26 / 49
26
しおりを挟む
「貴方はええと」
「あ、俺の名前はダイス。ダイス=フィオランテ」
ユカリ=ケンジロウの持ってきたコーヒーを飲みながら、ダイスは自己紹介をする。
家系的には呪術師はいないが、たまたま自分に才があったらしく、それならば人の役に立とうと思って呪術師を目指したこと。
自分の才能を信じてくれたのがウィルソンで、縁あってそのまま弟子入りしたことなど。
特に話す予定のなかったことまでしゃべってしまい、思わず「ユージーンさん、貴方は俺になにか仕掛けたのか?」と聞いてしまう。
ユージーンは笑って「いいえ」と返した。
「何も。ただ、聞く姿勢でいただけですね」
「そういうものか」
「ええ。さて、では次は恋バナ行ってみましょうか」
「…は?」
唐突な言葉に、間抜けな声が出てしまい、その声を聞いてユージーンはまた笑った。
ウィルソンに頭を下げていた時のような悲壮感が消えていて、「ああ、この人は隠し上手なんだな」とダイスは思う。
自分の心を、話を、突っ込まれたくないから、自分の話ではなく相手がうまく自分の話で盛り上がるように相槌で誘導する。
おそらく、もう癖になっているだろうくらい自然なそれに気づいたのは、自分の恋人も、少し似たようなところがあるかもしれない。
「…、なんで恋バナなんだ?」
「おや、だってダイスさんと先ほどの彼は恋人同士でしょう?」
「っ!?」
「私は人間観察も趣味の一環なんです。伊達に歳食っておりませんし」
ニヤニヤと笑っているユージーンに、思わずはぁ、とため息が漏れた。
「そこに間違いはないが、ケンジロウを話のネタにはしたくない」
「うん?私がどうかしたか?」
水のお代わりはどうか、とユカリ=ケンジロウがやってきたものだから、タイミングが悪い、とダイスは眉を寄せ、怖い顔をさらに怖くする。
それは怒っているわけではなく困っているだけだとすぐにわかるくらいには、ユカリ=ケンジロウとダイスは付き合いが深い。
「そんな顔をすると、お客さんが怖がるぞ、ダイス」
「むぅ」
「いえいえ、私のことはお気になさらず。…おや?」
ユージーンが小さく目を見開いた。
「貴方、不思議な魂の色してますね」
「…え?」
「あ、すみません不躾に。私はユージーンと申します」
「ああ、ええと。私はユカリ=ケンジロウです。ユージーンさん、私の魂が不思議とは?」
首を傾げてそう尋ねるユカリ=ケンジロウに、興味深いという視線を外さず、ユージーンは続けた。
「私は魔眼持ちではないので、それほどはっきりとは見えないのですが、魂についている性別の色わけがすごく混ざっているように見えて…、どうかしましたか?」
ユージーンの言葉にユカリ=ケンジロウはカタカタと小さく震える。
魂についている、性別の色?混ざってる?何だ、どういうことだ。
そんな疑問と、今は男性で、体の性別と心の性別が合致している。そんなときに性別に対する疑問を投げかけられたことはなく、よくわかないが「バレてしまった」という恐怖感がユカリ=ケンジロウを染める。
ダイスはすぐにユカリ=ケンジロウを抱きしめた。
「ユージーンさん、いきなりケンジロウに何を言い出すんですか」
「ああ、すみません」
ユージーンの顔には「やっちまった」という表情が少し覗き、本当に悪気なく興味が湧いただけ、なのだとわかる。
けれど、ダイスは今度は明確に怒りを滲ませた表情をユージーンに向けた。
***
ユージーンの人をおちょくるような口調は昔からです。
「あ、俺の名前はダイス。ダイス=フィオランテ」
ユカリ=ケンジロウの持ってきたコーヒーを飲みながら、ダイスは自己紹介をする。
家系的には呪術師はいないが、たまたま自分に才があったらしく、それならば人の役に立とうと思って呪術師を目指したこと。
自分の才能を信じてくれたのがウィルソンで、縁あってそのまま弟子入りしたことなど。
特に話す予定のなかったことまでしゃべってしまい、思わず「ユージーンさん、貴方は俺になにか仕掛けたのか?」と聞いてしまう。
ユージーンは笑って「いいえ」と返した。
「何も。ただ、聞く姿勢でいただけですね」
「そういうものか」
「ええ。さて、では次は恋バナ行ってみましょうか」
「…は?」
唐突な言葉に、間抜けな声が出てしまい、その声を聞いてユージーンはまた笑った。
ウィルソンに頭を下げていた時のような悲壮感が消えていて、「ああ、この人は隠し上手なんだな」とダイスは思う。
自分の心を、話を、突っ込まれたくないから、自分の話ではなく相手がうまく自分の話で盛り上がるように相槌で誘導する。
おそらく、もう癖になっているだろうくらい自然なそれに気づいたのは、自分の恋人も、少し似たようなところがあるかもしれない。
「…、なんで恋バナなんだ?」
「おや、だってダイスさんと先ほどの彼は恋人同士でしょう?」
「っ!?」
「私は人間観察も趣味の一環なんです。伊達に歳食っておりませんし」
ニヤニヤと笑っているユージーンに、思わずはぁ、とため息が漏れた。
「そこに間違いはないが、ケンジロウを話のネタにはしたくない」
「うん?私がどうかしたか?」
水のお代わりはどうか、とユカリ=ケンジロウがやってきたものだから、タイミングが悪い、とダイスは眉を寄せ、怖い顔をさらに怖くする。
それは怒っているわけではなく困っているだけだとすぐにわかるくらいには、ユカリ=ケンジロウとダイスは付き合いが深い。
「そんな顔をすると、お客さんが怖がるぞ、ダイス」
「むぅ」
「いえいえ、私のことはお気になさらず。…おや?」
ユージーンが小さく目を見開いた。
「貴方、不思議な魂の色してますね」
「…え?」
「あ、すみません不躾に。私はユージーンと申します」
「ああ、ええと。私はユカリ=ケンジロウです。ユージーンさん、私の魂が不思議とは?」
首を傾げてそう尋ねるユカリ=ケンジロウに、興味深いという視線を外さず、ユージーンは続けた。
「私は魔眼持ちではないので、それほどはっきりとは見えないのですが、魂についている性別の色わけがすごく混ざっているように見えて…、どうかしましたか?」
ユージーンの言葉にユカリ=ケンジロウはカタカタと小さく震える。
魂についている、性別の色?混ざってる?何だ、どういうことだ。
そんな疑問と、今は男性で、体の性別と心の性別が合致している。そんなときに性別に対する疑問を投げかけられたことはなく、よくわかないが「バレてしまった」という恐怖感がユカリ=ケンジロウを染める。
ダイスはすぐにユカリ=ケンジロウを抱きしめた。
「ユージーンさん、いきなりケンジロウに何を言い出すんですか」
「ああ、すみません」
ユージーンの顔には「やっちまった」という表情が少し覗き、本当に悪気なく興味が湧いただけ、なのだとわかる。
けれど、ダイスは今度は明確に怒りを滲ませた表情をユージーンに向けた。
***
ユージーンの人をおちょくるような口調は昔からです。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる