【完結】あなたが幸せなら、僕も幸せ……?

カシナシ

文字の大きさ
3 / 137

3



 僕には双子の弟がいる。

 弟は生まれつき虚弱体質。僕の通う学園とは違う、一般の平民も多く在籍する学舎に通っているが、エリュカは少ししか通えていないと聞いた。

 一日行くと、疲れてしまって三日ほど寝込む、それを繰り返している。

 ただ、不治の病という訳ではなく、本当に疲れやすい体質なのだ。


 一方の僕は健康も健康、おそらく健康で競えば右に出る者はいないくらいの、健康さを持っていた。

 だから、お父様は弟が心配でたまらなくて、僕のことは少し後回しになりがち。お母様は産後の肥立が悪く亡くなられているが、お父様は後妻も娶っていない。

 次期当主となるのは僕と、名言されている。他に子が出来たりするとややこしくなるから、後妻を娶ることは考えていないみたい。



 だから、きっと、認められては、いる。



 冷遇されている訳じゃない。
 けれど、お父様は、ことあるごとにエリュカの健康を奪って産まれてきた僕の罪悪感を刺激するので、あまり心地よい家では無かった。




「ただいま……」


 そうっと帰れば、談話室からきゃらきゃらと賑やかな声が聞こえる。あれ、と思った。

 お父様とエリュカが一緒に笑っている声。

 エリュカはブルーム侯爵領の静かな別荘で、静養していたのに……いつのまに、王都へ来たのだろう?

 一応夕飯には間に合うように帰ったけれど、二人はもうすでに終えているようだった。僕だけもそもそと冷たい夕食を済ませて部屋へ戻る途中、パタパタと駆け寄る足音。


「お兄さま!」

「……久しぶり、エリュカ。具合はどう?」

「そこそこ。それよりね、聞いて!ボク、お兄さまの学園に行けることになったの!」

「……え」


 どうして、エリュカがうちの学園に?

 エリュカは、融通が利きやすいという理由で学舎に通っている。それに、僕の通う王立クリューゲル学園は、入るのに試験が必要。

 だから……あまり成績の良くない……えっと……それは後継ではないから、別に問題はない……エリュカは入れないし、入る必要もないと思っていた。


「一体なにがあって……?え、?」

「だって、お兄さまと同じ学園が良かったから。えへっ」


 それはきっと、本心じゃない。それなら初めからそうしていたはずだから。

 今、もう僕たちは三年生。卒業まで、あと一年もない。
 困惑していると、別の声が僕に降りかかる。


「ファルシュカ。お前が世話をするという条件で、編入が許可された。入試も受けたが、………………まぁギリギリ……問題はない。ただ、卒業試験がある……それも、お前が面倒を見てやるんだぞ」

「お父様……っ!?そんな、僕にそんな余裕はありません!」


 それって…………『入学はさせてやるが、あとは自分で頑張れ』ってことじゃないの!?

 うちの学園は、入試も難しいが、卒業試験はもっと難しい。エリュカが通過出来るとは、いや、僕がエリュカを通過させられるとは、到底思えなかった。


「何をいう。お前は優秀だ、お前なら出来る。エリュカを頼んだぞ。クラスは違うが、休み時間毎に迎えに行ってやれ」

「僕にもやらなければならないことが山ほどあるのですよ!?」

「えー!それ、ボクより大事なこと?ひどぉい…………」


 エリュカがへにょりと眉を下げると、お父様はその肩を庇うように抱いてキッと僕を睨んだ。


「実の弟だぞ。兄なんだから、当然だろう。それも……エリュカの代わりに、健康で丈夫に生まれたのだから」


 また、それだ。

 僕は項垂れて、小さな声で、はい、と呟いた。



 一年や二年、年上だったら、僕も兄らしくあろうと頑張れるのかもしれない。

 けれど実際は、エリュカと同じ日に生まれたのだから、僕の兄成分はたった、ほんのひと瞬きほどしかない。まるで『兄』という箱に無理やり押し込められているようだ。

 確かに、健康なのは有難いし申し訳ない。だからエリュカには、僕にかつて与えられた、誕生日の祝いやキラキラしたものは強請られても全て譲ってきた。それでおあいこにして欲しい……。

 それでも父の決定に異を唱える勇気は無く、僕は明日からどうしようと頭を悩ませることとなったのだった。
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

愛され方を教えて

あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。 次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。 そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…