Signal――シグナル――

神月 一乃

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吟遊詩人、旅する

から豆

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 フィアの母親が誰であったかなど、吟遊詩人にしてみれば関係がない。
 フィアの容姿はごくありきたりな顔立ちの、栗色の髪と瞳。この国どころか、近隣国で一番見慣れた色だ。
「休憩しよう。私が仕留めるから、あとは頼んだよ」
「はいっ」
 料理は手慣れたもので、乾燥肉のストックが増えていく。野草は必要分だけ取り、肉に刷り込ませていた。

 から豆が川沿いに生えていた。
 から豆は別名「旅人の命」と呼ばれ、実を食し、茎を薪代わりにする。植物にしては珍しく、刈り取ってしまえば乾燥させずとも、火のつきはいい。そして、実は大変に小さいが成長が早いため、年中収穫できる草の一種だ。
 だから、すべてを刈り取らず、今必要な分だけを取るのが暗黙の了解である。

 二つほど引き抜けば、十分だ。それを持ち、吟遊詩人は戻った。

「吟遊詩人様?」
「今までは見かけなかった。これがから豆だ」
「これって食べれるんですか?」
「無論。下手な麦よりも栄養価があるとされている。味は悪くない」
 そして、現在畑で植えられている豆の原種であるということも教えておく。
「……これが」
「そうだ。何代か前に召喚された勇者が広めたそうだ」
「へぇ」
 使い方は、通常の豆のようにも使うし、火の傍で乾燥させすり潰す。それを小麦粉の代わりに使うこともある。

 小麦粉と同じ使い方、そういわれてもいまいちピンとこないフィアに使い方を教えていく。
 終わる頃には、目を丸くしていた。
「大事なことだ、覚えておきなさい」
「はい」
 食料をどれくらい持って動けるか、無くなった時にどうするか、それを覚えておくだけで旅は楽になる。
「砂の国に行けば、また違うが」
「その時に聞きます」
 いい返事が返ってきた。

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から豆……別名「旅人の命」。その名の通り、食べ物が底をつき、周囲に食せるものがないときに、唯一道端に生えていたこの豆を食べ、旅人が命を救われたことに由来する。ソラマメとカラス豆を足した感じのもの。味はソラマメ。大きさはカラス豆。栄養価は高い。ただ、粉にするときな粉のようにはならず、小麦粉のようになる。外で食べる時は、鍋にそのまま入れる、煎る、粉にして溶いて食べる、ナンのようなものにして食べる、と様々な食べ方がある。通常、芽が生えてから食べれるようになるまで、七日くらい。場所によっては雑草のように扱われることも。
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