【完結】あなたが幸せなら、僕も幸せ……?

カシナシ

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 週末デートの予定は急遽変更され、レオンハルト殿下が来訪された。


「すまない。アレの体験入学は、最後の賭けだったんだ」


 殿下が言うには、王女が突然学業に目覚めたとか言って学園への入学を希望した時点で、何かすると予想していたらしい。

 娘の学習意欲を損なうわけにはいかないと、国王陛下が二つ返事で承諾しようとしたところに待ったをかけた。

 まずは体験入学をさせてみる。その期間中に問題を起こした場合は、即日王女の縁談を決めて国外に出すことを承諾させた。


 そして、王女には諜報活動にも長けた近衛騎士をこっそり付かせた。王女が僕に嫌がらせをしていること、噂話をばら撒いていること、そして、あの男たちを雇い、薬や制服を用意させたことも、筒抜けの状態。


 僕が襲われそうになった倉庫にも、騎士さんが潜んでいた。本当に手を出される前に止める予定で。僕が自分で逃げたから、出番は無かったけれど。


 ただあの得体の知れない薬は、凶暴化の薬ではなく、強い媚薬だったそう。王女が取り寄せたものは希釈して使うもの。
 それを、『濃いめでいい』と指示した結果、男たちは現液そのままを僕に飲ませようとしたんだって。

 ゾッとする。もし飲んでいたら、脳が破壊されて廃人になるレベルのもの。いくら僕が毒に強くても、無事ではいられなかっただろう。その前に騎士さんが防いでくれるとは聞いていても……。


 あの騎士さんは、男に襲い掛かられた王女をすぐには助けなかった。それは、レオンハルト殿下から、『少しは痛い目に遭わせろ、偶然を装える範囲でな』と指示されていたからだ。


 王女の計画では、媚薬を飲んで乱れに乱れた僕が、三人と乱交して楽しんでいる姿を、生徒たちみんなに見てもらう予定だったそう。

 あまりにえげつない計画。それと比べれば、肌を見られただけなら、まだ、尊厳は失ってないと思う……。


「何故、事前に言わない。ファルシュカを囮にしたな?」


 ルドルクス様が怒っている。レオンハルト殿下の前なのに、僕の腰をぎゅっと掴んで離さない。

 う、嬉しいけど……ちょっと恥ずかしい。


「事前に言えば、防いでしまうだろう?ことが起こる前に。それではダメなんだ。アレを嫁に出す条件なんだから」

「ぐっ……」

「報告を受けたが、ファルシュカはそこまで弱くない。ちゃんと自分で反撃して、逃げて、身を隠していた。大したものだ。本当に……何も出来ない男ではない、そうだろう?」


 それは、褒めて頂いているのだろうか。僕は曖昧な笑いを返した。

 すごく怖かったです。とは言いたくなかった。わがまま放題していたベアトリス王女殿下が、これで何らかの処罰を受けると思えば、無事に役割を果たせたようで良かったけれど。


 ということで、事件を起こしたベアトリス王女殿下は、早々に縁談をまとめられたらしい。

 ずっと南の島国にある、ゴルドメニクという部族の長の妃となる。その相手が遠路はるばる見定めに来るまで、離宮に軟禁されるらしい。合格(なにがだろう)となれば、そのまま連れ帰る、とのこと。

 レオンハルト殿下が、茶菓子を食べながらそう言った。


「合格もなにも、ほぼ決まりだ。長が旅行したいだけだと思うのだがな……ベアトリスには足環も嵌めてあるから、これでもう、迷惑はかけないと思う…………」

「お疲れ様です。それで……ルドルクス様は」

「報復は開始した。曲げるつもりはない」


 むすっ、と不機嫌そうなルドルクス様は、あの王女殿下の取り巻きだった男爵家ふたつと子爵家ふたつに対し、経済的報復を始めた。

 リンドバーグ辺境伯領では、騎士団の強さが群を抜いている。そのため獲得出来る魔物の素材が豊富で、各地に輸出しているから……それが手に入れられないとなると、かなり痛手だ。

 でも、手を緩める気はないそう。多分、ポシャッと潰れると思う。

 僕に関する根拠のない噂話を拡散した報復だ、そうで。


「でも……恨みを買うのは、怖いですよ……?」

「それは逆恨みというものだ。一応、令息らを処置さえすれば、報復は止めるように通達はしている」

「妥当だと思う。これで、ファルシュカやセオドアに手を出そうとする人間は居なくなるだろう……正気ならな」

「正気なら、な……」


 二人とも、はぁとため息を吐いた。正気でない人……?

 それより、お二人は本当に仲が良いみたいで、見ていてほっこりする。ルドルクス様は鋭利な美丈夫で、レオンハルト殿下は貫禄のある貴公子という感じ。雰囲気は全く違うのに、どこか似ている。

 にこにこしていると、レオンハルト殿下は侍従になにかを命じた。


「そうだ、土産を持ってきた。ファルシュカ殿、受け取って欲しい」

「わざわざすみま…………えっ?!」


 重厚な箱から出てきたのは、水晶で出来た…………バク

 恐ろしく透明度の高い水晶。それをふんだんに使って加工しているのだ。ぽってりとしたフォルムはとても可愛い。特にお腹。まんまるのお腹に手を当てると、ほんのり温かいような気もする。

 驚く僕に、レオンハルト殿下はすらすらと解説してくれた。


「少し遅いが、婚約祝いと思ってくれ。囮にしてしまった謝罪込みの。これは魔除けの呪具じゅぐになっていて、寝室へ置いておくと悪夢を食べてくれるらしい。二人の寝室にどうだろう」

「普通は無難に宝飾品じゃないのか……?」

「水晶だから宝飾品だろう。形が少し変わっているだけで」

「とっても可愛いです!ありがとうございます……!」


 ガイちゃんが居なくなってから、僕の寝台横には何もなくて、寂しいと思っていたんだ。

 エリュカのベッドにはたくさんのぬいぐるみがあって、子供ながらに羨ましく思っていた。でも、兄だから、健康だから。ベッドに長く居るエリュカを慰めるためのものだと聞いて、諦めていたのだ。
 そのうちに成長してしまったが、嬉しいものは嬉しい。


「嬉しい……」


 たまらず溢れてしまう笑顔の僕に、レオンハルト殿下はにこにことご満悦そうな一方、ルドルクス様は複雑な顔をしていた。


「…………まだ、婚約中だ。婚姻までは寝室を分けている」

「そうだったか。それなら、ファルシュカ殿の枕元に。ルドルなら悪夢くらい自分で切り刻むだろうし」

「レオン……それは褒め言葉として受け取っておく」

「ふふ、ルド様が悪夢を見たなら、この子と駆けつけますね」

「ぐぅっ」

「ううっ」


 何かおかしなことを言った……?え、用途通りだよね?





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