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6章
大収穫
「村長、今の畑にあるやつ私が欲しい枝豆だったら収穫してもいい?」
「セナ様が欲しいのでしたら構いません。慣れていないと重労働ですので、村の人間に手伝わせましょう」
「いや、だいじょ……」
私が言い終わる前に村長は村人を呼び集めてしまった。
ガックリと肩を落とした私をクラオルとグレウスが慰めてくれた。
門番さんを先頭にゾロゾロと畑に向かうと、どこからどう見ても枝豆畑だった。
「ふぁー!! たわわに実ってるー! 大豊作じゃーん!」
たわまないから間違いかもしれないけど、いっぱい実ってるって意味では合ってるからいいよね!
鑑定をかけてみるとやっぱり枝豆!
「村長! どれくらいなら売ってくれるの!?」
「えっと……」
「本当にコレ食うのか?」
私の期待に満ちた眼差しを受けて、村長がしどろもどろになっている横から門番さんが聞いてきた。
「もちろん! 超美味しいんだから!――あぁー! ダメ!」
「わっ!」
私が自信満々に言ったせいで、近くにいたちびっ子がそのまま食べようとしていて焦って叩き落とした。
「ごめん、ごめん。痛かったね。コレは生で食べたら毒なんだよ」
「え……どく?」
「そうなの。茹でたり炒めたりして火を通さないとダメなんだよ。逆を言えば火を通せば食べられるの。だから食べたい時は大人に調理してもらった後だよ。わかった?」
「うん! わかった!」
素直に返事をしてくれるちびっ子を「エラい、エラい」と撫でてあげると頬を染めながら照れていた。
「なるほど……火を通せば食べられるんですね」
「そうだよー。で、どれくらいなら大丈夫なの?」
「そうですね……セナ様がこの状態のソイ豆の調理法を教えていただけるのなら全てでも構いません」
「本当!?」
「はい。ですが、村人総出で収穫しても三日ほどかかるかと」
どうやって収穫するのかを聞いてみると普通に根っこごと引っこ抜いているらしい。それなら抜くよりも鞘取り作業を手伝ってもらいたい。
「引っこ抜くのは魔法でやってもいい?」
「え、えぇ……構いませんが……」
「グレウス、お願いしてもいい?」
『はい!』
グレウスは植わっている枝豆の地面だけボコボコと波打たせ、根っこも綺麗に土から出してくれた。
風魔法で枝豆の根っこを切り落として、ジルベルト君に小分けにしてもらった枝豆の束をクラオルとポラルにまとめてもらう。グレンに切り落とした根っこを燃やして灰にしてもらい、灰を畑に撒いて元通りにしたら終わりだ。
「みんなありがとう!ってあれ?」
お礼を言いながら振り返ると村人は揃って口をポカーンと開けていた。
「これだけの畑を一瞬で……セナ様は商人ではなかったんですか?」
「冒険者でもあるけど商人だよ。ギルドカード見せたでしょ?」
「そうですね……確かに商業ギルドのカードでした……」
「他の畑もやっちゃっていい? 手伝ってくれるなら鞘取りをお願いしたいな」
「は、はい。かしこまりましたっ!」
鞘取りのやり方を教えると、「僕もやるー!」とちびっ子達も手伝ってくれた。
全ての畑を収穫して鞘取りしたら、残った枝は燃やして畑に撒いた。
大量の枝豆が手に入って私は大満足だ。
「セナ様、なぜ灰を畑に撒いたのですか?」
「あぁ、それは灰が土の栄養になるからだよ」
「栄養でございますか?」
「そうそう。簡単に言うと土のご飯だよ。栄養があれば成長も早くなるし、実も大きく育つの。ちなみにモウ牛の糞を撒くのもいいと思うよ」
「なるほど……」
「さて、収穫も終わったし戻ろうか」
ブツブツ呟いている村長を促して、売ってもらえる大豆を確認しようと倉庫に向かった。
倉庫の選別したほとんどの大豆も大量に確保できて私はホクホク。
「セナ様、緑のソイ豆の調理法を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「わかったー! みんなに教えた方がいいよね。村長の家の前が一番広いからそこで実演するよ」
「えっと……」
「教えるから集めてもらえるかな?」
「かしこまりました」
村長はよくわかっていなさそうだったけど、村人を呼びに行ってくれた。
私がもらう大豆を全部無限収納にしまってから村長宅に向かうと、ほとんどの住人が既に集まっていた。
「これから枝豆の茹で方の説明しますねー」
コンロと鍋を出して集まった村人達に声をかけてから、実演しながら説明していく。
食べられないと思っていたものが食べられると興味津々らしい。
一番オーソドックスな塩ゆでしたのを試食用に配ると、みんなおっかなびっくり食べていた。
ペペロンチーノ風の炒め物も作り、最後はずんだ餡。お餅が欲しかったけど、白玉粉ももち米もないので餡だけ。砂糖を入れたとき小さく悲鳴が上がった。おそらくスイーツになることが想像できなかったんだと思う。
「できたよー。食べてみてー」
〈さすがセナだな! 美味い!〉
試食用に渡したずんだ餡をすぐに食べたグレンが感想をくれた。グレンが美味しそうに食べたのを見て、村人達もおそるおそる口に入れていく。
「こんなおいしいのはじめてー!」
「おいしー! ママも作れるの?」
「もっとたべたーい!」
子供達は甘いものが好きらしく、親のを寄越せとねだっている姿は微笑ましいね。
「こんなにも美味しいものだったのですね……ソイ豆を食べるよりこのエダマメの方が美味しいなんて思ってもおりませんでした」
「ん? だい……ソイ豆も美味しいじゃん」
「腹持ちはよいですが、硬くてあまり……」
「もしかしてそのまま食べてる?」
「はい。これも何か調理法があるんですか?」
なるほど。だから非常食扱いだったのか……そりゃ乾燥大豆そのまま食べたら美味しくないわ。
枝豆も簡単なのは教えたし、ついでに大豆のことも教えた方がこの村の将来のためにも良さそう。
「そうだね。大豆はふやかしてからじゃないと美味しくないんだよ。みなさーん! 次はソイ豆ですよー!」
前半は村長に、後半はずんだ餡に夢中になっている村人に声をかけた。
“ソイ豆”の単語はすぐに村人の注目を集めた。
「おい、ソイ豆も美味くなるのか?」
「ソイ豆はそのまま食べるモノじゃないんだよー。それが好きなら止めないけど」
門番さんに確認されて答えると、いきなり頭を下げられた。
「へ?」
「頼む。村長との話ではエダマメの調理方法だけだったが、ソイ豆の調理方法も教えて欲しい。ソイ豆は案内した倉庫だけじゃなく、各家庭でも保存している。ソイ豆の調理方法も教えてもらえれば、この先飢えずにすむんだ」
驚いた私に門番さんが真剣な表情で言い、最後にまた頭を下げた。
そんな門番さんを見て村人全員が頭を下げ、私はその勢いに再びビックリした。
普通に教えてあげるつもりだったんだけど……
「えっと……うん。説明するから聞いてね」
そう声をかけてから村人に、大豆の戻し方を説明する。
今回は吸水させる時間がないので、時短方法として30分水にさらして茹でる方法をとった。
空間魔法で時間を進めても良かったんだけど、エルミスに《村人には刺激が強い》って止められたんだよね。
その大豆を使って簡単塩スープを作る。一回作って見せれば自宅で作るときに応用ができるでしょう。
大豆の他に、この村で手に入る卵と出汁用に干し肉しか入っていないスープだけど、村人の目はスープに釘付けだった。
「各家庭で作るスープに、こんな感じで大豆入れるの。大人の人はコショウ効かせても美味しいよー。はい、どーぞ! 試しに飲んでみてね」
私が作ったのは寸胴鍋一杯分だから、一人一杯には足りないけど、村人はケンカすることもなく平等に飲んでいた。助け合うことが根付いているらしい。
村人はもう飢えなくていいと喜んで、買い取る予定だった枝豆と大豆はタダでもらえることになった。
買い取るって言ったのに村人全員にダメだと言われて、私が折れた。私が買ったお金で街で買い物すればいいって説明してもダメだった。
在庫がなくなったら買いにこようと思う。
枝豆も大豆も手に入った私が村を出ると言うと、村人全員に引き止められた。
結局押し切られる形で今日も村に泊まることに決まってしまった。
お昼をまともに食べていなかったので、みんなに夜ご飯のリクエスト聞いてハンバーグを作った。
食後のリバーシタイム中、私は本で調べものをしていたけど、お目当てのものは見つからなかった。
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