佐々さんちの三兄妹弟

蓮水千夜

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ちっちゃな胸のおっきな悩み

△03▽ 本当に、いいのか?

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 再び、結論から言おう。

 くららの嫌な予感は見事に的中した。


(やっぱり、こうなるのかよ~~っ!)


 割と広めの浴槽の中で、灰時が後ろから、くららを抱きしめるように湯船にかっており、その前にくららにおおかぶさるような形で、誠実が場所をじん取っていた。

 無理やり風呂場に連れて行かれ、浴槽の中で二人に挟まれた状態になったくららには、もはや逃げ場はなく、すべもなく二人にされるがままになってしまった。

「ほら、くららよく見て? くららの胸はこんなに素敵でかわいいんだよ?」

「あっ、ちょっ……」

 灰時がそっと、その胸の形が分かるように周りを優しく撫で、その形をくららに見せつけるようにそっと押し上げた。徐々に中心に向かっていく手が、頂上へ到達すれば、そのいただきもてあそぶようにみだらにき乱していく。

「だっ、だめ……、だって」

 なおも続く優しく撫でるような手つきが、くららの身体中を刺激し、さらに敏感な場所を痛いくらい激しくいじられて、体が震えた。

「くっ……、あぁっ……!」

 胸しか触られていないのに、もう限界がきそうな自分がいる。くららは、必死にその手を離そうとするが、

「何がだめなの?」

 そう、耳元で優しくささやかれると、途端に力が入らなくなってしまう。

「ッ! ……このっ」

 せめて、にらみ返して反抗の意を見せつけようとするが、

「姉さん、かわいい……」

「ひぁっ……!」

 今度は誠実が、くららの胸にその舌をわせてくる。まるで、美味しいものでも食べているかのように、何度もまれ、吸い付かれる。

「ぁ……」

 誠実の唾液が自身の胸から、絡みつくように離れていき、そこから目がらせない。

 ふと視線に気付くと、こちらに目を向けていた誠実と目が合った。

「やっぱり……、オレ、姉さんの胸……、大好きです。もっと、食べさせて……」

 そう言って、ニコッと笑う姿は目がわっていて、少し怖い。

「ちょっ!? 誠実、落ち着いてっ──!」

 聞こえていないのか、聞く気がないのか、そんなくららの声も無視して、今度は反対の胸をその舌で包み込む。

「やっ……!」

 絶妙な力加減で、強く、弱くを繰り返しながら、くららの胸を味わっていく。その一方で、灰時がもう片方の胸をしつこく撫で続ける。

「お、お願、っい、もう、やめっ……!」

 二つの刺激に訳が分からなくなってくる。このままでは──、

「あ、頭おかしくなるッ!」

 必死の叫びを二人に告げたのだが、その瞬間、左右の耳に同時に声が響いた。


「おかしくなっていいよ?」
「おかしくなっていいですよ?」


「ひぁっ、あぁっ……!」

 その声で、くららはとうとう限界を迎えてしまった。

(む、胸しか触られてないのに……)

「ご、ごめん、くらら。大丈夫?」
「姉さん、姉さんっ!」

 途端に力が入らなくなったくららを見て、冷静さを取り戻したのか、二人が心配そうにのぞき込んできた。

「もう、やめるからっ……!」

 灰時はそう言うが、正直一度火ほてってしまった身体は、胸だけじゃ収まりそうにない。

 そしてそれが自分だけじゃないのは、二人の身体を見れば一目瞭然いちもくりょうぜんだった。

「……本当に、いいのか?」

 力が入りきらない腕を必死に伸ばし、二人の頬をゆっくり同時に撫でる。


「最後までシなくて?」


 さっきのお返しとばかりに、二人にそっと囁いた。

「「ッ……!」」

 息をんだのは二人同時だったか。分からないが、気が付けばくららは強引に体を引き寄せられその熱い身体を押し付けられていた。

「んぁっ……!」

 期待していた熱に、心が跳ねる。身体の奥がその熱を欲していて、気が付けばくらら自ら身体をり寄せていた。

「……そんなに、欲しかった? こんなになるまで我慢してたんだ?」

 興奮で顔が火照っているのか、赤い顔をした灰時が熱い息で問いかける。

「ちっ、違っ!」

 違わない。思わず、灰時の声を否定してしまったが、本当は今すぐにでもその熱を与えて欲しい。

(お、おれいつからこんなっ……!)

 自分でも、自分の身体がおかしくなっているのが分かる。少なくともちょっと前までは、こんなにも我慢が効かない身体じゃなかったはずだ。

「くらら、オレも見て……」

「ッぁ……」

 誠実が熱っぽい顔で見つめてきたかと思えば、その次の瞬間には熱い唇が押し付けられていた。

(あ……、今日、初めてのキスだ……)

 まだ触れられていなかったそこは、あっという間に熱を持ち、二人の境目をなくしていくように溶け合った。

(やっぱり、これ好き……)

 くららは触れ合いの中では、口づけが一番好きだった。二人の顔がよく見えるし、お互いの想いを一番伝えられるような気がする。そしてなにより──、

(……気持ちいい)

「ちょっと、俺のこと忘れてないよね?」

「アぁッ!?」

 急にきた、激しい熱に頭がしらむ。

「ま、待って、激しッ……!」

「悪いけど、今日はあんまり優しくできないかも。先にあおってきたのはくららでしょ」

「っ……!!」

 否定できない。その通りだ。優しい気持ちよさから、激しい気持ちよさに切り替わって、頭が付いていかない。暴力的な気持ちよさに頭が飛びそうになる。

 だけど、どうしてもその前に──。

 朦朧もうろうとする頭をなんとか振り払い、灰時の方へと顔をむけ、そっと手を伸ばした。

「は、いじ……、きす、したい……」

「なッ……!! 反則でしょ……」

 そう言いながらも、くららの伸ばした手をそっと包み、優しい口づけをくれる。

「んっ……」

(あぁ、やっぱりこれがすきだなぁ)

「ちょっと、そっちばっかり夢中にならないでっ──!」

 激昂げっこうしかけている誠実の頬にもそっと手を伸ばして、自分の想いを伝える。

「せいじも、きて、いいよ……」

「ふぇっ!?」

 その瞬間、いつもの少し幼い弟の顔に戻った。

「いっしょに、しよ……?」

「あゎ……」

 誠実の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。

「せ、……じ?」

 赤くなった顔も可愛いなと思っていると、

「~~っ! もう、知りませんからっ!」

「ぅむッ……!?」

 勢いよく、誠実にその唇をふさがれる。

(ん……。すご……、く、きもち、よくて……、もう……)

 前と後ろから押し寄せる激しい熱さと、浸かっているお湯の温かさで頭が朦朧としてくる。

 さらに燃え上がっていく激しい熱を交互に感じながら、くららはその熱におぼれていった。


◇◆◇◉◇◆◇


 ──翌日、風呂上りに再度、洗面台の鏡に映った自分と目が合った。

 変わらない小さく華奢きゃしゃな身体。だが、その身体には昨日とは違い、多くの赤いあとが刻まれていた。

(~~だから、あいつらいつもやり過ぎなんだよっ!)

 赤い痕は、特に胸のあたりに集中していて、思わずその痕を指でなぞる。

(……二人はその、おれの身体で満足してくれてるってことでいいんだよな?)

 そう思うと、自分の貧相だと思っていたこの身体が前より好きになれそうな気がしてくる。

 改めて、鏡の前の自分の姿と向き合っていると、昨晩の記憶が走馬灯そうまとうのようによみがえってきた。

「…………」

(うわぁぁぁあああっ! よく考えたらおれ、昨日いろいろとすごいこと言ってなかったか?)

 昨晩の恥ずかしい出来事を思い出して思わず、頭を抱える。

(じ、自分から、あんなこととか、そんなこととかっ──!)

 言動だけじゃなく、行動もいろいろとやばかった気がする。

「っ~~!」

(も、もう絶対に流されないからなっ!!)

 そう、強くこの胸に誓ったのだった。
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