『ハイコウミッション月遊録』「SF落語」ライプレ劇場編①

蟻井草也

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結の章・前編

募集お題「かまくら」

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ある場所まで来ると、ハイコウが立ち止まってパイセンに尋ねました。
「どうです? この景色は?」
その場所を眺めて、パイセンは思わず声を上げました。
「なんや! なんや? この、かまくらだらけの場所は? 一面、かまくらだらけやないかいな?」
「月面雪まつりシーズン限定の『かまくらコテージ村』ですよ。これから案内する『かまくらコテージ』の部屋を借り切ってありますので、そこで作戦を練って決行の時を待ちましょう!」
という事で、かまくら部屋にこもる事になりました。

「外から見てた時はこじんまりした感じやったけど、中に入ったら意外と広いねんなぁ~? で、ここで何をすんねや?」
「そうですね~? まずはダン坊の歩行練習をしてもらえますか? お願いしますよ、パイセン!」
「えっ? ダン坊を歩かせるのかいな? 乳飲み子やのに大丈夫か~?」
「もう大丈夫だと思いますよ。だまされたと思って、まずは立たせてみて下さいよ!」
「ほんま大丈夫かな~? おっ! 立ったで~? ダン坊が立った~! ダン坊が立ったで~?『クララが立った!』いう言葉があるけど、俺はクラクラしてきたで~?」
「では、ヨッチ、ヨッチ! って感じで歩かせてみて下さい」
「そ、そ、そうか? はい、ヨッチ、ヨッチ、しましょうね~?」
「その調子、その調子! 僕はその間に他の準備作業をしてますからね~」
そんな感じで始まった歩行練習も時間が経つと終了の時を迎えました。
「もうすっかり、しっかりとした足取りで歩くようになったで~? さすがにすごい成長の仕方やな~?」
「なんだか、その口振りだと、ほとんど分かったようですね~? パイセン?」
「ほとんどどころか、ぜ~んぶ分かってもたわ! お前の本当にやりたい事もな~!」
「おっと、それは内緒ですよ」声を落として更に続けます。「ダン坊に聞かれちゃマズイですからね」
「おお、そうか。お口チャックやな? 分かった、分かった」
こんな感じで、やがて作戦決行の時間がやってまいりました。

ハイコウのやりたい事を理解し、勝手の分かったパイセンは、ダン坊を肩車して自分の頭をペロペロと舐めさせながらハイコウと答え合わせをしつつUFO雪像の所まで歩いております。
「つまり、あれやな? ダン坊はダンボ石の表面から採取した宇宙人の細胞を元に作ったんやな?」
「御名答!」
「その宇宙人の細胞には情報収集能力と学習分析能力の機能が備わってるんやろ?」
「御名答!」
「だから、ダン坊はペロペロと舐めれば舐めるほど賢くなるし成長度も加速されるっちゅうわけやな?」
「御名答!」
「これからやる作戦の手順はこうやろな? まずはUFOの雪の一部を剥ぎ取ってダン坊にUFO表面を舐めさせる」
「御名答!」
「ダン坊がUFOの乗り込み口を示したら、そこから入って操縦席らしい所を探す」
「御名答!」
「その操縦席の座席や操縦桿などをダン坊に舐めさせ、宇宙人パイロットの居場所を追跡させる」
「御名答!」
「で、お前がゴソゴソやってたベビーカーの改造の内容を教えてほしいねんけど?」
「御名答…じゃないっすね? すみません。つい、流れで…。えっとですね~。このベビーカーはもともと分離できるように設計しておりましてね。簡易宇宙服とか簡単な武器や防具になるようになってます。その作業が、いざという時に簡単に出来るように大まかなパーツだけは組み変えておいたんですよ」
「ああ、そういう事やったんか?」
「ええ、そうなんです」
なんて感じで、これから行う作戦の大体の筋道が固まった頃に、ダン坊の声がふたりの頭の上に響きました。
「パパン! ママン! ユッホ、ユッホ!」
現場に到着したので、先ほど確認した手順で順調よく作業を進める三人なのでありました。

UFO内での作業を終えて、三人が外に出た時には雪が降っていました。
「パイセン! これは、この時間になると降ってくる深夜降雪です。各雪像に個別に設定してある形状記憶データにより、知らず知らずに傷ついた雪像を自動修復する為のものなんですよ」
「へ~! そんな機能があるんかいな? そしたら、我々の侵入の痕跡も消えるわけやな?」
「詳しく調べられるとヤバイですけど『パッと見』では分からないと思います。でも、巡回の警備員が来ないうちにここは退散しましょう!」
「せやな? とっとと逃げるが勝ちやしな!」
「トット、トット、ニゲ、ニゲ~!」
こうして、冬ドームから月面表面へ出る事が出来るゲートエリアへ向かいますと、簡易宇宙服や各種の武器や防具などの装備を整えたのちに、月面表面へ、いざ出発!

ダン坊を先導者としてハイコウとパイセンは問題のクレーター探しを始めました。
月面都市のドームの管理された人工重力と違って、月の天然重力下では『ピョンピョン歩き』と呼ばれる『歩く』というよりも『跳ね飛ぶ』ようにピョンピョンしなければなりません。
ダン坊がピョンピョン!
ハイコウもピョンピョン!
パイセンもピョンピョン!
どれほどの時間ピョンピョンしたでしょうか?
どれほどの距離をピョンピョンしたでしょうか?
…いくつのクレーターを見つけたでしょうか? いくつのクレーターを通り過ぎたでしょうか?…

やがて、急にダン坊が立ち止まりました。
その両脇に立つパイセンとハイコウは、目の前にあるクレーターを見ながら通信会話を始めました。
「ここかいな?」
「ここでしょうね?」
「さっきは警備がなかったけど、ここではどやろか?」
「特別な警備をすると返って目立つので、さっきはイベント会場の巡回警備に任せてたんだと思います。ここでも、こんなへんぴなクレーターに警備態勢をひいたら逆に目立ちますからスッカラカンだと思いますよ?」
「せやろか?」
「セヤ、セヤ! スッカラ、スッカラ!」
「ダン坊もそう思うか? ほな、クレーターの中へ行こか?」
「行きましょう! お鍋の中へオカマカップルが行く! ですね~?」
「ナベ、ナベ! カマ、カマ!」
三人は心を決めて『鍋底の黒焦げ』を目指します。
つまりは、宇宙人が囚われた秘密基地へGO! したのでした。

クレーターを転がり落ちるような勢いで降り切った三人は、そこにある施設への侵入を始めます。
「警備はないって言うてたけど、監視ロボットが出入り口を固めてるで?」
「そりゃ、スッカラカンと言っても、あくまで人員の事ですからね~。ロボットぐらいは配置してますよ。この発射武器で狙い撃ちしましょう!」
「じゃあ、撃ち始めるで。せ~の!」
ふたりで射撃を開始しました。
ところが、発射音が少しおかしい…?
イヤァァァン~! イヤァァァン~! イヤァァァン~!……
「な、な、なんや? この発射音は~?」
「オカマカップルなんで、それ用に作ってみました」
「どういうこっちゃねん! ほんま、あきれるわっ!」
「ハハハ! それはそうと、出入り口が突破できるようになりましたよ。さぁ~、行きましょう!」
こうして、施設内へと侵入いたします。
やっぱり施設の中でも、監視ロボットが活動をしていまして、見つける度に攻撃します。
イヤァァァン~! イヤァァァン~! イヤァァァン~!……
「なかなか慣れんな~? この音には~?」
なんて言ってるパイセンの防具にロボットの防衛射撃が当たりました。
アッハァァァ~ン~!
「な、な、なんや? 今度の音は?」
「ハハハ~! 防具にもオカマな工夫をしてみました」
「ほんま、あきれかえるわ!」
そんなこんなで、通路を進みながらロボットを少しずつ倒してゆきます。
やがて、ダン坊があるドアの前で立ち止まりました。
「パパン! ママン! ココ、ココ!」
「ここやな?」
「ここですね?」
ドアの施錠を武器で壊して、部屋に入りました。
その部屋にあったのは大きなカプセル。
そのカプセルに宇宙人が寝かされていました。
「死んでないやろな?」
「麻酔で寝かせてるだけだと思いますよ。ロボットの通報による応援の警備が到着する前に逃げないといけないので、このまま月面車で運びましょう!」
「月面車? そんなんあんのかいな?」
「こういう施設なら車両室があるはずです。まずは、このカプセルを車両室まで運ばないといけませんけどね。そこらにカプセル運搬用の台車はないですか~?」
「あっ、あった! あったで~! これで運ぼうや!」
こうして、この秘密基地から月面車での脱出を果たしました。
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