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第2章 クエスト編
第18話 謎の女
しおりを挟む3.2.1.0!
「カタナ、開店だ!」
「はーい」
ハルの合図とともにカタナが店の扉を思いきり開く。
すると川のように客が押し寄せてきた。
カタナは人の回し。
男の厨房へ入るにはまだ度胸が足りないし、何気ないコミュ力が役に立つからだ。
厨房では、俺はいつもの持ち場についた。
懐かしさと共にあのあかさたとコンビとして営業していた日々が走馬灯のように頭の中で蘇ってきた。
「ハル!すごい客だ。こんなに有名だったとは思わなかったぞ。」
ベルの声によって現実世界に意識を戻された。
ベルの仕事はあかさたがやっていた通りだ。
メインのスープは主にとんこつ。
麺は自家製麺。
野菜、卵、海苔は主にこの始まりの街で採れるものばかりを使っている。
あまりの忙しさに昔と今をいつのまにか重ねていた自分がいた。
魔王ベルもはじめての仕事にしては予想以上に働いてくれた。
カタナも一日中客回しで汗を流した。
「そろそろ列も消化するな。」
ベルがホッとしたような口調で囁く。
「うん、でも最後まで気は抜くなよ」
「分かってるって。俺は俺の仕事を全うする‥」
ベルの言葉が途切れた。
「どうした、ベル?」
ベルは何処か遠くを見ているような眼差しをした。
「この魔力は‥通常のものよりもはるかに高い。恐らく、魔王族の者がこの近くにいる。」
「え?」
思わず言葉がこぼれた。
魔王族が?このスタートタウンに?一体誰が?
色々な思考がごっちゃになった。
そしてカタナが厨房に駆け込んできた。
「この店のオーナーに会いたいって人が来てるんだけど」
「え、あー。分かった、今行く。」
そういう客はよくいる。
大体はクレーマー。その次に記者。そして最後にただただ感謝を伝える人。
しかし、今回はどれでもないようだ。
カウンター席に座った女?はやけに大きな帽子を被り、女というよりも少女くらいの身長。しかし、どこか雰囲気のある。
初のタイプの客にハルは戸惑った。
「この店のこのラーメン?という召し物大変美味しかった。あなたがこの店のオーナーか?」
ズバッと指をハルの眉間に刺して、その女は言った。
「はい、そうです。ありがとうございます。」
「どうやらこの店は魔王様がこのスタートタウンに訪れた時から閉店していたとか‥」
「まぁ、色々ありまして‥」
なかなか本題に話を移そうとしない女に不思議な感情を抱いていたその時。
「あんた、魔王に用があるんでしょ?魔王様なんてこの町の住人は少なくとも言わないわ。もしかして、魔王の身内か何かかしら?」
後ろに立っていたカタナが鋭い眼光を向けて
女に言った。
「‥」
突然女は黙った。
ほんのわずがな沈黙の後、それを掻き消すかのように
女の懐から抜いた短刀がハルの首筋に向けて僅かな金属音と共に向けられた。
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