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助けない。
しおりを挟む「ぴーっ!!」
電車が来る音が近づいてくる。
僕はその音が非常にゆっくりに聞こえた。
その理由は、眼下にあった。
「うぃーひっく」
「・・・っ!!」
酔っ払いが線路に横向きになって寝ているのである。
時間はあと十秒あるかどうか。
僕は思わず線路に降りた。
「ぐっ・・!!」
そして引っ張ろうとしたのだが、しかし重い。よっぱらい特有の脱力した体は思ったよりも持ち運びにくいのだ。
しかしこのままではこの人は死んでしまうだろう。必死に動かしていると、頭上から声がかかった。
「おい!坊主!!逃げろ!!」
周囲が唖然としている中で、この人だけは冷静に物事を見ていた。
しかし僕は彼に怒りをおぼえた。なぜ動けるのに助けないんだ?ヒトが今死にそうになっているんだぞ?!
必死に叫んだ。
「あなたも手づだってください!!」
「いや!!ダメだ!!もう助からん!!おいていけ!!!」
「っ・・!!」
キキーっ!
僕は思わず横を見た。列車はもう視認できるところにまである。その迫力、風圧、音圧にすっかり腰が抜けてしまった。そして確信する。この状態でこの人を助けることはもう不可能だ、と。
「っ!!!」
最後の力を引き絞り、僕は線路下の隙間に富んで逃げる。
あとは・・・サッシの通りだ。
事情聴取が済み、僕は警察署から出た。するとそこにはさっきの冷静だった人がいた。
「っ!!」
カッとなって僕は手を出してしまいそうになった。だが冷静さがすぐに勝り拳を引き下げる。
だが、しかし、、思わぬ事態が発生した。
パンっ!!
「っ!!」
逆に頬を貼られたのである。
「な、何をするんですか!!」
「・・二度と馬鹿なことをするんじゃねぇぞ」
そう言って彼はどこかへ去っていった。
「なんだよ・・!!あいつ・・!!」
助けようともしなかったくせに。あいつが助けようとしていれば、今頃あの人は生きていたかもしれないんだぞ?!
ホームに響き渡る声で僕は叫んだ。
「この人殺しがぁあああ!!!」
ーー
「あーあ、少し大人げないことをしてしまったか・・」
ため息が出た。
なんであんなことをしてしまったのか、自分でもよくわからない。
しかし、昔の自分を見ているようで、少し気になったのかもしれない。
「なんでこんな風になっちまったのかな、俺。いや・・・」
確かに、あの酔っ払いを助けることはできただろう。俺一人ならまだしもその場にいた彼と一緒なら、
だが、それは物理的には可能であっても、精神的には無理だった。
そう、俺は数年前、通り魔に襲われそうになった女性を助けようとしていた。
だが、それは間違いだったのだ。
当時格闘トレーニングを積んでいた俺ならば、簡単に処理できると思っていた。だがしかしそれは間違いであり、銃を持っていたその犯人の手によって、女性を死なせてしまったのである。
そして、その遺族から訴えられたのだ。
当時貧乏だった俺には法外な値段を払うことはできず、数年間、刑務所で暮らすことになってしまったのである。
その時に誓ったのだ。自分の身は自分で守る。他人など助けている暇はないのだと。
後悔はない。
だが、あいつが俺と同じ目に合うのは、どうしても自分の昔を重ねてしまった。
危なっかしい奴だ。あのお人よしならば、連帯責任のハンコも簡単に押してしまいそうでひやひやする。
まあ、でも仮にそうなったとしても・・
「関係ねぇか。すべては自己責任なんだからな」
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