思わずはぁ、とため息が漏れた。

「そこに間違いはないが、ケンジロウを話のネタにはしたくない」
「うん?私がどうかしたか?」

 水のお代わりはどうか、とユカリ=ケンジロウがやってきたものだから、タイミングが悪い、とダイスは眉を寄せ、怖い顔をさらに怖くする。
 それは怒っているわけではなく困っているだけだとすぐにわかるくらいには、ユカリ=ケンジロウとダイスは付き合いが深い。

「そんな顔をすると、お客さんが怖がるぞ、ダイス」
「むぅ」
「いえいえ、私のことはお気になさらず。…おや?」

 ユージーンが小さく目を見開いた。

「貴方、不思議な魂の色してますね」
「…え?」
「あ、すみません不躾に。私はユージーンと申します」
「ああ、ええと。私はユカリ=ケンジロウです。ユージーンさん、私の魂が不思議とは?」

 首を傾げてそう尋ねるユカリ=ケンジロウに、興味深いという視線を外さず、ユージーンは続けた。

「私は魔眼持ちではないので、それほどはっきりとは見えないのですが、魂についている性別の色わけがすごく混ざっているように見えて…、どうかしましたか?」

 ユージーンの言葉にユカリ=ケンジロウはカタカタと小さく震える。
 魂についている、性別の色?混ざってる?何だ、どういうことだ。
 そんな疑問と、今は男性で、体の性別と心の性別が合致している。そんなときに性別に対する疑問を投げかけられたことはなく、よくわかないが「バレてしまった」という恐怖感がユカリ=ケンジロウを染める。
 ダイスはすぐにユカリ=ケンジロウを抱きしめた。

「ユージーンさん、いきなりケンジロウに何を言い出すんですか」
「ああ、すみません」

 ユージーンの顔には「やっちまった」という表情が少し覗き、本当に悪気なく興味が湧いただけ、なのだとわかる。
 けれど、ダイスは今度は明確に怒りを滲ませた表情をユージーンに向けた。


***
ユージーンの人をおちょくるような口調は昔からです。
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