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第1章 トーナメント編
第1話 最弱プレイヤー
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「ハァハァハァハァ。やばい、遅刻する。」
夏の蝉の鳴き声が永遠と続くこの道を俺は
ひたすらに走った。
「5、4、3、2ぃぃぃぃ」
ラストスパート。
「間に合ったーーー!」
「おぉ、ギリギリだな。一ノ瀬!」
最早顔馴染みとなった校門に立つ先生との挨拶を済ませ、教室へ再度足を急ぐ。
背中には滝のように汗が流れ、頭の中は空っぽ。
なにも考えられない。
全て夏のせい。
暑くて、集中できない授業。
エアコンがついているかわからないほどの温度。
ここはジャングル奥地か!と叫びたい。
みんなが四時間目の授業を終え、弁当を取り出す。
俺も弁当を取り出すが、食べる場所は教室でも、中庭でも、屋上でも、校庭でもない。
そう。トイレだ。
「よし、誰もいないな。じゃあ、始めるか!」
弁当の前の俺のルーティーン。
《ワールド・クエスト》
日本最大級のVRMMOゲーム。
2030年、"ブレイン・ゲート"と呼ばれる
新世代ゲーム機が開発された。
ゲームプレイヤーはゲームの中に実際に
入り込むことが出来る。
この機械が開発されたことにより
ゲーム業界は大きな一歩を踏み出した。
そしてこのソフト、ワールド・クエスト。
よくあるRPG系のゲームである。
主人公はいろいろなクエストを進めながらも
最終目的である魔王ベルゼブブを倒すことである。
だが、未だに魔王は倒されていない。
「よし。"ブレイン・ダウン"!!」
【こんにちは。今日もログインありがとうございます。】
【パスワードを入力してください】
パスワードを入力。
【パスワードを確認しました。
それではワールド・クエストをお楽しみください。】
「いくぞーーーーーー!!!」
心の中は爽快。
ここは始まりの街"スタートタウン"
名前通り初心者の集まる街。
俺はここに唯一1年い続けている男。
ログイン早々、いつもの声が聞こえる。
「おい、アレ。」
「あぁ、間違いないこのゲーム最弱プレイヤーのハルってやつだ。」
「1年!?マジかよww」
何笑ってんだよ。
悔しい。俺だって・・・
俺はただただ楽しみたいだけなのに。
だが、もう慣れてしまった。
今ではもう日常茶飯事だ。
「おーーーい。ハル君ーー!」
「おぉ、あかさた。」
こいつは"あかさた"。
名前は面倒くさくて適当に打ってしまったらしい。
簡単にいうとパーティーメンバーだ。
さかのぼること1年。
俺はコイツと出会った。
まぁ、そんな話は置いといて。
「今日も張り切っていくか!?」
「うん、行こう。僕らの戦場に!」
「あぁ、行くか!!」
「へい、らっしゃい!」
「千本桜特製ラーメン一丁追加!!」
「おい、あかさた!5番テーブル拭いとけ!」
そう、ここが俺らの戦場。
千本桜。ラーメン屋である。
ここは《ワールド・クエスト》の中でも安く、そしてHP回復にはうってつけの場所。
勿論、味もいい。
このゲーム内のグルメ雑誌にも載るほどの人気っぷりだ。
連日超満員の人気店。
そこで店長を任されている。
店内にはゲーム内とは思えない仄かなラーメンの匂いが漂う。
「あかさた!ちょっと来てく・・・」
【外部より接続の恐れがありますので強制しシャットダウンさせて頂きます。】
【ログアウト】
バサーーーン
「おい、ここにずっと入ってる奴出てこい。」
冷たい!
水か?
制服がびしょびしょだ。
「は、はい。」
「お前かよ、春。ふざけてんだろ。」
ドスッ。
春の腹に思い一撃がはいった。
「ゲホゲホゲホゲホ。」
「これで終わりだと思うなよ!!」
リアルでもあっちでも俺って・・・ふと頭にそんなことがよぎった。
家に帰るといつも通り母親が心配そうな目でこちらを見る。
「ただいま」
「はい、おかえり。どうしたのその顔?」
「あ?あんたが産んだんだろ。」
「違うわよ、あざがたくさん。まさか、また殴られたんでしょ?」
「ほっとけよ・・・」
俺はこっちの世界では生きられない。
春は自分の部屋に吸い込まれるように走った。
「こんな現実・・・大ッ嫌いだ!!」
カバンの中から颯爽とブレイン・ゲートを取り出す。
「ブレイン・ダウン!!!」
俺はいつものラーメン屋へ駆けた。
「あかたさ!ごめんな!」
「ハァハァ、ハルくん。早く助けて・・・」
「分かってるよ!」
そう、これでいいんだ。
こちらの世界は俺を受け入れてくれる。
ダンジョンなんか入んなくてもいいんだ!
仕事後、店から客がいなくなり、やっと休む時間ができた。
「ハルくん、前のいきなりおちたやつなんだったの?」
「あぁ、あっちから人に呼ばれてたんだよ。」
「なんだ、そうだったのかぁー。」
ずいぶん軽いな。
もう少し・・・いや、リアルの事は持ち込まないって決めただろと自分に言い聞かせた。
もしかしたらあかさたも気を使ったのかもしれない。
「じゃあ、また明日。」
「うん、あっ、そうだ。ハルくん!」
「なんだよ?」
「明日の仕事終わりにさ・・・」
「ん?」
「ダンジョンに行こうよ!」
ダンジョン…だと・・・
「お前、正気か?だって、俺達このままで頑張って行こうっていう話じゃなかったのかよ。」
「僕もそう思ってた。だけど、このゲーム。戦わないと意味無いじゃん!!」
正論言われた!!!!!
なんだこいつ。いきなりどうしたっていうんだよ。
確かにラーメン屋するゲームではないけどさー。
まじか。
「俺は行かないぞ。」
「そっか、じゃあしょうがない。」
「分かってくれたか。」
「ひとりで行くよ!じゃあ!」
「ま、待て!」
【あかさたさんはログアウトしました。】
あいつ、約束したじゃねーか。
次の日、あいつは千本桜にこなかった。
本当にダンジョンへ一人で行ったのか!?
次の日、また次の日もあいつは帰ってこなかった。
この時、俺はただの喧嘩だと思っていた。
そんなある日のことだった。
その知らせは突然だった。
【お知らせです】
ん?なんだ?
【この度、バグにより次の方々のログアウトが3日間確認されておりません。
プレイヤー一覧
・アヤナミ
・メタモン185
・鈴木君
・GINZA
・あかさた
以上のプレイヤーを見かけた場合運営までご連絡ください】
「あかさた、なんで一人でダンジョンに・・・俺が一緒に行っていれば、くそ!」
ログアウトしてないってことはまだ、このゲーム内に!?
この時、俺はダンジョンに入る意思を決めた。
そう、再び・・・
夏の蝉の鳴き声が永遠と続くこの道を俺は
ひたすらに走った。
「5、4、3、2ぃぃぃぃ」
ラストスパート。
「間に合ったーーー!」
「おぉ、ギリギリだな。一ノ瀬!」
最早顔馴染みとなった校門に立つ先生との挨拶を済ませ、教室へ再度足を急ぐ。
背中には滝のように汗が流れ、頭の中は空っぽ。
なにも考えられない。
全て夏のせい。
暑くて、集中できない授業。
エアコンがついているかわからないほどの温度。
ここはジャングル奥地か!と叫びたい。
みんなが四時間目の授業を終え、弁当を取り出す。
俺も弁当を取り出すが、食べる場所は教室でも、中庭でも、屋上でも、校庭でもない。
そう。トイレだ。
「よし、誰もいないな。じゃあ、始めるか!」
弁当の前の俺のルーティーン。
《ワールド・クエスト》
日本最大級のVRMMOゲーム。
2030年、"ブレイン・ゲート"と呼ばれる
新世代ゲーム機が開発された。
ゲームプレイヤーはゲームの中に実際に
入り込むことが出来る。
この機械が開発されたことにより
ゲーム業界は大きな一歩を踏み出した。
そしてこのソフト、ワールド・クエスト。
よくあるRPG系のゲームである。
主人公はいろいろなクエストを進めながらも
最終目的である魔王ベルゼブブを倒すことである。
だが、未だに魔王は倒されていない。
「よし。"ブレイン・ダウン"!!」
【こんにちは。今日もログインありがとうございます。】
【パスワードを入力してください】
パスワードを入力。
【パスワードを確認しました。
それではワールド・クエストをお楽しみください。】
「いくぞーーーーーー!!!」
心の中は爽快。
ここは始まりの街"スタートタウン"
名前通り初心者の集まる街。
俺はここに唯一1年い続けている男。
ログイン早々、いつもの声が聞こえる。
「おい、アレ。」
「あぁ、間違いないこのゲーム最弱プレイヤーのハルってやつだ。」
「1年!?マジかよww」
何笑ってんだよ。
悔しい。俺だって・・・
俺はただただ楽しみたいだけなのに。
だが、もう慣れてしまった。
今ではもう日常茶飯事だ。
「おーーーい。ハル君ーー!」
「おぉ、あかさた。」
こいつは"あかさた"。
名前は面倒くさくて適当に打ってしまったらしい。
簡単にいうとパーティーメンバーだ。
さかのぼること1年。
俺はコイツと出会った。
まぁ、そんな話は置いといて。
「今日も張り切っていくか!?」
「うん、行こう。僕らの戦場に!」
「あぁ、行くか!!」
「へい、らっしゃい!」
「千本桜特製ラーメン一丁追加!!」
「おい、あかさた!5番テーブル拭いとけ!」
そう、ここが俺らの戦場。
千本桜。ラーメン屋である。
ここは《ワールド・クエスト》の中でも安く、そしてHP回復にはうってつけの場所。
勿論、味もいい。
このゲーム内のグルメ雑誌にも載るほどの人気っぷりだ。
連日超満員の人気店。
そこで店長を任されている。
店内にはゲーム内とは思えない仄かなラーメンの匂いが漂う。
「あかさた!ちょっと来てく・・・」
【外部より接続の恐れがありますので強制しシャットダウンさせて頂きます。】
【ログアウト】
バサーーーン
「おい、ここにずっと入ってる奴出てこい。」
冷たい!
水か?
制服がびしょびしょだ。
「は、はい。」
「お前かよ、春。ふざけてんだろ。」
ドスッ。
春の腹に思い一撃がはいった。
「ゲホゲホゲホゲホ。」
「これで終わりだと思うなよ!!」
リアルでもあっちでも俺って・・・ふと頭にそんなことがよぎった。
家に帰るといつも通り母親が心配そうな目でこちらを見る。
「ただいま」
「はい、おかえり。どうしたのその顔?」
「あ?あんたが産んだんだろ。」
「違うわよ、あざがたくさん。まさか、また殴られたんでしょ?」
「ほっとけよ・・・」
俺はこっちの世界では生きられない。
春は自分の部屋に吸い込まれるように走った。
「こんな現実・・・大ッ嫌いだ!!」
カバンの中から颯爽とブレイン・ゲートを取り出す。
「ブレイン・ダウン!!!」
俺はいつものラーメン屋へ駆けた。
「あかたさ!ごめんな!」
「ハァハァ、ハルくん。早く助けて・・・」
「分かってるよ!」
そう、これでいいんだ。
こちらの世界は俺を受け入れてくれる。
ダンジョンなんか入んなくてもいいんだ!
仕事後、店から客がいなくなり、やっと休む時間ができた。
「ハルくん、前のいきなりおちたやつなんだったの?」
「あぁ、あっちから人に呼ばれてたんだよ。」
「なんだ、そうだったのかぁー。」
ずいぶん軽いな。
もう少し・・・いや、リアルの事は持ち込まないって決めただろと自分に言い聞かせた。
もしかしたらあかさたも気を使ったのかもしれない。
「じゃあ、また明日。」
「うん、あっ、そうだ。ハルくん!」
「なんだよ?」
「明日の仕事終わりにさ・・・」
「ん?」
「ダンジョンに行こうよ!」
ダンジョン…だと・・・
「お前、正気か?だって、俺達このままで頑張って行こうっていう話じゃなかったのかよ。」
「僕もそう思ってた。だけど、このゲーム。戦わないと意味無いじゃん!!」
正論言われた!!!!!
なんだこいつ。いきなりどうしたっていうんだよ。
確かにラーメン屋するゲームではないけどさー。
まじか。
「俺は行かないぞ。」
「そっか、じゃあしょうがない。」
「分かってくれたか。」
「ひとりで行くよ!じゃあ!」
「ま、待て!」
【あかさたさんはログアウトしました。】
あいつ、約束したじゃねーか。
次の日、あいつは千本桜にこなかった。
本当にダンジョンへ一人で行ったのか!?
次の日、また次の日もあいつは帰ってこなかった。
この時、俺はただの喧嘩だと思っていた。
そんなある日のことだった。
その知らせは突然だった。
【お知らせです】
ん?なんだ?
【この度、バグにより次の方々のログアウトが3日間確認されておりません。
プレイヤー一覧
・アヤナミ
・メタモン185
・鈴木君
・GINZA
・あかさた
以上のプレイヤーを見かけた場合運営までご連絡ください】
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