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第1章 トーナメント編

第2話 魔王訪問

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俺は再びダンジョンへ入る意思を決めた。

取り敢えず、武器を買いに行かなきゃな。
その時だった。

カーーーーン カーーーーン カーーーーン

スタートタウンに鐘の音が鳴り響く。

「キャーーーーー」

「ここから早く逃げろ!!」

どうした?何が起きてんだ?

「あの、どうしたんですか?」

「魔王だよ、魔王!!」

「は?」 

「とにかく逃げろ。無限キル祭りが始まるぞ!」

 無限キル祭り?一体何のことだ?

(緊急クエスト、緊急クエスト。
ただ今、魔王がこの街に向け進行中。
直ちに討伐してください。)

「いや、不可能だろぉ!!!!!」

(賞金は100000000マネーです。)

「1億だってよ。」

「一億あったらゲーム生活変わるぞ。」

お前らに無理だって。

でも・・・

「俺も、行こっかな。」

と一言こぼしたのが間違いだった。

「ムリムリムリムリムリ。」

お前らうるせーよ!!!
周りにいるプレイヤー全員に言われたらやる気なくすわ!


「ココガハジマリノマチ、スタートタウンカ。
ソシテアレモココニアルノカ。」
 
ズシンズシン
魔王の人踏みは重かった。
彼が歩いた後、そこには何も残らない。
花も、木も、そして動物も。

魔王ベルゼブブ
このゲームの最終目的。未だに誰によっても
倒されていない。そして、その魔力は計り知れない。
HP:??????
能力:?????
最高移動速度:時速500キロ(新幹線以上)
知能指数:IQ???


(魔王が街に到着するまで残り3分です。)

あと、3分だと。
こんなことしてる場合じゃない。
早くどっかに隠れなきゃ!
いずれここも∞キル祭りになる!!

どこだ、どこに隠れれば?
そうだ。千本桜!
あそこに隠れよう。

ー東門ー

「モンヲアケヨ。」 

「誰が開けるか?お前なんかの為に!」

「デハ、イタシカタナイナ。」

「に、逃げろーーー!!こいつ、なんかする気だ!」


ドカーーーーーーーン

なんだ、今の音。爆発音、だと・・・

(たった今、魔王が門を破壊しました。
街にいる皆さんはすぐ避難してください。)

まじかよ。やばい。マジヤバイ。
てか、何処に避難すればいいんだよ!!
この街は大きな壁で囲まれている。
多分門付近は戦闘中だ!
逃げるとこなんてないぞ!


「殺せーー!」

「相手は1人だー!」

「一斉にいくぞー!」

「トルニタランナ。」

魔王の一撃はまさに一撃必殺。
どんなに装備が整っていても関係ない。

魔王は一人の男に目をつけた。
そして、目にも止まらぬ速さで急接近。

「オイ、キサマ。」

「な、何ですか?」

 男の股間が湿り気を帯びる。

「ココへアンナイシロ。」

「え?ココへ?ここって…」

その頃、ハルは町のことなんか頭から離れて自分のライフだけを守ることに専念していた。

ハァハァハァハァ
怖い、怖い。
そうだ、セーブ!
ずっとセーブすんの忘れてた。
このままだとずっと培って来たラーメンスキルがオジャンになってしまう。


ズン!
足音?まさか近くまで来てんのか?
ハァハァ。
手が震えて・・・
分かる、分かるぞ。

やつがすぐそこに来ている。
なんでこんな所に?魔王が!?
ここは町の中心街だぞ。


ガラガラ
「あ、あのーーー?」

誰だ?こんな時に。

「今、営業時間外です!!!!!」

「いやいや、そんなこと言ってる場合じゃないですって」

「なんで?」

「あの・・・・・・」

「何だよ!」

ほとんど半ギレ状態。

「魔王が来てます。」

はぁ?

「ハイルゾ。」

はぁ?

魔王は静かに席についた。

「コノミセデイチバンノラーメンヲクレ」

「え?なんで?」

「マサカ、ツクレナイノカ?」

「ただ今お出しします!!」

 俺は従がうままにラーメンを作り始めた。
 それにしてもなんで魔王がココへ?
 というか、そもそも魔王はなにをしにこの街へ?
 てか、魔王ってラーメン食うの?

 ハルの頭は爆発寸前だった。

「あ、あの?」 

「ナンダ?」

「なんでこの街に?」

「ココヘクルタメダ。MAKAIザッシデヨンダ。」

確かにここのラーメンは有名だが。

 MAKAI雑誌ってそもそも何?
 

「出来ました。千本桜特製ラーメンです。」 

「ウム。」

こいつを倒したら本当に1億が?
実はこっそり猛毒ポーションを仕込んだ。
多分味には影響しない。
まさに完璧な計画だ!!
これで1億はゲット同然!

 これで俺のゲーム人生は勝ち組一直線♫

「ズズズズ」 

「どうですか?」

「・・・・・・」

「ズルズルズルズル」

「あのー?」

「・・・・・・」


数分、沈黙の時間が続いた。

間違いない、殺される。猛毒ポーションがバレたんだ!
セーブしとけばよかった。

「オイ!!」

バレたか?

「メッチャウマイナ!!!」

「は?」

「オレゴノミニ、ドクマデイレヤガッテ」 

やっぱりバレてたーーー!
てか、好みなんて知らねーよ!
でも、隠し味だと思ってる。
意外とバカなのかもしれない。

「スープトイイ、メントイイカンペキダ!!」 

「あ、ありがとうございます。」

嬉しい。
この時の俺は、単純に嬉しかったのだ。
こんな喜びいつ以来だろう。
だが、魔王に褒められたというのが何だか・・・

そこから俺は魔王と会話した。
その数分は楽しかった。
魔王も楽しそうだった。
いつの間にか俺達はお互いを旧友のように感じていた。
多分魔王もそうだろう。
ラーメンはやはり凄い!

「あのー、そろそろカタカナ表記やめません?」

「ナニ?」

「しゃべれませんか?」

「いや、普通に喋れるに決まってるだろ!!」

「今までの何だったんですか!」

「そうだ、いい事思いついた!」

「なんですか?」


次の一言が俺のゲーム人生を大きく変えることになった。



「俺とパーティーを組まないか?」


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