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36 セオドアside
(セオドアside)
「んで?素直に愛しているって言えなくて?形式上の婚約ってことにした、と?」
とんとん、と膝を指で打つ。
気分は尋問官だ。にいさんはピリリと姿勢を正しつつ、視線だけは彷徨わせていた。
「……結果的には……」
「このっ、へたれ!あんぽんたん!意気地無し!そんなにいさん、見たくなかったよ!もう!」
「……仕方ないだろう。ファルシュカに気持ち悪いと思われたら、俺は立ち直れない」
「絶対ないから!」
「分からないだろう。お前も俺が気持ち悪くないのか?弟の友人に欲情する兄が」
「……そういう言い方をすると、気持ち悪い!」
ぐさっときたのか、にいさんは胸を押さえた。
まったく、人類の中で最強と呼ばれているアルファなのに、なんて体たらく。
ここは弟であるぼくが、しっかり喝を入れないと。ファルシュカに、あんな諦めたような、寂しそうな顔をさせた戦犯にね。
どう考えたって、にいさんが悪いに決まっている!!
「一応聞いておくけど。もしファルシュカから『好きです』って言われたら?万事解決じゃん?」
「……いや。それは、俺が彼を助けたからであって、一時的な好意でしかない。俺は……大人は、その感情は一過性のものだと、諌めなくてはならない立場だ」
「は!?じゃあにいさんから告白するしかないってことじゃん!なんでしないの!?」
「そうしたら、保護されている立場上、断れないだろう。また彼を追い詰めてしまいかねない。彼にとってはオジサンだし……」
「めんどくせえ奴ぅぅうう!!」
ぼくはイライラして叫んだ。なんだこのにいさんは。
本当にぼくの自慢のにいさんか?ミノムシにでも憑依されたんか?
にいさんの胸ぐらを掴む。小柄なぼくが掴んでも全くびくともしない体躯が憎らしい。それどころか、掴みやすいようにしゃがみまでするなんて…………!
こ、この!嫌味だ!
こんな、体格だけ立派に育ってさぁ!
「そんなこと言ったら第二王子殿下はどうなのさ!?年上でしかも既婚者なのに、ファルシュカ襲おうとしたんだよ!?」
「三歳は許容範囲だろう。既婚者なのは頂けないが、離縁するおつもりはあったようだし……」
「なんなの、じゃあ殿下に取られてもいいの!?」
「いや。彼ではファルシュカを幸せには出来ない。だめだ。絶対に渡せない」
「なら腹括って、『俺が幸せにする』って言えばいいじゃんっ!男らしく!」
「……だが、俺は大人で、彼は未成年で…………洗脳に近いかもしれないと思うと………………」
「もぉぉぉおお!キィィイイイ!!」
僕は頭を掻きむしった。なんなのさ!
にいさんてば、前から慎重派ではあったけど……予防線張りまくりで格好悪い。
恋は人を臆病にさせるとどこかで聞いたが、石橋を叩きすぎて粉砕するタイプだったとは。
今までのにいさんは、誰かに想いを寄せられることなんてザラだった。新人の使用人なんか、兄さんに色気出さなければ本採用と決まっているくらい。
そのどれもを、にいさんは丁重に、しかしバッサリ断ってきた。
無関心で、まるで興味がなかったのだろう。
突撃訪問をしかけて乗り上げてこようとしたヤツも、媚薬盛ってこようとしたヤツも、うじゃうじゃいた。失敗して泣き喚くあいつらの、社交界での存在を抹消させたくらいには、冷酷で無慈悲なのに。
「ファルシュカは、決断力があるよ。ぼくより、誰より、ちゃんとしてる。彼の判断を、子供だからと甘く見積もらないで!」
「う……」
「……横から誰かに掻っ攫われでもしたら、一生恨むんだからね。婚約したって安心しないでよ、にいさん。ファルシュカはモテるんだから」
「分かっている……」
しょげているにいさんを見れば、どうやら反省させることに成功したらしい。なんだかとってもイライラしたけど、今は見守ることにした。その代わり、たっくさんオヤツ買ってもらうんだから!
にいさんにとって初めての感情なら、きっと時間が必要なのかもしれないけど……そこは焦らせたので、どうにかなると信じたい。
ファルシュカを泣かせたら?……許さないけど。
「んで?素直に愛しているって言えなくて?形式上の婚約ってことにした、と?」
とんとん、と膝を指で打つ。
気分は尋問官だ。にいさんはピリリと姿勢を正しつつ、視線だけは彷徨わせていた。
「……結果的には……」
「このっ、へたれ!あんぽんたん!意気地無し!そんなにいさん、見たくなかったよ!もう!」
「……仕方ないだろう。ファルシュカに気持ち悪いと思われたら、俺は立ち直れない」
「絶対ないから!」
「分からないだろう。お前も俺が気持ち悪くないのか?弟の友人に欲情する兄が」
「……そういう言い方をすると、気持ち悪い!」
ぐさっときたのか、にいさんは胸を押さえた。
まったく、人類の中で最強と呼ばれているアルファなのに、なんて体たらく。
ここは弟であるぼくが、しっかり喝を入れないと。ファルシュカに、あんな諦めたような、寂しそうな顔をさせた戦犯にね。
どう考えたって、にいさんが悪いに決まっている!!
「一応聞いておくけど。もしファルシュカから『好きです』って言われたら?万事解決じゃん?」
「……いや。それは、俺が彼を助けたからであって、一時的な好意でしかない。俺は……大人は、その感情は一過性のものだと、諌めなくてはならない立場だ」
「は!?じゃあにいさんから告白するしかないってことじゃん!なんでしないの!?」
「そうしたら、保護されている立場上、断れないだろう。また彼を追い詰めてしまいかねない。彼にとってはオジサンだし……」
「めんどくせえ奴ぅぅうう!!」
ぼくはイライラして叫んだ。なんだこのにいさんは。
本当にぼくの自慢のにいさんか?ミノムシにでも憑依されたんか?
にいさんの胸ぐらを掴む。小柄なぼくが掴んでも全くびくともしない体躯が憎らしい。それどころか、掴みやすいようにしゃがみまでするなんて…………!
こ、この!嫌味だ!
こんな、体格だけ立派に育ってさぁ!
「そんなこと言ったら第二王子殿下はどうなのさ!?年上でしかも既婚者なのに、ファルシュカ襲おうとしたんだよ!?」
「三歳は許容範囲だろう。既婚者なのは頂けないが、離縁するおつもりはあったようだし……」
「なんなの、じゃあ殿下に取られてもいいの!?」
「いや。彼ではファルシュカを幸せには出来ない。だめだ。絶対に渡せない」
「なら腹括って、『俺が幸せにする』って言えばいいじゃんっ!男らしく!」
「……だが、俺は大人で、彼は未成年で…………洗脳に近いかもしれないと思うと………………」
「もぉぉぉおお!キィィイイイ!!」
僕は頭を掻きむしった。なんなのさ!
にいさんてば、前から慎重派ではあったけど……予防線張りまくりで格好悪い。
恋は人を臆病にさせるとどこかで聞いたが、石橋を叩きすぎて粉砕するタイプだったとは。
今までのにいさんは、誰かに想いを寄せられることなんてザラだった。新人の使用人なんか、兄さんに色気出さなければ本採用と決まっているくらい。
そのどれもを、にいさんは丁重に、しかしバッサリ断ってきた。
無関心で、まるで興味がなかったのだろう。
突撃訪問をしかけて乗り上げてこようとしたヤツも、媚薬盛ってこようとしたヤツも、うじゃうじゃいた。失敗して泣き喚くあいつらの、社交界での存在を抹消させたくらいには、冷酷で無慈悲なのに。
「ファルシュカは、決断力があるよ。ぼくより、誰より、ちゃんとしてる。彼の判断を、子供だからと甘く見積もらないで!」
「う……」
「……横から誰かに掻っ攫われでもしたら、一生恨むんだからね。婚約したって安心しないでよ、にいさん。ファルシュカはモテるんだから」
「分かっている……」
しょげているにいさんを見れば、どうやら反省させることに成功したらしい。なんだかとってもイライラしたけど、今は見守ることにした。その代わり、たっくさんオヤツ買ってもらうんだから!
にいさんにとって初めての感情なら、きっと時間が必要なのかもしれないけど……そこは焦らせたので、どうにかなると信じたい。
ファルシュカを泣かせたら?……許さないけど。
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