みんな大好き、中華料理

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「絶対に優勝する。優勝して、俺が琴子の事守れる強い男だっていうこと、証明してみせるから」
「……え？」

　高蔵君が力を込めて耳元でそう言った。

「琴子、前に言ってたよね。中沢先輩に好きな男のタイプ聞かれて『守ってくれる人』って」

　中沢とは由梨の苗字だ。そんな事は……前に飲み会で言ってたかも？

「俺が琴子を守る男になるから。やばい、これ以上琴子の事抱きしめてたら……ここで襲っちゃいそう……」
「あ、綾斗、明日早いんじゃないの？もう遅いし早く帰って休んだ方がいいよ」
「うん。分かった……琴子、待ち合わせ場所に行った後は泊まりになるから準備してきてね」
「えっ？何も聞いてないけど……」
「ロイヤルコクーンホテルの最上階。打ち上げ場所にって思って取ってるんだ」
「う、打ち上げなら部活の皆でやりなよ」
「それはまた後日やる予定。主将の引き継ぎ式もあるし、部活の奴らもいいって言ってるから……それよりも大事な事、琴子に伝えないといけないからちゃんと時間も場所も用意してあるんだ。ここまで言えば分かるよね？」

　あ！分かった！このパターン、なんか読めてきたぞ。

　前にもこんな事あったな。前は、仲良くなった男の先輩にずっと行きたかったレストランに誘われて、わくわくして行ったら佳奈と先輩がいて、変な言いがかりをつけられて平手打ちされて、おまけにレストランは先輩が元々佳奈と行くつもりで予約していた、みたいな感じだった。
　あの勝ち誇ったような佳奈の顔はよく覚えている。

　ロイヤルコクーンホテルと言えば、この時期はバレンタインスイートルームで毎年話題になっているホテルだ。佳奈には彼氏とバレンタインデートしてきただのなんだのと自慢された事があった。
　時間さえあれば包丁で食材を捌き、中華鍋を振るっていた私には一生縁がない場所だと思っていたので羨ましくもなんともなかったけれど、チョコファウンテンのサービスがあるという点だけは羨ましいと思ったから佳奈にはそう伝えた記憶がある。

　佳奈を喜ばせるためには最高の場所だ。
　そんな所で『綾斗君』にプロポーズされるなんて断る理由がない。この2人はきっとくっついてくれるだろう。

　なんだ、どうせ夜にホテルで会う約束もしてるんだったらわざわざ駅になんか呼び出さなくたっていいじゃない。
　佳奈は私に先輩命令を使わせてまで一刻も早く高蔵君と会いたいんだろうが……無駄にヒヤヒヤさせないで欲しい。
　高蔵君の作戦は私がお泊まりの準備万全な状態で待ち合わせ場所に行き、チョコを渡した所で佳奈との事を私に暴露して、2人でホテルデートしに行く所を見せつけるといった所だろうか。

　残念でした。私にはお見通しなんだよ。