VRMMOで最弱の俺は魔王を仲間にした。

松村レイ

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第1章 トーナメント編

第11話 全ての始まり

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始まりは一つのニュースからだった。

「アメリカで人類初のゲームの中に入ることが可能に
なるといわれているブレイン・ゲートの開発に成功し
たという知らせが入っています。日本でも今月末に発
売される予定です。」

俺は大仏の如く直立不動で
そのニュースを見ていた。

「こらー、春!遅刻するわよ。」
「わかってるよ!」

学校に行っても、塾に行っても、風呂に入っている時も
俺はあのブレイン・ゲートのことで頭がいっぱいだった。

そして、それは家に届いた。
予約していた甲斐あって予想よりも早く届いたのだった。

俺は説明書を見ない派だ。
だいたい感覚でわかった。

恐る恐るその機械を頭にはめた。
今までにない感動がそこにはあった。

「え?ちょっと起動しないんですけど。」

説明書に目をやった。

「なになに、ブレイン・ゲートの横にある
オン、オフスイッチをオンにして、ブレイン・ダウン
と言ってください?恥ずかしいな。」

スイッチをオンにした。
「ブ、ブレイン・ダウン。」

パァーーと視界が広がっていった。

「ど、どうなっているんだ?」
「ようこそ、VRワールドの世界へ。私が
ここで説明をします。と言っても、ほとんど
ないんですが、ブレイン・ダウンしたらパスワード
をおっしゃってください。当製品は個人のプライバシー
を尊重することで成り立っています。
それでは、早速パスワードを設定してください。」

「はーい。えーっと、パスワードは。」
「ありがとうございます。それではゲーム
ワールド・クエストをお楽しみください。」

す、すごい。体の感覚はまるで元からこっちの
世界にあったかのような感覚だ。

「まずは、恒例のチュートリアルからだな。」

ーチュートリアルー
氷の大地ののらうさを倒せ

「なんだ?のらうさって?」

ここは、始まりの街スタートタウン。
街には至るところに地図が置いてあった。

「へー、ワープができるのか。」

どうやら街の端っこにはいろいろな
所へワープすることが出来る場所が
あるらしい。

「行きたいのは氷の大地だから・・・、氷の石碑へ
向かえばいいのか?」

それにしても・・・初期装備が素手って。
笑っちゃうでしょ。普通は剣とかもってるもんだよね?
でも、そんなことはすぐに忘れてしまった。
それ程に俺は興奮していたのかもしれない。

「着いたぞ、どうすればいいんだ?」

おっ、誰か来た。なるほど石に触れるだけでいいのか。

ペタッ。

「くっ!」

視界がぼやけてきた。

着いたのは氷の大地。
ゲームの世界でも寒さは感じる。

「おいおい、嘘だろ。ポーションとかないのかよ。」
寒すぎる!

その時だった。1匹のうさぎが俺の目の前を通り過ぎた。

「お、あれを捕まえればいいのか!」

よっ、思ったよりすばしっこいぞ。

「くそっ、腹立つ!
スタミナがどんどん減っていってるぞ。
これは早めに終わらせた方がいいな。」

「あのー?」
「あ?」

この時の俺は少々切れ気味だった。

「俺のポカポカポーションあげましょうか?」
「え?いいんですか!」
「はい、結構余ってるんで。」

俺は手渡されたそれを飲んだ。
体の凍っていた芯が溶かされていくのを感じた。

「ありがとうございます。」
「いえ、ところで何やってんですか?」
「いやー、お恥ずかしい。
チュートリアルですよ。」
俺には彼が笑いをこらえているようにしか
見えなかったが。
「あ、あれですね。よっと。」

グサッ。彼が投げたナイフは見事ウサギに
突き刺さった。

「はい、どうぞ。」
「いいんですか?なんか・・・」

俺のボックスにのらうさの皮が入っていた。
「いいよ。それにしても最高難易度の
チュートリアルが当たるなんて君もついてないな。」


これってランダムなのかよ!
でも、考えてみればそうか。

「君、名前なんて言うの?」
「ハル。」
「ふーん、僕はあかさた。宜しく!」

これが俺とあかさたの出会いだった。
その後、2人で街に向かって、いろいろなことを
話したのだった。

例えば、リアルではどんな暮らしをしているのか?
              学校は楽しいのか?
             パーティを組むか?
いくら話しても足りないくらいだった。

俺はいつの間にかこのあかさたという人物に
親しみ以上の念を抱いていた。

「お前さ、好きな食べ物は?」
「ん?ラーメン。」
「えっ、まじで!俺も!」
「ホント?ところでさ、いいバイトあるんだけど・・・」

これが俺達がラーメン屋、千本桜で働くよう
になった由縁。

そして・・・

あかさたとの出会いから半月と1週間が
たとうとしていた頃、俺達は気づいたのだった。

「そういえばさ。」
「うん?」
「ダンジョン入ってなくね?」
「確かに、でもおかげで千本桜の店長、副店長に
なれたからよくね?」
「それだよね!客が入ってくるから、休む暇も
ないしね!」

さらに半月の年月が過ぎた。

「俺達ってさ、こっちでラーメンしか作ってなくね?」
「確かに、でも新メニューとかいっぱい作れたから
よくない?」
「だよねーーー!」

こっちの世界に来てから、早く1年過ぎた。
そんなある日

「おい、知ってるか?最弱プレイヤーの話。」
「あぁ、知ってるよ。スタートタウンに
1年間ずっとい続けてるんだってよ。」
「それってやばくね?相当下手なんだろうな。」
「だな。ハハハ!」

たまたまあかさたはこの会話を聞いていた。
ハルは厨房に立っていたため運のいいことに聞いていなかった。

まさかこれが全ての始まりになるとは
誰も予想しなかっただろう。

これがオレの物語の由縁。

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