VRMMOで最弱の俺は魔王を仲間にした。

松村レイ

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第1章 トーナメント編

第9話 戦いの果てに

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「き、決まったー!最初に討ち取ったのはベル選手。
天雅選手を槍で一突きにしました!
ナイスコンビネーションです!」

 危なかったぜ。
 ベルから魔力をもらっていたからこそできた
もう一つの俺の必殺技。テレポート。

 絶対魔力補給をしていなかったらできなかった。
 魔王の圧倒的な魔力量あってこその身技だな。

 そして完全に価値を相手が確信していたからこそできたこと。

 予め決めておいた作戦が身を結んだ。

残るはスコール1人だ。

「ハル、ナイスタイミングだ。」
「俺の力じゃねーけどな。」

 勝てる!
 俺達はそう確信していた。

「お前と同じぐらい強いヤツと1度戦ったことがある。」

「お、俺?」

ハルが自分の顔を指差す。

「違う、もう片方の奴だ。」

「あ?」

まさか!?

「その相手は魔王だった。だが、お前のジョブは勇者だ。似ても似つかない。が、お前の正体を俺に教えてくれないか?」

魔王は迷っていた。
既に気づかれているのではないだろうか、
いや、まだ気づかれていない。
危険な道を踏むことは無い・・・と。

「お、俺は勇者だ。魔王なんぞではない。」

「そうか、それは残念だ。」

「ん?」

「本気でお前と戦うことが出来ないからな!」

ビュン!!

まるで風だった。

「ハル!」

キーーーーン!

 武器と武器の重なり合う音が響いた。

 俺の目と鼻の先で。

ギリギリのところでベルの槍が守ってくれた。

「まずはお前からだ。見習い魔導師。」

「お、俺っすか?」

ベルは苦しそうだ。
もう長くはもたないだろう。

「ハル、作戦2だ!」

「おけ!!」

「おいおい、ここまで来てまだこそこそする気か?」

「あぁ、そうだよ。俺らは無敵のコンビだ。」

次の瞬間、魔王はスコールを聖剣エクスカリバーを鷲掴みにした。


「くそ、おい。離せ!」

「ハル、今だ!」

【フリーーーーーーズ!!!!】

スコールは凍った。
ベルは間一髪で回避したようだ。

うおーーーーーーー!

「決まったな、こりゃ。」

周りからはものすごい歓声が響き渡った。

「ハル、お前、魔法の使い方上手くなったな。」

「お、おう。まぁな。」

こんな素っ気ない返事しか出来なかったが
本当はすっごい嬉しかったのである。 

その時だった。

「誰がこの試合が終わったと言った?」

グサッ
完全に油断してた。
スコールは完全に俺達の不意をついてきたのだ。

「まだまだお前の技も未完成といったところか、見習い魔法師よ。芯までは凍らなかったぞ。」

恐る恐る視線を横にずらすと、スコールはベルの腹部分を一突きにしていた。

「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁ!」

多分これが初めてであろう。
魔王がこんな簡単に刺されるなんて。

ギロッ

スコールの鋭い眼差しがこちらをさした。

「次はお前だ。」 

「く、来るな!」


 グサッ!

 ハルの腹にはエクスカリバーが刺さっていた。

 完璧にやられた。

と思った。

【HP残り1】

「な、何?残り1だと?」

あ、修行でHPだけはめっちゃついたんだよな。
こんな所で役立つとは。

「まぁ、いい。もう1発!」

く、くそ。

ここまで来たのに。

どうせなら、優勝したかった。

俺、ベル、そして、カタナ。

あかさた。俺はまだお前を助けられそうにないよ。

「そんなことはないさ。」

頭のどこかであの懐かしい声が聞こえた。

ドクン

その時、俺は我に帰った。

そうだ、俺はどうやら大切なことを一つ
忘れていたようだ。

「ハル!!!」

魔王が遠くで叫んでいる。
遠ざかる意識の中、ほぼ反射的に唱えた。

【フリーーーーーーズ!!!】

「馬鹿な!お前にはそんな魔力残っていないはずじゃ。」

「あぁ、残っていないさ。だけど、なぜか力がみなぎってくるんだ。」



ハルの腹とスコールの剣境が凍った。

「ベル!!俺ごとやれ!」

「わかってる。絶対離すなよ!」

「お、お前!いつの間に?」

「アレ一撃で俺が倒れるわけない。」

「なぜだ?何処にそんな力が?」

「何故って?それは俺が・・・魔王だからだ。」

ズドーーーーーーーン。

魔王の持つロンギヌスはハルとスコールの腹付近を激しい音と共に一突きにした。

お、終わった。

「決まったーーーー!!!!!

ベル選手がスコール選手とハル選手ともに
ふっ飛ばしたー!
よって、第15回トーナメント優勝は・・・」

「ハル&ベル選手、カタナ選手だーーーー!!!!!」

この時、周りからの雑音は一切聞こえなかった。

幼稚園の徒競走で1位になった時以来の興奮を
俺はヒシヒシと感じていた。

まぁ、それとは比べ物にならないか…


ー試合後ー

「おい、お前。」

振り返るとそこにはスコールが立っていた。

「なんすか?」

「済まなかったな。俺は正直お前のことを雑魚で、クズでノロマだと思っていた。」

いちいち、言わなくてもいいだろ。

「あー、そうか。」

そっけない返事しか出来ていなかったが
俺はこいつに言いたいことがあった。

「実はベルのことなんだが・・・」

「魔王ベルゼブブなんだろ?」

「あ、あぁ。お願いなんだがこの事は内緒にして欲しいんだけど」

スコールは少し考えたようだが
真っ直ぐこちらを向いて答えた。

「わかっているさ、次また戦う時まで楽しみにしてると伝えてくれ。勿論、お前ともな。」

「やっぱりそういうことだったか。」

奥から聞き慣れた声がした。 
そして、天雅がこちらに歩いて来た。

「頼む、内緒にしといてくれ」 

「わかってるよ。」

意外にも天雅は素直だった。


「ところで天雅、ところでお前の名の由来って?」

「それはアレしかないだろ。」
「あ、はい・・・」

この日の空はやけに青が映えていた


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