【完結】あなたが幸せなら、僕も幸せ……?

カシナシ

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(ファルシュカside)



 セオドアとボードゲームをしていると、サイモンさんが慌てたようにセオドアを呼んでいた。


「珍しい。どしたん?」

「あの……急な来客がありまして。セオドア様と、ファルシュカ様を出せと……」


 そのまま、セオドアはサイモンさんとコソコソ話を始めた。いかんせん僕は居候いそうろうに過ぎない。

 でも、僕を出せとお客さんが言っている……ように、聞こえたけれど?


「大丈夫、ぼく、行ってくる。にいさんほどじゃないけど、今のリンドバーグに来た客なら、ぼくが対応するのがすじだ」

「でも……」

「大丈夫ったら大丈夫。もう、心配性なんだから。誰か、ファルシュカ見張っておいて。勝手に抜け出さないように」

「畏まりました」


 見張りってなにさ。警備さんが扉の外で見張っているらしい。










 セオドアが居なくなると、急に部屋が広く寂しいような気がした。


 ちく、たく、ちく、たく。


 ルドルクス様は居ないし、セオドアはまだ来客への対応中。これで、落ち着ける訳がない。

 部屋の中を意味もなくウロウロし、クッションをあちこち移動させてみたりしたけれど、時計の進みは恐ろしく遅くて、壊れているんじゃないかな、あれ。

 分解、していいかな……。



「……無理!」



 いくつか魔道具を撫でたりしていたものの、やっぱり集中出来ない。

 僕は意を決して、応接室の方に行くことにした。

 セオドアが困っているかもしれない。扉越しに話を聞けたら、何か出来ることがあるかも。

 そう警備さんに伝えれば、『たしかに……』と納得してもらえた。二人でこっそり盗み聞きをしに向かう。





 僕は盗み聞きをしに行ったのだけど、そんな必要はないくらい、室内の男女の声は大きく、けたたましかった。


『だから、アバズレを出しなさい。を奪った姑息なオメガを、見てやらなくちゃ』

『うちにアバズレなどおりません。それに、彼にはぼくが兄をお勧めしたのです。素晴らしく優秀な親友が、義兄弟になってくれれば嬉しいと』


 興奮した女性の声と、冷静なセオドアの声。そこに、ややお気楽に間延びした男の声が聞こえる。


『こら、ベアトリス、言葉遣いが下品だ……ねぇ、セオドアくん。悪いことは言わないから、出した方が良いよ。心配しなくても、彼はちゃんと丁重にエスコートをするだけだから、ね?あとは任せてくれたらいい』


 どこかで聞いたことのある声。

 あ、アウグスト第二王子殿下だ!

 あれ、てことは、ベアトリスと呼ばれているのは……第一王女のベアトリス殿下か!?

 ベアトリス王女は、三人王子が産まれた末の女児ということもあり、たいそう溺愛されていると聞いている。

 今年で恩年16歳、つまり僕らの一つ下の学年だが、学園に通っていないのは『過保護』なのか、『世に出せない』のか、世論が分かれている所だ。

 そんな方々を前に、セオドアは……堂々と、対応している。

 そう、目が潤みそうになった時だ。




『わたくしのお願いを聞けない?それなら、仕方ないわね!』


 そう叫んだ後、バシャッと激しい水音と、ティーカップが壁に叩きつけられたような破裂音がした。


「セオドア!」


 たまらず室内へ押し入る。額を抑えてうずくまるセオドアは、茶色の液体にまみれて汚れていた。すぐに駆け寄って、ぎゅっと抱きしめる。


「セオドアっ、だいじょ……」

「やっと来たわね……ファルシュカ・ブルーム。そこに座りなさい」

「……僕はもう、ブルーム侯爵家のものではありません。第一王女殿下」


 室内には近衛騎士がずらりと並び、冷たく僕を見下ろしていた。そして、王女殿下は床を指し示している。…………床に、座らせる気なのだろうか。


「……あーあ、どうして来ちゃったの、ファルシュカ。大丈夫って言ったのに」

「どう見ても大丈夫には見えない。セオドア、ごめんね。ありがとう……もう、休んで」

「……ふっ。ほんと、いい性格してる……うぅ」

「サイモンさん、すぐに医師に診せて。頭を打っているみたいだから、あまり動かさずに休ませて。僕が残るから」

「畏まりました」



 セオドアは残りたがったが、怪我をしている。早く処置しないと傷が残ってしまうかもしれない。

 サイモンさんもすぐに連れて行ってよかった。心配でたまらないけど……この人たちを帰さないと、セオドアを見舞う余裕も無さそうだ。





 
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