【完結】あなたが幸せなら、僕も幸せ……?

カシナシ

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68 ベアトリスside


(ベアトリスside)



 もう、ほんっとに信じられない!!

 わたくしの計画は完璧だったはず。それなのに、あの男たちがバカで能無しだったために全てが台無し。

 それだけならまだしも、ケダモノになった男が見境なく、高貴なわたくしに襲いかかってきて……!

 思い出したくもない。屈辱よ。産まれてこれまで、あんな恥をかいたのは初めてよ……!

 全部、あのオメガのせい。わたくしのルド様を奪って、のうのうと生きている憎らしいオメガ。

 切り刻んでも余りある、憎悪。簡単に死なせはしない。爪先から腐らせて徐々に絶望へ落とすのよ…………。




 それなのに、その志は断念せざるを得なかった。

 わたくしはレオンハルトお兄さまによって離宮に軟禁されてしまった挙句、罪人のような足環まで嵌められて、殆ど寝台から動けなくなった。

 しかもわたくしの承諾も無しに、遠くへ嫁へやるのだとか。


 そんな、家畜を売り払うような真似……!絶対に、嫁いでなんかやらないの!

 あとのないわたくしは、もうなりふり構ってはいられなかった。
 蛮族の長だとかいう人間がこちらに到着したという日。


「アンッ!アンッ!ぁぁぁあんっ!」


 わたくしは敢えて、取り巻きの美形たちに、わたくしとのセックスを見せつけるように命じたのだ。


 複数の美形にでられたわたくしは、美しい。けれど、長という人間には忌避すべき存在になる。

 だって、長の種で孕めるかどうか、分からないんだもの。この婚約を破断にして、クリューゲルに居残ってやるのよ!


 ふふふっ!わたくしの作戦勝ちね……!!







 しかし現れた蛮族の長は…………想定外なことに、わたくし好みの、かなり整った美形だった。


「…………あっ……まっ、待って、アンッ……」


 その美形に比べれば、わたくしの周りにいる男は芋と言わざるを得ない。

 急に恥ずかしくなって静止したものの、芋たちは興奮の真っ最中。急に止められはしない。

 その様子を見た長は、しげしげと観察した後、言い放った。


「なるほど、これは良いウツワだ!喜んで頂こう。そこのキミ、クリューゲルへ追加のきんを。ほんの気持ちだ」

「ははっ、ありがたく受け取らせて頂きます……」


 “器”って…………何?

 呆然としたわたくしは、殆ど意志の確認も無いまま、蛮族の国へと追い出されてしまったのだった。










 ひどい荷馬車に詰め込まれたわたくしは、蛮国に着いてから、何故私が選ばれたのかを知った。

 この国の恐ろしい慣習。

 長の妻は、まず百の男に子種を注がれる。

 そこへ最後に、長が子種を注ぐのだ。何の意味があるのかって、そうすることで他の男の子種よりも、長の子種が強いことを示すのですって。は?


 納得がいかないまま、牢のような質素な部屋で百の男に抱かれる毎日が始まった。

 美男からはほど遠い、ただ権力ばかりある中年。脂ぎった醜男たちばかりだ。それも一日一人、ねっとりと嬲られる。子種で胎が膨れるまで注がねばならん、などと言って。


 60人が過ぎた辺りで、月のものが無いことに気付く。それでも、儀式は止まらない。



 ようやく100人が終わり、やっとあの美丈夫に抱かれる番。それだけを楽しみにしていた。

 しかし、ようやく現れた蛮族の長は、妖艶な美人を二人、両脇に抱えていたのだ。


「すまないな、お前に欲情しねぇから。こやつらに手伝ってもらう」

「……はぁ!?なんでそんッ……もゴッ」

「ああ、言葉を話す必要はねぇよ。“ウツワ”」


 口枷まで嵌められたわたくしは、屈辱に憤死寸前だった。

 目の前で始まるのは、二人の美女による男への愛撫。ようやく高まったソレを一気に突き刺されると、乱雑に出し入れされる。

 わたくしに入れている間も、長の目はわたくしを見ない。二人の美女と交互にキスを交わしている……。

 コトが終わったわたくしをゴミのように捨てて、立ち去っていく長。そこに、長の侍従がやってきて淡々と述べた。


「お疲れ様でございます。こちらで出産までごゆっくりお過ごしください」

「……こちらで?……子を産んだら、どうなるの」

「次の出産に向けて、別荘地で休養期間を過ごすことになります。長の呼び出しまでそちらで待機とのことです」

「待機……?」


 あんな、あんな扱い、もう二度と許さないわ。

 次こそは、わたくしをたっぷりと愛でて、ドロドロに愛し、豪勢な食事に豪華なドレスを献上してもらわなくてはならないの。


「いやよ。長の隣の部屋に行くわ。もう儀式は終わったのよね?」

「貴方様に決定権はございませんので」


 そう言い捨てた侍従はガラリと口調を変え、わたくしを見据えた。


「せめて長が行った日にしおらしくしていれば、愛妾にはなれたかもしれなかったのにな。阿婆擦れは“器”と決まっているんだ」

「はあっ!?どこが阿婆擦れなのよっ!?」

「理解できる頭があるとは思えん。失礼する」


 ひどいっ!酷すぎるわ……!!


 復讐してやろうと思ったのに、その失礼な侍従にも、長にも会うことは二度となかった。



 まるで平民のような質素な生活。湯浴みも出来ず、水で身体を拭くだけ。
 服は貫頭衣で、同じものが三枚。それを着回す毎日。
 食事も使用人のような粗末なもの…………。


 悪阻に苦しみ続ける妊娠期間は一年にも及び、出産は眠っている間に終わっていた。珠のような美しい世継ぎが産まれたと大騒ぎになっているなんて、わたくしには生涯知らされることはなかった。



 ショックなのは、わたくしの綺麗なお腹に大きな傷が残った上、ぶよぶよになってしまったこと。

 こんな身体になってしまった現実なんて、到底直視出来やしない。塞ぎ込んだまま、喧騒から離れた田舎へ運ばれた。



 “待機”なんて言いながら、長はわたくしを呼ぶことは一度も無かった。ただ生きているだけの毎日。何の生き甲斐も無く、かと言って余裕も無く、ただ生きていくのに必要最低限の家と、食事が提供されるだけ。

 百人に犯され、妊娠、出産を経て、わたくしは急速に老け込んでいた。


 これまでのわたくしは、『出産した女は女として終わっている』、『オバサン』などと馬鹿にしていたのに……まさに、そのオバサンになってしまうだなんて。


 かつての美貌は見る影もなく、現実を直視出来なくなったわたくしは、夢の住人となったのだった。















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