隠密少女は気づかれたいっ!

ぽん

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13話 アイスケーキ

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 家に帰ってシャワーを浴びた後、涼っちからLEINが来た。

『8:00に私の家に来てね! 時間厳守だからね~』

 今の時間は7:50。

『急にそんなこと言われても間に合わないよー』

『パジャマ写真が私のスマホにあることを忘れたのかな~?』 

 ずるい、それはずるいよ!

『分かりました……』

『よろしい』

 画面の向こうにある涼っちのニヤついた顔が想像できてしまう。

「行くしかないね……」

 着替えるのがめんどくさかったからパジャマで行くことにした。
 自撮りさえしなければ見られることもないし、大丈夫だよ。たぶん。

 涼っちの家までは歩いて10分くらいで着く。
 歩いて10分だから走っていかないと間に合わない。

「せっかくシャワー浴びたのにー!!!」

 レベルが上がったおかげで涼っちの家まで走ってもそこまで疲れなかった。
 でもこんなことで身体能力が上がったことを実感したくはなかった。
 もっとダンジョン内での激闘とかで実感したかったよ。
 隠密があるから激闘なんてできないと思うけどね。

「インターホンを押して、もし涼っちのお母さんが出たらどうしよう。そもそもインターホン越しに私の声って聞こえるのかな?」

 インターホン越しで聞こえるなら電話でも聞こえるかもしれない。
 そもそも電話をかけることもかかってくることも全くなかったから電話の存在自体忘れていたよ。

 試しにインターホンを鳴らしてみる。

 ピーンポーンと言う音が鳴ってからしばらくして家のドアが開いた。

「ほかりんやっほー! 早く入ってー」

 まさかのインターホンに出ないパターンだった。
 しょうがない、あとで電話で試してみよう。

 私は涼っちと手を繋いで家の中に入る。
 こうしないと私の位置が分からなくて不便だからね。
 涼っちに手を引っ張られリビングまで連れて行かれた。
 リビングの真ん中には沢山の料理が置かれたテーブルがあり、そのテーブルを囲むように椅子が置かれていて、涼っちのお母さんらしき人が座っている。

「ママ! ほかりんを連れてきたよー!」

 涼っちがそう言ってもお母さんに反応はない。
 私はこれが隠密の効果だとすぐに分かったけど、もう少し黙っていよう。
 面白そうだからね。

「ママ? 聞こえてないの?」

 この距離で聞こえないなんてありえるはずがないんだけどねー。

「ママ……?」

 涼っちふぁいとだよ!

「無視しないでよ……」

 少し可哀想になってきたから私は繋いでる手を離した。
 やっぱり効果が切れるまで少し時間差があるみたいで、離して5秒くらい経ってから涼っちのお母さんが驚いた顔をしていた。
 急に人が現れたら誰だって驚くよね。

 この後、涼っちがお母さんに私と私のスキルについて説明してくれた。
 LEINでの文字での会話は時間がかかってめんどくさいので、電話でできるか試してみたらなんの問題もなくできてしまった。
 もっと前から試していたら良かったと思ったけど、過ぎたことはしょうがないね。

 そんなことよりまずはお母さんに挨拶しよう。

「は、初めまして、穂刈琴音です。よろしくお願いしましゅ……」

 うわぁぁぁ!! 噛んじゃったよぉぉぉ!!
 もう消えてしまいたい……
 実際に消えてはいるって――うるさいよー!!

「ここで噛むなんてさっすがほかりん! 可愛いね~!」

 涼っちに言われるとすごいムカつくよ!

「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。初めまして、涼花の母の涼子りょうこです」

 私はこの時、涼っちがこんなに美人なのは絶対にお母さんの遺伝だと思った。
 女優にいてもおかしくないレベルだよ。

「逆だよ!私がいつもほかりんのお世話をしているの。ペットみたいにね!」

 そんなことを言ったからか涼っちはお母さんに怒られていた。
 私をペット扱いした罰だね!

「ずっと気になってたんだけど、どうして急に家に呼んだの?」

「ほかりんの誕生日パーティをするために決まってるじゃんか! この前はアイスをあげた以外何もできなかったからちゃんとしたのをしたいなって!」

 決まってはいないと思うけど、誕生日パーティは嬉しい。
 涼っち最高だよ! 大好き!
 そう思ったけど口に出したりはしない。
 言ったら涼っち調子乗りそうだもん。

「涼っちありがとね……」

 嬉しくて涙が出てきてしまった。
 涼っちにバレたらまたなんか言われそうだよ。

「もしかしてほかりん泣いてるの?」

「な、泣いてなんていないよ!」

 涼っちやっぱり鋭い。

「琴音ちゃん、今日はいっぱい食べてね。ご飯の後にはケーキもあるからね」

「何から何までありがとうございます。涼っちもありがとね!」

「どういたしましてー!」

 涼っちが私よりも嬉しそうな顔をしているように見えるんだけど気のせいかな。

 料理は私がいつも作ってるのと比べ物にならないくらいおいしかった。
 お腹も空いてたからいっぱい食べれた。

「幸せだよ~」

 でも私が夜ご飯をもう食べていたらどうしたんだろう。
 涼っちのことだから絶対そんなこと考えてなかっただろうね。

「ご飯も食べ終わったことだし、次はケーキだよー! 今日のケーキはほかりんが好きなやつだと思うよ!」

 そう言って冷凍庫からケーキを取り出す。
 冷凍庫? って思ったけど、これはあれだ。
 サーティーンウォンのアイスケーキだ!

「ありがと……これだけ祝って貰えたら明日死んでも後悔はないよ!」

「ふふっ! ほかりん大げさすぎだよ――ってケーキもう溶けてきてるじゃん!」

 涼っちは慌ててケーキを皿に分けてくれた。
 溶ける前に食べちゃってって言われたから早く食べよう。

「いただきます!」

 口に入れた瞬間、幸せすぎて死んでしまいそうになった。
 なにこれ? おいしすぎない?
 夜ご飯の後だけど、無限に食べれそうだよ。

「ごちそうさまでした!」

 ケーキを食べた後、もう少しパーティを楽しみたかったけど、もう10:00を過ぎていたから家に帰った。

「あー楽しかった! 今度は私が涼っちの誕生日パーティをしてあげないとねー!」

 私は家に着いてから明日の準備を済ませてすぐに寝た。
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