転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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6章

家庭内ヒエラルキー



 次の日も雨は止まず三日目にしてようやく上がってくれた。
 馬車から外に出ると、昇ったばかりの日の光を受けて水滴が残っている草がキラキラと煌めいて見えた。

「ん~! 気持ちいい!」

 雨上がりの朝の清澄な空気を吸いながら思いっきり伸びをした。
 あまり気にしていなかったけど、自分も晴れが恋しかったらしい。

 晴れたことでテンションが上がっているみんなを宥めて、朝食と日課のストレッチをしたら街に向かって出発だ。
 雨上がりで街道は濡れているけどみんなは遊びながら移動したいらしく、今日もニヴェスに馬車の牽引を頼んだ。
 ニヴェス以外のネラース、アクラン、ルフスは飛んだり跳ねたりと馬車の周りではしゃいでいる。

 街道は水たまりが多く、地面もドロドロなので街道近くの草原を走っていく。
 御者はもちろんジルベルト君だ。
 コテージで作業をするチャンスタイムなので、またグレンにお留守番を頼んで私はコテージへ。

 今回はポラルと一緒。もちろん協力してもらうために。
 木をラケットのように削って、ポラルに硬くて弾力性のある糸を出してもらいガットの要領でラケットに糸を通していく。

「うあっ!」
『主様!?』
「いててっ。ビックリした~」

 糸をピンッと張るために引っ張りながら作業をしてたら、糸がブチッと切れた。強く引きすぎたらしい。引いていたせいで勢いがついてひっくり返り、ゴン!と頭を床にぶつけてしまった。

『大丈夫なの?』
「大丈夫。物理攻撃耐性のおかげだと思う。パパさまさまだね」

 私を心配してポラルが寄ってきてくれ、グレウスはスリスリと頬に擦り寄っている。
 こんなに心配してくれる優しい子達に囲まれているなんて私は幸せ者だ。

「ポラルごめん。また最初からになっちゃった」

 ポラルを撫でながら謝ると大丈夫だと返してくれた。
 再び糸を引っ張りながら張って、なんとかワンセットが出来上がった。

「できたー! 我ながらいい感じだと思う! ポラルもありがとうね」
〔ハイ!〕

 シュタッと手を上げて返事をしてくれたポラルを撫でて労う。

『主様、コレはなーに?』
「これはラケットだよ。テニスラケットっぽいけど、一応バドミントンみたいな感じにしたいんだ」
『?』
「エルミスちょっと大人サイズになってー」
《御意》

 大人サイズになったエルミスにラケットを持たせて部屋の中で少し離れる。

「バドミントンの羽根は作れる気がしないから、多分ボールになると思うんだけど、このラケットでこうやってボールを打ち返す遊びだよ」
『へぇー。ボールはどうするの?』
「次の街でなにかいい素材ないか探そうと思って」
『なるほどね』

 ラケットを回収して馬車に戻ると、今日はグレンの機嫌が良かった。

《うぅー! 悔しいわ!》
〈ふふん。しばらく負け越していたからな。われは爽快だ。今ならセナにも勝てる気がする〉

 ドヤ顔でグレンがプルトンに言っていて、クラオルとエルミスがジト目になった。

『おバカねぇ。ポラルにもいつも負けてるのに主様に勝てるハズないわ』
「じゃあ試してみる?」

 そんな大きな声は出していないのに、馬車内に響いてしまった。グレンがギギギッとぎこちなく振り返り、驚きに目を見開いた。

「私がやるのは久しぶりだねぇー」
われは男だからな……勝負には逃げん!〉

 ちょっと顔が引きつっている気がするんだけど、ただのリバーシなのに大げさな気がする。日本での経験分私のほうが少し強いだけなのに。

〈いざ、尋常に勝負!〉
「その言葉どこで覚えたのよ……」

 どこの武士だとツッコミたくなった。
 昔騎士が決闘の際に言っていた言葉で、なんとなくカッコイイから覚えていたらしい。意味もわかっていないのに使うのがグレンらしくて笑ってしまった。

〈むむ……〉
『あーあ。もう置けるところほとんどないじゃない』
〈こっちだ!〉
《なぜそっちに置いた……》

 グレンがコマを置く度にみんなからチャチャが入り、グレンの悩みに拍車がかかる。
 結局悩みすぎて悪手を重ね私の圧勝となった。

〈だぁー! なぜセナは全然やってないのに強いんだ!〉
『主様だもの』
あるじですから』
《セナちゃんだもーん》
《セナだからな》

 グレンが納得いかないと叫ぶように言うと、みんなが似たような言葉で返した。
 え? ちょっと待って。“私だから”ってなに? 私の扱いってどうなってるの?

「そんなハマってたわけじゃないけど、やり方はわかるから……年季?」
われもずっとやれば強くなれるのか……〉
「強いほうが楽しいかもしれないけど、私は勝負にこだわるより最初みたいにみんなが楽しんでくれる方が嬉しいよ」
〈だが勝ちたい!〉

 グレンのリバーシのやり方は読みやすいせいもあると思うんだけど……これからもリバーシにはお世話になりそうだから、リバーシに飽きる前くらいに教えてあげようと思う。

「誰が一番強いの?」
〈ポラルだな〉
《エルミスじゃない?》
『ジルベルトだと思うわ』

 見事にバラバラだったけど、普段対戦してるメンバーの中ではこの三人が強いらしい。ただ、ジルベルト君は遠慮して相手を勝たせることもあるため本当の実力はわからないらしい。
 普段はそこまででもないのに、リバーシになるとグレンのヒエラルキーは低いらしく、みんなに弄られている。グレウスにすら『グレンさんは顔に出やすい』だの『リバーシは弱くても大丈夫だと思います!』だのと傷口をえぐられていた。

 お昼ご飯でリバーシの話が流れたのに、グレンはすっかりいじけてしまった。
 午後も私がコテージに行きたいと言うと、グレンも行くと言って聞かなかった。仕方ないのでエルミスとプルトンにお留守番を任せて、グレンと一緒にコテージの鍛冶部屋へ。

〈何を作るんだ?〉
「グレンも遊べるゲームだよ」
〈おぉ! それは楽しみだな!〉

 鉄をコネコネと整形して、木の筒を削っていく。みんなの大きさを考えると色々なサイズが必要だった。
 しばらく作業に没頭してふとグレンを見てみると、部屋にある鉱石を鑑定しまくっていた。
 一つ目は終わったけど、今日はもう一つ作りたい。グレンにはもう少し我慢してもらうことにして、二つめの作業に入った。

「ふう。終わったー!」
〈やっとか! われもできるのだな!〉

 ワクワクした様子のグレンを宥め、馬車に戻り、ニヴェスに念話で夜の野営地は木がある場所にして欲しいとお願いした。

 ニヴェスが野営地に選んでくれたのは二本の大きな木の根元だった。百点満点の野営地だ。
 夜ご飯を済ませると、いよいよ新しい遊びのお披露目だ。

「そんな大したものじゃないけど、説明するね。まず、コレが吹き矢。こうやって矢を入れて、息を吸って吹くの」

 見本を見せるために木に吹き矢を放つと、初めてやったのにキレイに刺さってくれた。

「んで、次はダーツね。この的に向かってこのダーツを、こう投げるの」

 吹き矢に使った隣の木に、簡易ダーツの的をセットしてダーツを投げて見せる。

「両方とも矢はそんなに数を作ってないから、遊んだら回収してね」

 作った吹き矢とダーツをみんなに渡してあげると早速遊び始めた。
 グレンも感覚的に遊べるものだからか楽しそうで安心した。

「セナ様、この吹き矢というモノをお借りすることはできませんか?」
「ん?」

 ジルベルト君の分もちゃんと作ってあるから、持っている分には構わないけど、練習でもしたいんだろうか? 下手には見えなかったんだけど……
 理由を聞いてみると、戦いで使えるから練習したいんだそうだ。しかも、「遊びながら戦闘力を上げるなんて、さすがセナ様です!」なんてとんでもない勘違いをされていた。
 誤解を解きたくて色々説明したけど、わかってもらえたのかはわからない。

 結局、寝る時間だと私が声をかけるまで吹き矢とダーツで盛り上がっていた。

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