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6章
旅立ち
パーティーの次の日を丸一日最終準備に充て、バタバタと慌ただしく過ごした。
今日は夜明け前に起こしてもらい、急いで準備したら出発だ。
昨日の夜にブラン団長達への感謝の手紙を書いたのでプルトンに頼んでブラン団長の部屋に置いてきてもらった。
しんみりした別れになったら絶対泣いちゃう自信があるから、ブラン団長達に旅立つ日を教えなかった。なので手紙にはそのことについての謝罪も書いてある。
夜明けと同時に王都の門から外に出て、少し離れた場所でネラース達を影から呼んだ。
「みんなー。今日から出発だからよろしくね!」
私が言うと、元気に返事をしてくれた。
今日は初日なので、馬車を出さずに通常サイズに戻ったネラース達に乗せてもらう。
通常サイズに戻ってもらった姿を見て私が大興奮したのは言うまでもない。わしゃわしゃモフモフと毛皮に包ませてもらった。けしからんくらい素晴らしいモフモフでした。
私は黒豹のネラース、ジルベルト君は白熊のアクラン、グレンは秋田犬のニヴェスだ。
鳥のルフスは上空からの偵察をお願いした。
初めての騎乗に緊張しながら乗せてもらった。特に落ちそうとかはなく安定していて、一応毛を掴ませてもらったけど、急な方向転換とかなければ捕まらなくても大丈夫なくらいだった。
ゆっくりめに走ってもらって、目指すはルート上で一番近い村だ。
『主様、本当に別れの挨拶しなくて良かったの?』
「うん。挨拶したら離れ難くなっちゃう気がして……私のワガママだよ。手紙には書いたけど、このワガママも許してもらえたらいいな」
クラオルは何も言わず頬にスリスリしてくれて、それがまた心にきた。
泣かないようにと自分本意で挨拶しなかったのに、涙が目尻から風に乗って散っていった。
しばらく走ってもらったら、遅めの朝ごはん兼休憩時間だ。
買い足したファミリーサイズのテーブルとイスを草原に出し、焼きおにぎりとキュウリの酢なし浅漬けとお味噌汁をみんなと食べる。もちろんネラース達も一緒だ。ビックリしていたけど、喜んで食べてくれた。
日本の味はホッコリと心に沁みる。自分で決めたことなのに今さら自己嫌悪に陥っていたけど落ち着けた。ギルドのある街に着いたら改めて謝罪と報告のお手紙を出そう。
〈やはり外はいいな!〉
「そうだねぇ。ずっと王都にいたもんね」
グレンはずっと王都にいてストレスが溜まっているみたいで思いっきり伸びをしている。
〈うむ。これで魔物でも出てくれたら暴れられるんだがな〉
「狩りに行ってもいいよ?」
〈ムッ。我はセナと共にいるぞ〉
「みんなと一緒だから大丈夫なのに心配性だなぁ」
少しゆっくりしてから出発した。
私も戦うのは久しぶりだから、ちょっと弱めな魔物で感覚を取り戻したい。取り戻したいって言うほど戦っていない気もするけど……
ネラースの背中で魔物の気配を探すと、いるにはいるけど私達から離れていく。
「ねぇ、クラオル。魔物さ、いるにはいるんだけど避けられてるっぽい。私達がある程度近付くと逃げてく」
『あぁー、理由がわかったわ。お昼ご飯のときに説明するから、お昼までは安全よ』
私への説明もお昼にしてくれるらしいので、今は気にしないことにした。
グレンもそうだけど、ポラルもテンションが高い。精霊達も気持ち良さそうに飛んでいる。クラオルもグレウスもずっと王都にいたから森が恋しいと思う。途中からコテージでもゆっくりしていない。
多分本人達も意識せずにフラストレーションが溜まっているんだと思う。自己満のために動いていたけど、もっと家族のことを考えるべきだった。みんなはいつも私を気遣ってくれるのに……甘えすぎた。しっかり周りをみなければ。
ちょうど休憩にいい大きな木があったので、お昼ご飯は木陰にラグを敷いてピクニック風になった。
お昼ご飯のホットドッグを食べ終わるとクラオルがみんなの注目を集めた。
『ネラース達も魔物と戦いたいのよね?』
『ご主人様のお役に立つっち! アタシ達も戦えるっち!』
クラオルの言葉に食い気味にルフスが反応するとネラース達が頷いた。
『それなら魔力を抑えなきゃダメよ。外に出られて嬉しいのはわかるけど。グレン! あんたもよ! みんなから魔物が逃げてて遭遇しないのよ』
みんなのテンションが上がって魔力がだだ漏れだったらしく、強い気配を察知して魔物がいなくなっていたらしい。
やっぱり少し発散させた方が良さそうだ。目的はあるけど、少しくらい寄り道しても大丈夫だろう。
「ちょっと予定を変更して森に寄ろうか?」
〈本当か!?〉
「ふふっ。うん、本当だよ」
グレンが勢い良く反応して笑ってしまった。
ネラース達の大きさだと冒険者や商人に誤解されて襲われるかもしれないとジルベルト君が教えてくれた。街道沿いだと他の冒険者や商人に遭遇する可能性があるので、少し外れた場所を通った方が安全だとクラオルにも教えてもらった。
なんと、ネラース達はパパ達神様に選ばれただけあって珍しい魔獣らしい。街の中は宿屋以外影に入ってもらおうと決めた瞬間だった。
少し休憩してからネラース達に指示を出して森に向かってもらった。
みんなの魔力を抑えたからか、途中ホーンラビとエギューラビのウサギの集団に遭遇してグレンとルフスが嬉嬉として突っ込んで行った。
グレンはニヴェスに乗せてもらっていたのに突っ込んで行くときは自分の羽で飛んでいて、置いていかれたニヴェスが可哀想だった。
「ホーンラビは額のツノが素材になり、エギューラビは毛皮が素材です。両方とも肉は食べられます」
グレンとルフスが狩ってきた20匹ほどのウサギを見ながらジルベルト君が教えてくれた。ただ、グレンは殴っていたから大丈夫だけど、ルフスが攻撃したエギューラビは毛皮が焼けていてギルドでは買い取って貰えなさそうだ。
この辺も説明が必要そうだと思いながら、とりあえずウサギを回収してから出発した。
その後は特に遭遇せず夕方近くなり、野営の準備を始めた。結界はプルトンが張ってくれたので安心安全だ。
みんなに馬車を出そうか聞いてみたけど、久しぶりの外だから外で寝たいらしい。
廃教会で回収した廃材をたき火で燃やし、カリダの街でもらった四口コンロを出した。今までまともに使っていなかったけど、やっとまともに活用できそうだ。
たき火で串焼きを作り、コンロでポトフを作った。
パチパチと燃えるたき火に徐々に夜へと移りゆく空を見て、街を出たんだなぁと実感した。野営で外で眠るのは呪淵の森を思い出す。討伐隊でも野営をしたけど、あの時は気を張っていたし途中から具合が悪かったため、風景を楽しむ余裕なんかなかった。
こんな外でも、夜ご飯が終わったらリバーシをやりたいらしく催促がきた。いくらたき火があっても明かりのない外は暗いため頭上にライトを付けてあげた。スポットライトみたいに照らされながらリバーシを楽しむグレン達を、興味津々に縮小化したネラース達が見ている。
「セナ様、紅茶のおかわりはいかがですか?」
「飲むー! ジルベルト君ありがとう」
ジルベルト君に紅茶のおかわりを淹れてもらい、頭の中でマップを開く。
ゆっくり走ってもらっているとはいえ、ネラース達のスピードは魔馬車より早い。思っていたよりも早く森に着けそうだ。風圧も感じず、ただ爽やかな風に吹かれているくらいの感覚なのに。
今日の感じだとグレンはまだ暴れ足りなさそうだし、ルフスも好戦的な感じがする。グレンとルフスに全て倒されちゃったけど、ネラース達も戦いたがっていたから、みんながストレス発散できるくらいの魔物が森にいて欲しい。
エルミスに時間だと言われるまでどうすればみんなのストレスを発散できるかを考えていた。
リバーシを回収して野営用の毛布を敷くとネラースが通常サイズで毛布の上に乗ってきた。どうしたのか聞いてみると枕になってくれるらしい。
(モフモフに包まれて眠れるなんて素敵!)
『ずるいの!』
『ぼくも一緒に寝たいですン』
なんとアクランとニヴェスも一緒に寝たいらしい。でも通常サイズだと大きすぎるし、縮小化すると潰してしまいそうだと説明すると言い合いを始めてしまった。
(キャァー! モフモフが私のために争ってるわー!)
なんてモフモフ好きとしてはたまらないシチュエーションにムフフと頬を緩めていると、口喧嘩に発展しそうになっていて急いで止めた。
順番にお願いすることに納得してもらって場を収め、今日はネラースが私の枕だ。
「はわぁ~……気持ちいい」
ネラースのサラサラな毛並みを堪能してクラオルとグレウスを抱きしめる。
ネラースがシッポでポンポンと優しくリズムを取ってくれる。
ネラースのモフモフに包まれ、腕の中にもモフモフ。シッポのリズムも相まって眠気に誘われるまま夢の世界へ旅立った。
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