泥ねずみと呼ばれた少年は、いっそ要塞に住みたい

カシナシ

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「基本的に最初に担当した者が担当し続けます。ロキさんは、私ではご不満ですか?」


瞳を潤ませて見上げてくるリリアンナさん。ええと……。こう言ってくるという事は、やっぱり最初に並んでたカウンターは、リリアンナさんじゃなかったってことだよね?

リリアンナさんより周囲の男の視線が痛い。彼らの言い分は凄く伝わってきた。


『俺らのリリアンナちゃんを、独り占めか?』
『リリアンナちゃんを差し置いて、その中年男?』


……そう言った囁き、というか、もはや耳に届いてきているくらいにはっきり口に出しているようだけど、気にしちゃいけない。この世界、人目を気にしては生きていくことさえ困難だからね!


「そうですね。他の人とも話してみたいです。ほら、あの中年の人とか、ベテランそうだし」

「ひ、酷い……、な~んて。もうっ、あの人はサブギルドマスターですから!Gランクの君にはまだまだ……」


リリアンナさんが、可愛らしくぷっくりと頬を膨らませた時だった。


「私の話ですか?何か?」


噂にしていた人が近寄って来ていた。早い。足音しなかった。ゾクリと肌が粟立つ。

そこに立っているのは、30代後半くらいに思える男性だった。真面目そうな眼鏡と撫で付けた髪型に、なんとなく『役所の人?』と思ってしまう。
恐らく元冒険者なのか、見落としそうなほどに存在感を減らして、何の感情もなく僕を見定めようとしている。と思う。

でも、この人に担当してもらったら、とっても安心出来る気がする。勇気を出して、聞いてみることにした。


「ええと、おじ様に担当して頂きたいなというお話をしていたのですが、下級だとダメだとか……」

「おじ様」


細身の眼鏡の奥で、鋭い眼光が僕を捉えた。怖い。やっぱり早まったかな。


「ええと、その――」

「いいですよ、もちろん。リリアンナさん、私は別に上級担当という訳では無いので」

「えっ?そんな、この子はあたしが、」

「本当ですか!ありがとうございます!ええと、」

「シガールです、どうぞこちらへ」


閉じていた受付の方に誘導され、リリアンナさんは何か言いかけたが権力には敵わないのか、トボトボと戻っていった。

ふう。良かった。リリアンナさんと話していると、背中がチクチクするもの。人気者なんだから、そちらのお兄様方を相手にしていたらいいのに。










カウンターの内側で、僕のタグを箱のようなものに入れて、シガールさんは何かを確認していた。無駄な動きの無い、ロボットみたい。


「ロキさん。前回の解体手数料と、お渡しした金額を引くと、こちらがお受け取りになれます」


小さな黒板にさらさらと書かれた金額。わぉ、銀貨48枚!30枚は貰っていたから、一回で78枚にもなったのか。

僕が確認するのを見て、シガールさんは手早く金額を消した。おお、やはりデキる感じの人だ。周りに見られたらまた面倒そうだもの。配慮してくれている。


「鮮度の良さと、最小限の仕留め方が査定の上乗せになりました。……こちらでお渡ししますか?奥へ行きますか?」

「へ?あ、いえ、ここで大丈夫です。ありがとうございます」


しっかりとした重量の小袋を、背嚢にきちんと仕舞う。やった、また軍資金を手に入れた!担当もシガールさんに代わってもらったら、チクチクした視線もごっそり無くなったし、良い収穫だ。



僕は早速陶器屋に行き、『こんな風にして』と注文した。銀貨10枚もしたけど、いいんだ。職人は、工事はしなくていいのかと不思議そうな顔をしていた。うんうん、だって僕の亜空間収納で持ち運ぶもの。お湯は自在に出せるしね。ふふふ、楽しみだ!どうしても、身体を預けられる、つるんとした湯船が欲しかった。

ひのきのお風呂なんかもいいよね、木の香りがするのは贅沢。
だけどこちらの世界に檜があるかまだ分からないし、組み合わせに隙間とかあって湯が漏れるのもイヤだし、取り敢えずは陶器の湯船をオーダーした。


それから、雑貨屋で石鹸も買った。買ったものの、使ってみると思ったよりいい匂いでは無く、少しがっかり。なんだか油っぽい匂いがするのかな?
洗い上がりも肌がキュッキュッと乾燥するような感じ。みんなこれ使ってるのかな?結構、お肌が強くないといけないのかも。

機材を買ったら、自分で自分用に作ろうと決めた。

トア爺からやり方は教わっている。それでもトア爺が臭ったのは、勿体ないとか言って作らなかっただけ。

機材を買うにはもっとお金が必要だし、材料も足りないので、今後の目標にしよう。

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