転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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6章

第一村人発見



 それから森の中を移動しながら三日ほど滞在した。その間、グレンはジルベルト君を連れ回して主に狩りをして食肉を確保してきて、ネラース達は素材を痛ませないように手加減して攻撃する練習に精を出していた。
 クラオル達は私のために木の実集めをしてくれて、各々おのおの森を満喫してすごした。
 グレン達のストレスが発散されたところで当初の目的地であった村にまた数日かけて向かう。

 騎乗しているとネラース達が目立つため、村が目視できるくらいの場所で馬車に乗り換えた。
 馬車を引くのは本人の希望でニヴェスに決まった。一人で重くないのか聞いてみると、軽量化されているから余裕らしい。
 ニヴェスが速度の調節なんかも全部やってくれるから御者は格好だけ。私がやっても良かったんだけど、ジルベルト君がソワソワしていたのでお願いした。
 グレンや私がやるよりも人と話すことを考えるとジルベルト君に頼んで正解だったかもしれない。私はイマイチこの世界の常識を把握しきれていないし、グレンはケンカを売っていると誤解されかねない。

 村が近いのですぐに出られるようにワンルームマンションの空間には入らず、普通に馬車の中で窓から様子を窺う。
 村の入り口でジルベルト君が第一村人と何か話しているけど、村人は疲れてそうに見えた。

 御者席の後ろに付いているドアからジルベルト君が中に入ってきて説明してくれたのは、村がアーマーウルフに襲われて働き手である男性が死傷。村は貧しく冒険者ギルドに依頼を出す余裕も、切羽詰まった状況では日数的な余裕もなく、動ける村人でなんとか一匹を仕留め、他は追い払ったが私達を泊める余裕はないとのことらしい。

「なるほど。ある意味テンプレだね」
「テンプレでございますか?」
「なんでもない! 私が出て話してもいいかな?」
「大丈夫だと思います」

 異世界物の話によくある、貧しい村を襲った魔物を倒して助けるパターンを思い出して声に出してしまっていたらしい。
 焦って話題を変えたけど、特に追求されなくて助かった。

「こんにちは」
「また一段とちっこい子供だな。その坊主に話した通りだ。村人のメシすら危ういのに旅人を泊める余裕なんかない。他を当たってくれ」

 挨拶に反応してくれたのは、村の門を警備しているという三十代と思わしき男の人だった。安っぽい皮の鎧を着ていて、疲れを滲ませていた。

「ねぇ、お兄さん。ケガ人はどれくらいいるの?」
「ん? 軽いケガから動けないやつを合わせたら二十人以上だ。わかったなら……」
「ねぇ、お兄さん。取り引きしよ?」
「あ゛? ガキが何言ってやがる」

 言葉遣いが荒くなったお兄さんに商業ギルドのギルドカードを見せると目を丸くして驚かれた。

「これ私の商業ギルドカードだよ」
「何が目的だ?」
「私達が泊まる場所。ご飯もいらない。その代わりに私がポーション渡すよ」

 お兄さんが怪訝けげんそうに見てきたので、「お兄さんにはサービスです」と一番効果の弱いポーションを渡した。お兄さんは少し悩んだ後、意を決したようにポーションを一気飲みして、「確認を取ってくるから待ってろ」と言い残して村の中に入っていった。

〈わざわざ村の中に泊まらなくてもいいんじゃないか?〉
「ふふふ。甘いよ、グレン! この村の特産品を安く売ってもらわないと」
「特産品とは村の周りの畑にあった農作物ですか?」
「ジルベルト君大正解! あれは枝豆だと思うの! ちゃんと見ないとわからないけど……」

 みんなと話していると、門番のお兄さんが戻ってきた。

「村長から話があるそうだ。滞在したいなら来い」
「はーい!」

 再び馬車に乗り、門番のお兄さんの案内でここソイヤ村の村長の家に向かう。
 村の道は広く馬車は楽々通れているけど、全体的に殺風景だ。必要なもの以外ない感じ。
 家は木造の平屋タイプで修復した跡があちこちにあり、出歩いている村人はいない。各家に人がいる気配はするから疲れた体を休めているか、ケガ人のお世話をしているんだろう。
 村が貧しいと言うのは本当だと思う。なんというか村全体の雰囲気が暗く、重苦しい。半数くらいがケガをしているせいかもしれないけど。

 村長の家は村の中では一番大きく、唯一の二階建てだった。
 何もないとは思うけど、一応ニヴェスに馬車をお願いして村長の家に入ると、迎えてくれたのはバーコード頭のおじさんだった。
 簡単に自己紹介をすると、私が商人であることに驚かれた。どっかの金持ちの気まぐれだと思っていたらしく、五歳児の私に謝ってくれた。

「アーマーウルフを追い払いましたが、いつまた襲われるかわかりません。村人は疲弊ひへいしており、次襲われたらどうなるのかわからないのです。ポーションを渡してまでこの村に滞在するなんて、とても商人様に利があるようには思えません」
「うーん。なら正直に話すよ。私は村の周りで作られている農作物が欲しいんだよね。すごく美味しそうなんだもん」
「へ?」

 綺麗事を並べるのは得意じゃないので、欲望をそのままクチに出すと村長さんはポカーンとクチを開けて固まってしまった。
(固まる要素なんかなかったと思うんだけど……)
 声をかけながら村長さん顔の前で手を振ると、意識が戻ってくれた。

 この村ではあの農作物は成長サイクルが早く一ヶ月ほどで収穫できるけど、一般的には食べられていないんだそう。
 村人はほぼ自給自足の生活で、通貨を得るために男性は狩りを女性は小物を作って売っているらしい。魔物の素材や小物を売ったお金で小麦や生活に必要なものを買い、あの農作物は小麦が買えなかった時の非常食として村で備蓄されているとのことだった。

「えぇー! もったいない! 買い占めたいくらいだけど、保存状態がわからないから見てからかなぁー。とりあえず、私達を泊めてくれるってことでいい?」
「わかりました。準備しますのでお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
「うん。じゃあその間に村人にポーション飲ませてくるよ。商人は信用第一だからね! 先に回復した方が安心できるでしょ?」

 村長との話しを見守っていた門番のお兄さんに案内をお願いして、ケガ人がいる家に向かう途中でお兄さんに話しかけられた。

「今までも何回か行商人が来たことがあるが、買い取っていったのは魔物の素材だけだ。他のものは何一つ見向きもせず、さっさと帰った。他の行商人も同じようなもんだ。一度来たら二度は来ない」
「そっかー」
「アンタの目的はなんだ?」
「ん? あの農作物が欲しいんだって。私の予想通りで保存状態が良かったら全部買い占めるから安心して!」
「え……いや、そういう意味じゃ……」

 握りこぶしを作って鼻息荒くお兄さんに言ったあと、頭の中が枝豆のことでいっぱいになった私にはお兄さんの呟きは聞こえなかった。
 枝豆をさらに成長させて乾燥させたら大豆だけど、どれくらいで収穫しているのかはわからない。備蓄していると言っていたから大豆だったらいいなと思う。

 ケガ人の家に着くまで、枝豆と大豆料理のことしか考えられなかった。
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