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第一章 ラウス湖ビジネス編
第七話 お土産戦略
しおりを挟むその次の日もそのまた次の日も全く同じような結果に終わった。
「このままじゃやばい」
不意に弱音を吐いてみた。
「何がやばいの?このままでいいじゃない?」
すぐさま適切な反応を見せるミリ。
「そろそろ口コミで色々な人にスズキガエル食堂の名前が広がっていくはずなのに、最初に客が来てからほぼ横一線だ」
「じゃあ、どうすんのさ」
「ここで腐る俺じゃない。新たな戦略は考えている。多少借金してでもここは更なる賭けにでるぞ」
「どうでもいいけど給料は頂戴よね」
薄情なやつだ。
この新たなる戦略がこの先のスズキ商店の行く末を決定するとは思いにもよらなかった。
お土産戦略。
観光地といえば観光客。
観光客といえばお土産。
スズキガエル食堂の定番メニューから外れた商品。
取り敢えず饅頭と団子を開発した。
ラウスガエルの卵が練り込まれている。
これが吉と出るか凶と出るか。
出費は16万ゼニー。
ラウス湖周辺のショップに売り込みをする必要があった。
店頭に置かれないことには何も始まらない。
ミリと分かれて多くのショップに商談を持ちかける。
気づけばまた夕日が落ちる時間に。
分かれていたミリと再び集合した。
祝日ということもあって、町は夜になっていても活気付いていた。
「どうだった、ミリ」
「まぁ多少は‥」
「こっちもだ、やっぱり名前がまだ通っていないのか」
「カエルの卵、入ってるしね」
「今日はこの辺にして明日また作戦を立てよう」
こうして長いようで短い1日が終わった。
次の日は定休日。
言い忘れていたが、俺たちはテントで寝ている。
連日の疲労とテントの布団が引いているにしても硬い地面に疲れがたまり気味である。
次の日に起きると既に昼の12時を回っていた。
ミリはどうやら街に遊びに行ったようだ。
あいつの突発的な意見は貴重だが、しょうがない。
アルバイトだがそろそろ正社員としても雇っていい時期かもしれない。
とはいえ、こちらの方が重要だ。
何もアイデアが浮かばない。
こういう時は最早日課となっているラウスガエルの卵の採取に行く。
今日もよく取れた。
服はびしょ濡れ。
テントに再度帰宅すると、ミリが遠くから何かを言っている。
「‥たよーー」
「え?何?聞こえなーい」
「‥れてたよーー」
「腫れてたよー?」
「売れてたよーー!」
「売れてた?何が?」
「お土産!」
目の前に走って来たミリは息を荒くして、ようやく近づいた。
「お土産が売れた?どういうことだよ」
「あのね、さっき街に行ってみて、お土産が売れているかちょっと見に行ったの。そしたら完売だって。ついでに新しい契約もして来たよ」
「よし!」
ミリに思わず抱きついてしまった。
ミリの顔は夕日の赤に染まっていた。
『現在プラス20万ゼニー』
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