【完結】あなたが幸せなら、僕も幸せ……?

カシナシ

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「あはははっ!やば、あぁぁ…………ファルシュカ、最高すぎるんだけど」


 ひぃひぃ言いながら笑い涙を拭うセオドアに、僕はぶすくれてしまう。あの、笑わせようと思って話した訳じゃないんだけど……。


 夕食後、うさぎの夜間着でパジャマパーティーをしていた。今日はセオドアと一緒に寝る予定なんだ。

 それで、日中あったことをそれぞれ話していたんだけど、そんなに爆笑すること、あった?


「いやぁ、ごめん、ごめん。あいつらにとっては耳が痛かったと思うよ?だって、ただの王女の取り巻きの立場で、毎月“お手当てあて”をもらって満足しているような連中だよ?ファルシュカの爪の垢を煎じて飲ませてもいいくらい」

「ファルシュカ様に譲り渡すような爪の垢なんて残ってませんよ!あたしらがきっれーに洗ってますから!」


 マーサが即座に言い返しながら、あったかいお茶を淹れてくれる。ふふ、この空間、幸せで満たされてる。


「ありがとう、マーサさん、ローザさん。僕はただ不思議だったんだ。好きな人のためなら、誰だって一生懸命に尽くすって思っていたんだけど……違うんだね?」

「そうだねぇ……」


 セオドアが顎に手をやりながら、濁した。あれ、そういう仕草をするのは、なんだか言いにくいことがある時だ。
 僕はお茶を飲みながらうさぎのふわふわ耳をいじり、言葉を待つ。


「ファルシュカは尽くさないと愛されないって思っているんだね。でも、ぼくはね、ありのままで愛されたいと思ってる。無理をしてまで繕った自分に、もし惹かれてくれても、一生尽くし続けるのはしんどいから」

「……」


 がつんと頭を殴られたようだった。えっ……確かに?
 無理をしても……それは、本当の自分じゃない、と言えるかも。


「でも、ぼくは、そういうファルシュカが好きだよ。好きな人のために努力している君は、キラキラしてて眩しい。例え、顔色が悪くてもね」


 ぎゃあ……今度は、嬉しい。感情が忙しいな。僕は思わず、カップを握りしめた。ぽっぽと頬が紅潮する。


「だって世の中の大半の人は、あんまり努力はしたくないんだもの。楽な道があればそちらに行く。奴らだって、多分ね、そこまで王女を好きじゃないんだ。君が殿下を好きだった頃の熱量に比べれば、断然ね」

「え……?僕に、身を引くように言ってくるのに?」

「だって、言うだけだもん。言葉を発するだけ。そこに責任があるなんて、これっぽっっっちも思ってないよ。奴らはね、ガワだけは綺麗な王女をちやほやするだけの、簡単なお仕事をこなしてる。伴侶になりたいなんて思ってない。だって、あの破天荒な王女の伴侶なんて、苦労しかないに決まってるもの」

「えぇぇぇーー」


 わ、分からない!どういうこと!?

 伴侶の座を望む程大好き……ではない、ということ?だから、他人ルドルクス様に押し付けようってこと?くっつけさせたら、お手当は貰えなくなっちゃうんじゃ……?

 僕が目を白黒させていると、セオドアは『まだ早かったか……』なんて渋い顔をした。


「……あー……そうだ。カイロス殿下にも、以前は愛人希望がたくさんいたでしょう?」

「そ……そういえば。最近はとんと見ない……」

「あれとほとんど一緒。王女は陛下から寵愛されているから、王女のお気に入りになれれば、陛下からの覚えもめでたく……なるだろう、と。でもそんな短絡的なものだから、やっぱり男爵家とか子爵家の次男三男が多い。そのままだと平民になっちゃうから」


 なるほど……。そうか。僕は侯爵家の長男だったから、やはり恵まれた出自だったのだろう。努力だけで全てがなんとかなる世界……では、ないのだから。

 そう思うと、彼らには厳しく言いすぎたかもしれない。彼らにも色々葛藤があって、あの立場に甘んじているかもしれなかったのに。

 と、可哀想に思う気持ちが分かったのか、セオドアが『同情する必要はないよ』と厳しい声を出す。


「堅実でマトモな貴族令息なら、騎士になるなり、高級文官を目指したりして、努力をするよ?だけどそこで“王女の取り巻き”を選ぶのは、やっぱり楽を極めていると、ぼくは思う。だからね、余計、ファルシュカが尋常じゃない努力をしていたと知って、気まずかったんだろうね」

「尋常じゃない……」


 思わず復唱してしまった。固まる僕のうさぎ耳を、セオドアがびよーんと引っ張った。


「ぼくも、一緒に住めるようになるまで、商会までやってるなんて、知らなかったし。もう少しさ、力を抜いていいんだよ?無理に尽くすの、辛いでしょ?」


 そう言われて、咄嗟に返事はできなかった。

 でも、セオドアは待ってくれる。僕のうさぎ耳をいじいじと遊びながら。


「僕には、無理じゃなかった」

「へ?」

「尽くせば尽くすほど。役に立てたら立てたほど、あの人の中で僕の存在が大きくなるはずだって、思ってた。だから、苦じゃなかったんだ。でも、そうじゃないよね。それをあの人が望んでいるかなんて、誰も知らないのに。僕の自己満足だ……」


 なんて傲慢なんだろう。僕は。

 役にたつ道具を、誰が好きになる?

 道具は道具でしかない。
 なんの感情も抱かない。
 そんな存在だったんだ、僕は。


「だ、大丈夫!?ファルシュカ!?」

「うん……大丈夫。過去の僕の浅はかさに打ちのめされてるだけ……」

「大丈夫じゃないじゃん!」


 セオドアが抱きついてくる。その甘やかな温もりに身を預けた。

 僕のしたことは、見当はずれだったのかな。

 結果として僕自身の知識や収入にはなっているけれど、人の気持ちをこちらに向けさせるには、全く意味のないことだったのだろうか。






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