転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

文字の大きさ
112 / 537
6章

旅立ち




 パーティーの次の日を丸一日最終準備に充て、バタバタと慌ただしく過ごした。
 今日は夜明け前に起こしてもらい、急いで準備したら出発だ。
 昨日の夜にブラン団長達への感謝の手紙を書いたのでプルトンに頼んでブラン団長の部屋に置いてきてもらった。
 しんみりした別れになったら絶対泣いちゃう自信があるから、ブラン団長達に旅立つ日を教えなかった。なので手紙にはそのことについての謝罪も書いてある。


 夜明けと同時に王都の門から外に出て、少し離れた場所でネラース達を影から呼んだ。

「みんなー。今日から出発だからよろしくね!」

 私が言うと、元気に返事をしてくれた。
 今日は初日なので、馬車を出さずに通常サイズに戻ったネラース達に乗せてもらう。
 通常サイズに戻ってもらった姿を見て私が大興奮したのは言うまでもない。わしゃわしゃモフモフと毛皮に包ませてもらった。けしからんくらい素晴らしいモフモフでした。

 私は黒豹のネラース、ジルベルト君は白熊のアクラン、グレンは秋田犬のニヴェスだ。
 鳥のルフスは上空からの偵察をお願いした。

 初めての騎乗に緊張しながら乗せてもらった。特に落ちそうとかはなく安定していて、一応毛を掴ませてもらったけど、急な方向転換とかなければ捕まらなくても大丈夫なくらいだった。
 ゆっくりめに走ってもらって、目指すはルート上で一番近い村だ。

『主様、本当に別れの挨拶しなくて良かったの?』
「うん。挨拶したら離れがたくなっちゃう気がして……私のワガママだよ。手紙には書いたけど、このワガママも許してもらえたらいいな」

 クラオルは何も言わず頬にスリスリしてくれて、それがまた心にきた。
 泣かないようにと自分本意で挨拶しなかったのに、涙が目尻から風に乗って散っていった。


 しばらく走ってもらったら、遅めの朝ごはん兼休憩時間だ。
 買い足したファミリーサイズのテーブルとイスを草原に出し、焼きおにぎりとキュウリの酢なし浅漬けとお味噌汁をみんなと食べる。もちろんネラース達も一緒だ。ビックリしていたけど、喜んで食べてくれた。
 日本の味はホッコリと心に沁みる。自分で決めたことなのに今さら自己嫌悪に陥っていたけど落ち着けた。ギルドのある街に着いたら改めて謝罪と報告のお手紙を出そう。

〈やはり外はいいな!〉
「そうだねぇ。ずっと王都にいたもんね」

 グレンはずっと王都にいてストレスが溜まっているみたいで思いっきり伸びをしている。

〈うむ。これで魔物でも出てくれたら暴れられるんだがな〉
「狩りに行ってもいいよ?」
〈ムッ。われはセナと共にいるぞ〉
「みんなと一緒だから大丈夫なのに心配性だなぁ」

 少しゆっくりしてから出発した。
 私も戦うのは久しぶりだから、ちょっと弱めな魔物で感覚を取り戻したい。取り戻したいって言うほど戦っていない気もするけど……
 ネラースの背中で魔物の気配を探すと、いるにはいるけど私達から離れていく。

「ねぇ、クラオル。魔物さ、いるにはいるんだけど避けられてるっぽい。私達がある程度近付くと逃げてく」
『あぁー、理由がわかったわ。お昼ご飯のときに説明するから、お昼までは安全よ』

 私への説明もお昼にしてくれるらしいので、今は気にしないことにした。
 グレンもそうだけど、ポラルもテンションが高い。精霊達も気持ち良さそうに飛んでいる。クラオルもグレウスもずっと王都にいたから森が恋しいと思う。途中からコテージでもゆっくりしていない。
 多分本人達も意識せずにフラストレーションが溜まっているんだと思う。自己満のために動いていたけど、もっと家族のことを考えるべきだった。みんなはいつも私を気遣ってくれるのに……甘えすぎた。しっかり周りをみなければ。

 ちょうど休憩にいい大きな木があったので、お昼ご飯は木陰にラグを敷いてピクニック風になった。
 お昼ご飯のホットドッグを食べ終わるとクラオルがみんなの注目を集めた。

『ネラース達も魔物と戦いたいのよね?』
『ご主人様のお役に立つっち! アタシ達も戦えるっち!』

 クラオルの言葉に食い気味にルフスが反応するとネラース達が頷いた。

『それなら魔力を抑えなきゃダメよ。外に出られて嬉しいのはわかるけど。グレン! あんたもよ! みんなから魔物が逃げてて遭遇しないのよ』

 みんなのテンションが上がって魔力がだだ漏れだったらしく、強い気配を察知して魔物がいなくなっていたらしい。
 やっぱり少し発散させた方が良さそうだ。目的はあるけど、少しくらい寄り道しても大丈夫だろう。

「ちょっと予定を変更して森に寄ろうか?」
〈本当か!?〉
「ふふっ。うん、本当だよ」

 グレンが勢い良く反応して笑ってしまった。
 ネラース達の大きさだと冒険者や商人に誤解されて襲われるかもしれないとジルベルト君が教えてくれた。街道沿いだと他の冒険者や商人に遭遇する可能性があるので、少し外れた場所を通った方が安全だとクラオルにも教えてもらった。
 なんと、ネラース達はパパ達神様に選ばれただけあって珍しい魔獣らしい。街の中は宿屋以外影に入ってもらおうと決めた瞬間だった。

 少し休憩してからネラース達に指示を出して森に向かってもらった。
 みんなの魔力を抑えたからか、途中ホーンラビとエギューラビのウサギの集団に遭遇してグレンとルフスが嬉嬉として突っ込んで行った。
 グレンはニヴェスに乗せてもらっていたのに突っ込んで行くときは自分の羽で飛んでいて、置いていかれたニヴェスが可哀想だった。

「ホーンラビはひたいのツノが素材になり、エギューラビは毛皮が素材です。両方とも肉は食べられます」

 グレンとルフスが狩ってきた20匹ほどのウサギを見ながらジルベルト君が教えてくれた。ただ、グレンは殴っていたから大丈夫だけど、ルフスが攻撃したエギューラビは毛皮が焼けていてギルドでは買い取って貰えなさそうだ。
 この辺も説明が必要そうだと思いながら、とりあえずウサギを回収してから出発した。

 その後は特に遭遇せず夕方近くなり、野営の準備を始めた。結界はプルトンが張ってくれたので安心安全だ。
 みんなに馬車を出そうか聞いてみたけど、久しぶりの外だから外で寝たいらしい。
 廃教会で回収した廃材をたき火で燃やし、カリダの街でもらった四口よんくちコンロを出した。今までまともに使っていなかったけど、やっとまともに活用できそうだ。
 たき火で串焼きを作り、コンロでポトフを作った。

 パチパチと燃えるたき火に徐々に夜へと移りゆく空を見て、街を出たんだなぁと実感した。野営で外で眠るのは呪淵じゅえんの森を思い出す。討伐隊でも野営をしたけど、あの時は気を張っていたし途中から具合が悪かったため、風景を楽しむ余裕なんかなかった。

 こんな外でも、夜ご飯が終わったらリバーシをやりたいらしく催促がきた。いくらたき火があっても明かりのない外は暗いため頭上にライトを付けてあげた。スポットライトみたいに照らされながらリバーシを楽しむグレン達を、興味津々に縮小化したネラース達が見ている。

「セナ様、紅茶のおかわりはいかがですか?」
「飲むー! ジルベルト君ありがとう」

 ジルベルト君に紅茶のおかわりを淹れてもらい、頭の中でマップを開く。
 ゆっくり走ってもらっているとはいえ、ネラース達のスピードは魔馬車より早い。思っていたよりも早く森に着けそうだ。風圧も感じず、ただ爽やかな風に吹かれているくらいの感覚なのに。

 今日の感じだとグレンはまだ暴れ足りなさそうだし、ルフスも好戦的な感じがする。グレンとルフスに全て倒されちゃったけど、ネラース達も戦いたがっていたから、みんながストレス発散できるくらいの魔物が森にいて欲しい。

 エルミスに時間だと言われるまでどうすればみんなのストレスを発散できるかを考えていた。
 リバーシを回収して野営用の毛布を敷くとネラースが通常サイズで毛布の上に乗ってきた。どうしたのか聞いてみると枕になってくれるらしい。
(モフモフに包まれて眠れるなんて素敵!)

『ずるいの!』
『ぼくも一緒に寝たいですン』

 なんとアクランとニヴェスも一緒に寝たいらしい。でも通常サイズだと大きすぎるし、縮小化すると潰してしまいそうだと説明すると言い合いを始めてしまった。
(キャァー! モフモフが私のために争ってるわー!)
 なんてモフモフ好きとしてはたまらないシチュエーションにムフフと頬を緩めていると、口喧嘩に発展しそうになっていて急いで止めた。
 順番にお願いすることに納得してもらって場を収め、今日はネラースが私の枕だ。

「はわぁ~……気持ちいい」

 ネラースのサラサラな毛並みを堪能してクラオルとグレウスを抱きしめる。
 ネラースがシッポでポンポンと優しくリズムを取ってくれる。
 ネラースのモフモフに包まれ、腕の中にもモフモフ。シッポのリズムも相まって眠気に誘われるまま夢の世界へ旅立った。
感想 1,819

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜

由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。 初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。 溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。