VRMMOで最弱の俺は魔王を仲間にした。

松村レイ

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第1章 トーナメント編

第10話 カタナ

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俺、勝ったんだよな・・・

家の白い天井を眺めながら
色々な事を考えてみた。

気づいたら朝になっていた。

「春、起きなさい!」

「もう起きてるよ!」

あの後、トーナメントの賞金は3人で山分けした。
そして、パーティーの家を建てたのだ。
多分、今頃ベルはそこで、寝ているだろう。

ルンルンルン

ついスキップなんかして、それぐらい
有頂天になっているのかもな。

その時。

ドンッ

誰かに背中を強く押された。

「いってぇ。」 

「おい、春。何スキップなんてしてんだよ。
目障りだからどけよ。」

クラスの悪ガキ郷田が立っていた。

「・・・」

「おい!」

「嫌だ・・・」

「あ?」

「嫌だーーっつってんだよ。」

ドスッ。

リアルはやはり糞ゲーである。




「・・・きろ。」

ん?なんだ?

「起きろ。」

何だよ、起きてんだろ。

「起きろ。一ノ瀬。」


「あーーーー!!!」

アハハハハ

ん?なんだ?寝てたのか。
これはしょうがないことだ。
この授業がつまらなかったからいけないのだ。
それにしても、みんなの前で
叫んだのか。

春の顔は今にも破裂しそうなほど真っ赤になった。

そして、出来事は授業終わりに起こった。

「一ノ瀬くん、さっき面白かったよ。」

「そ、そう?」

この人の名は波田 明日香。
このクラスの、いやこの学年、さらに
言うとこの学校のマドンナ的存在! 

そんな、波田さんが俺に話してきたのはほぼ奇跡に近い。

周りは普通に喋ってように見えるが
どうやら耳だけはこちらを向いているようだ。

スクールカースト最上位と最下位の会話に興味を持った。

「実は・・・」

「ん?どうしたの?」

「相談があって・・・」

え?

「一ノ瀬くんじゃなきゃダメなの。」

え?え?

「放課後体育館裏に来て。」

波田は耳元でそう囁いた。

「そ、それって・・・」

波田はニコッと笑って何処かへ行ってしまった。

「おい、春。お前、波田さんと何を話していたんだ?」

「べ、べ、べ、別に。大したことねーって。」

「ふーん。そっか。まぁ、あの学校のマドンナがお前みたいなニートと話すなんて大した内容じゃないんだろうけど。」

そう話しかけてきたのは
後ろの席の霞ケ浦 快斗だった。
名前だけはサッカー部っぽいが、
所属しているのはアニ研部だ。

それは置いといて、まさか俺もリア充の仲間入りとは…
人生何があるか分かったもんじゃない。

この時、俺は何も疑っていなかった。



リアルもやはり悪い事ばっかではないな。

そして、放課後。
俺は指定されたとおり、体育館裏に行った。

まだ来ていないようだ。
ちょっと、張り切りすぎたかな。

チョン

ビクン!

「うあっ!」

振り返ると波田が立っていた。

「ごめんね、びっくりさせて。」

「いや、大丈夫・・・」

それにしてもいつも直視出来なかったが

よく見るとホントに整った顔だな。

俺なんて・・・。
急に悲しくなってきた。

「ところで、話って?」

「うん。実は・・・。」

「実は?」

「私・・・」
ドクン
「ずっと前から・・・」
ドクンドクン
「ゲ・・・」

「ゲ?」

「ゲーム始めてたんです。」

「え、えーーーーー!!!」

マスオさんでも出さないくらいの「え、えー」が出た。

「すいません、すいません。いきなりこんな事言われても困りますよね。でも、1番クラスで一ノ瀬くんが喋りやすかったし、色々知ってそうだな、と思って・・・」

驚いたも何も今年一番の驚きだ!

「な、なんていうやつ?」

「ワールド・クエスト。」 

ビンゴだ。

「俺もやってるよ。結構ね。特に最近は。」 

「ホント?良かったー。私、始めてから半年ぐらいで・・・」

いや、普通にやってんじゃん。

「もし、良ければ一緒にプレーして色々
教えてもらえたせんか??」

 こんな好機は滅多にない。  

 のちに後悔しない最善の回答を脳が計算。

「あ、はい。じゃあ、今日の夜の8時から
スタートタウン広場待ち合わせで・・・」

訳が分からなかったが無意識で
こう言ったのは覚えている。

 結局、あまりの衝撃に低スペックな俺の頭はついて行かなかったのだ。


PM7時59分

「5、4、3、2、1!」

「ブレイン・ダウン!」

はーはーはー

確か、波田さんは赤い格好で来るって言ってたな。

まだ、来てないか。

近くのベンチに腰掛けた。

いやー、楽しみだな。これって最先端デートじゃ
ないのか?仮想世界でなんて。

「あ、アンタ。ここで何してんのよ?」 

「んー?お、カタナ。奇遇だな。」

そこにはカタナの姿があった。
いつものがっしりとした装備ではなくどこか露出が
多いような…そしてどこからでも分かるような赤い衣装…

「き、きも!なんで、そんなにニヤニヤしてんのよ!」

「いやー、実は・・・」 

ん?待てよ。なんでこいつこんなに赤い格好を・・・

「その格好は・・・」

「べ、別にいいじゃない。
人の好みなんだから。私は人を待ってんのよ。」

「俺もだけど・・・」

ちょっと、嫌な予感しかしないんだけど。

1時間経過。

「なー、カタナ。まさかだけどお前、波田?」

「じゃあ、まさか一ノ瀬くん?」

いや、性格変わりすぎだろ。

「お前、性格全然違うじゃん!?」 

「そ、そうかな。
いや、違う。そんなことはどうでもいいだろ!」

しばらくの沈黙が続いた。

「ごめんなさい。謝ります。こっちの私が本物だから!」

誰も夢にも思ってなかっただろう。
まさか、学校のマドンナがVRMMOで
今どきツンデレキャラでプレーしているなんて・・・



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