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95 エリュカside
(エリュカside)
「いやぁあああああっ!!」
絶叫していると、不意に拘束が無くなった。無我夢中で暴れ回っていると、地面があることに気付く。……あれ?
ポカンとして周りを見渡すと、…………け、結婚式!?
「…………戻ったのか」
そう、呆れた声を出すのは、新郎姿のカイロス様だった。
ボク、生きてる。生きてる……。
ホッとした瞬間、足がガクガクと震えて崩れ落ちた。そして、シャーッ………………と情けない音と、つんとした匂いが。
「う、わあっ、嫌!な、なにこれえっ!み、見るなぁぁっ!」
「ひどい結婚式だな……見ていられん」
数少ない親戚たちすら、顔を顰めて帰っていく。白いドレス風スラックスは恥辱と黄色に染まり、どうにかしたくとも、腰が抜けて動けない。
えっ、これは、もしかしなくともエリュカの体に戻ってる!?
なんでこんなことになっているんだっけ……!?ああそうだ、ルドルクス様が、心中しようだなんてヤバい奴だったから!
「カイロス様っ!助けてよ!なにこれ!え!止まらない……」
しょろしょろとした漏れが止まらない、と思ったら、違うところから漏れているようだ。え、これって……。
「もしかして、破水、かも……?い、医者を呼んで!」
ボクの晴れ着は、二度と修復不可能のゴミとなった。
結婚式も汚辱に塗れて思い出したく無い記憶として皆の脳裏に刻まれ、永遠にも思える程長時間苦しんだ後、小さな男児を出産した。
「…………育て、られそうか」
「……………………………………無理」
「……………………そうか」
カイロス様は男児を大切そうに抱えた。ボクの返事を聞いてどこかホッとしたようにため息を吐くと、誰か騎士に預けていた。
どうだっていい。だって、最初からボクが育てる気は無かったもの。おにーさまが育てればいい。それか、乳母でもいいし。
出産後の体は何処もかしこも痛くて、動けずにいた。だっる。ホント、ファルシュカの体はすっごく調子良かったのに。
カイロス様が教えてくれたことには、ルドルクス様とおにーさまは何事もなかったように生きてるって。
ボクたちの入れ替わりに気付いていて、あんな心中をするフリをしたんだ。だから、ヤバい奴じゃなかった。ボクは騙されて、あの身体から出たいって思っちゃったから戻ってしまったんだ……。
ズルい。
おにーさまは、ずっとずっとズルい。だからこそ一生、ボクのために尽くしてくれなくちゃいけないのに。今度こそ、絶対に上手くやってみせる。
メラメラと復讐心を燃やしていると、誰も居ないはずの壁の隅に、一人の男が立っていた。
「呪い士!…………ねぇっ、失敗したんだけど!?ねえっ、もう一回、もう一回入れ替えて!やっぱりボクは、おにーさまの身体の方が良かっ……」
「儂はちゃんと説明したぞ。失敗したのはあんたの責任だ。それになぁ、もうあんたから取れるもんが無くなるから、無理だ」
呪い士は、ボクの体の上でぎゅむっ、と何かを掴む動作をした。ボクには何も見えなかったが、その瞬間、なにか……胸の奥が、空っぽになったような、空虚感。
「中々良いものを貰った。もう用がない。さらばだ」
「…………あ…………」
“強い欲望を持つ者”の前に現れるらしい呪い士は、これ以降、二度と姿を現す事はなかった。
そのうち試験結果が発表されて、予想通りだが、ボクは落第し卒業はできず、除籍となった。一方ファルシュカは最優秀生徒に選ばれていたらしい。
以前のボクなら憎たらしいと思った所だったけど、そんな気にはなれなかった。どうしてだか、全てがどうでもいい。
双子だけど、所詮他人だし。
成績はなんとか及第点を取ったカイロス様は、卒業証書を受け取り、そのまま開拓地へと飛び立った。
ボクたちは追いかける気は無かった。だって、開拓地に比べれば、まだブルーム侯爵領にいた方が都会だもん。税収が少なくなっているなら、もう少しくらい税率を上げればいいし。
……と、思っていたのに。
狙いすまされたようなタイミングで、お父様が爵位を剥奪され、没落した。
「いやぁあああああっ!!」
絶叫していると、不意に拘束が無くなった。無我夢中で暴れ回っていると、地面があることに気付く。……あれ?
ポカンとして周りを見渡すと、…………け、結婚式!?
「…………戻ったのか」
そう、呆れた声を出すのは、新郎姿のカイロス様だった。
ボク、生きてる。生きてる……。
ホッとした瞬間、足がガクガクと震えて崩れ落ちた。そして、シャーッ………………と情けない音と、つんとした匂いが。
「う、わあっ、嫌!な、なにこれえっ!み、見るなぁぁっ!」
「ひどい結婚式だな……見ていられん」
数少ない親戚たちすら、顔を顰めて帰っていく。白いドレス風スラックスは恥辱と黄色に染まり、どうにかしたくとも、腰が抜けて動けない。
えっ、これは、もしかしなくともエリュカの体に戻ってる!?
なんでこんなことになっているんだっけ……!?ああそうだ、ルドルクス様が、心中しようだなんてヤバい奴だったから!
「カイロス様っ!助けてよ!なにこれ!え!止まらない……」
しょろしょろとした漏れが止まらない、と思ったら、違うところから漏れているようだ。え、これって……。
「もしかして、破水、かも……?い、医者を呼んで!」
ボクの晴れ着は、二度と修復不可能のゴミとなった。
結婚式も汚辱に塗れて思い出したく無い記憶として皆の脳裏に刻まれ、永遠にも思える程長時間苦しんだ後、小さな男児を出産した。
「…………育て、られそうか」
「……………………………………無理」
「……………………そうか」
カイロス様は男児を大切そうに抱えた。ボクの返事を聞いてどこかホッとしたようにため息を吐くと、誰か騎士に預けていた。
どうだっていい。だって、最初からボクが育てる気は無かったもの。おにーさまが育てればいい。それか、乳母でもいいし。
出産後の体は何処もかしこも痛くて、動けずにいた。だっる。ホント、ファルシュカの体はすっごく調子良かったのに。
カイロス様が教えてくれたことには、ルドルクス様とおにーさまは何事もなかったように生きてるって。
ボクたちの入れ替わりに気付いていて、あんな心中をするフリをしたんだ。だから、ヤバい奴じゃなかった。ボクは騙されて、あの身体から出たいって思っちゃったから戻ってしまったんだ……。
ズルい。
おにーさまは、ずっとずっとズルい。だからこそ一生、ボクのために尽くしてくれなくちゃいけないのに。今度こそ、絶対に上手くやってみせる。
メラメラと復讐心を燃やしていると、誰も居ないはずの壁の隅に、一人の男が立っていた。
「呪い士!…………ねぇっ、失敗したんだけど!?ねえっ、もう一回、もう一回入れ替えて!やっぱりボクは、おにーさまの身体の方が良かっ……」
「儂はちゃんと説明したぞ。失敗したのはあんたの責任だ。それになぁ、もうあんたから取れるもんが無くなるから、無理だ」
呪い士は、ボクの体の上でぎゅむっ、と何かを掴む動作をした。ボクには何も見えなかったが、その瞬間、なにか……胸の奥が、空っぽになったような、空虚感。
「中々良いものを貰った。もう用がない。さらばだ」
「…………あ…………」
“強い欲望を持つ者”の前に現れるらしい呪い士は、これ以降、二度と姿を現す事はなかった。
そのうち試験結果が発表されて、予想通りだが、ボクは落第し卒業はできず、除籍となった。一方ファルシュカは最優秀生徒に選ばれていたらしい。
以前のボクなら憎たらしいと思った所だったけど、そんな気にはなれなかった。どうしてだか、全てがどうでもいい。
双子だけど、所詮他人だし。
成績はなんとか及第点を取ったカイロス様は、卒業証書を受け取り、そのまま開拓地へと飛び立った。
ボクたちは追いかける気は無かった。だって、開拓地に比べれば、まだブルーム侯爵領にいた方が都会だもん。税収が少なくなっているなら、もう少しくらい税率を上げればいいし。
……と、思っていたのに。
狙いすまされたようなタイミングで、お父様が爵位を剥奪され、没落した。
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