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え?!あの名作ゲームをオンラインアバターで?!

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「効いてほしいんだ。これが・・最後になるかもしれないから」
「お前・・消えるのか・・?」
「人の夢は消えねぇ!!」
「お前は俺が守ります!たぶんね!」



「みたいな、感動的なシーンってあるじゃないですか。」「はい」「それをですね、アバターでできないかと思ってですね」「ほうほう」

ここは有名ゲームハード会社である。世界は割とVRが家庭で簡単にできる時代。そして、個人は大抵自分の分身といえるアバターを持っていた。自分の姿に似せるもよし、モルに盛ってもよしというわけである。それで色々とオフ会とかいざこざの原因になっていたのだが、さておき。

「やはり、人はげーむやアニメのキャラになり切りたいと思うんですよ」「根拠は?」「没入感?っていうんですか?昔のゲームにはそういうのがあったんです。共感とかね。それって、その人がそのキャラになり切りたいっていう願望だと思うんですよ」「一理ある。よっしゃ!やってみっか!!」

みたいな、軽いノリで始まったプロジェクトだった。軽い気持ちでやったプロジェクトが、やがて一大ムーブメントについでに利益がっぽりという路線が、今求められていたのだった。

そして、今までの3Dデータや画像データからモーションデータを作成して、VRのアバターの体に圧力をかけてその動きや言葉を動かしやすくするという感じにした。

そして・・完成、公開し、それは一段ムーブメントとまではいかなかったが、一定のその作品のファンの一部には受け入れられていた。

「ムーナー!!死んじゃいヤァあああああああん!!!」
「そいつの味・・なかなかにうまかったぞ」
「貴様ぉあああああああああああああああああ!!」

彼らはネットワークで偶然マッチングした中である。なんか音ゲーみたいな感じに、決まった動きをすればいいだけの奴だ。圧力アシストもなしの設定であり、その動きやセリフがどれだけ本家とあっているかで最終的にスコアが加算される。そしてそのポイントでプレイ可能なイベントのアンロックを外したりしていくのだ。

そして、今行われているイベントでは「たぁっ!!」主人公の師匠が割って入るシーンである。
「ボルゴン!!今は引け!!」
「で、でも・・ッ!」
「気ぃ引き締めろ!ムーは・・死んだんだ!」
「いやだ・・いやだいやだいやだ・・いや・・・」

ぷっ、とボルゴンは噴出した。
「だって‥くくくっ・・!さっきまであんなに・・・ぷぷぷ・・」
「ひひひ・・っ!」

本来の演出ではないセリフを言っている原因は、師匠役のアバターが来ている衣装にあった。
「ぷひひ~!!馬のぬいぐるみ~!!」
「ぱおーん」「ひひひ!!」

そう、これはオンラインアバター。ボルゴン役はなんとなくアクセサリーを付けているという程度で、ライバルのパールは完全にそのキャラだが、師匠役は完全にげてものである。両手足がタコ足で、足はガンダムであった。

「ああ、最高!こういうことがあるからオンラインセッションは辞められないぜ!」「ぱおーん!!」

そしてそんな様子を見ていたライバル役のパールは、ぷるぷると怒りに震えていた。笑いをこらえているのではなく、怒りをこらえていたのだ。

「てめぇ!!よくも聖域をけがしたな!!」「?!」
いきなり叫ばれてびっくりする二人。
「そういうのはね!!よそでやってくれないかな?!これは遊びじゃないんだよ?!」
「(が、ガチ勢だ・・ッ!)」

遊びに真剣になる層は一定数いる。そしてふざけているのが当然の雰囲気になっていたゲームで、こういう人はたまにしか出会わないのである。思わず
「ご、ごめんなさい・・」「すまん・・」と、誤ってしまうが、
「ボルゴンと師匠はそういうこと言わない!!」

そういって説教をし始めた彼だったが、ムーナー役の人は内心面白がっていた。

「(いやぁ学生時代にこういう教師と生徒いたよなぁ)」

実に不毛な空間だった。起こられていない人は完全に自習になるのでありがたいのである。
当時を懐かしがりつつムーナーは腹から血を流していた。








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