転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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6章

鬼軍曹




 街道はすっかり乾いていたので、今日は騎乗スタイルで移動することになった。
 快晴で気持ちのいい風が吹き、移動にはもってこいの日だ。

「ふあ~。こう気持ちがいいと眠くなっちゃうねー。ニヴェスのモフモフも気持ちいいし」
『ふふっ。でも気が抜ける気持ちはわかるわ』
「小春日和って感じ」

 ぬくぬくと心地良さに軽くウトウトしていると、魔物の気配を察知した。
 みんなに教えると狩る気満々になったので、街道から逸れて魔物のところへ向かう。
 森とは呼べないくらいの木が少量密集して生えている場所に、変な植物が三つ生えていた。甘い匂いを放つ、ラフレシアのように巨大な花。花なのに花弁には触覚のようなものが所狭しと生えていて、その触覚が風に吹かれてプルプルと震えていた。

「何あれ。絶妙に気持ち悪いんだけど……」
〈あれはビッグロツンディフラワーだな。甘い匂いで魔物を呼び寄せて、粘液を飛ばし麻痺させて、動けないところを花弁で包み込み溶かして食う〉
「なるほど。食虫植物なのね」
「ビッグロツンディフラワーは花と花の根元の液袋が素材となっております」
「なるほっどぉ!?」

 グレンとジルベルト君の説明を聞いていると粘液が飛んできて本能的に避けた。

「ビックリした」
〈敵と認識されたようだが、セナが出るまでもない〉

 グレンもジルベルト君もネラース達もやる気満々なので、素材を取るようにお願いして私は下がった。
 みんなと一緒にいて、私が戦う日は来るんだろうか……
 十分も経たないうちに戦闘が終わったと呼ばれてみんなの元へ向かうと、一つが見るも無惨な姿になっていた。
 グレンとジルベルト君が各一体、ネラース達が一体を担当したらしいんだけど、ネラース達は小さいサイズになるのを忘れていたらしく、手加減が手加減になっていなかったらしい。

「ふふっ。そんなヘコまなくて大丈夫だよ。倒してくれてありがとう。力加減はこれから覚えればいいだけだからね」

 ショボーンとヘコんでいるネラース達を慰めて、花を全部無限収納インベントリにしまう。
 植物の液体まみれのネラース達にクリーンをかけて、怪我の有無を確認したら出発だ。
 出発したけどネラース達はテンションが落ちていた。

(うーん。そんなに役に立とうと気負わなくていいんだけどなー。モフモフだし。なんて言ったって可愛いとモフモフは正義なのに)

 でもネラース達がこのまま加減できなければ戦闘に参加させることはできない。さっきは植物だったからいいものの、あれが魔物や人間だったら耐えられる気がしない。むしろマーライオン案件になってしまう。
 さて、どうしたもんか……

 悩んでいる間にお昼ご飯を過ぎ、午後も変わらずニヴェスの背中で考える。
 結局、いいアイディアが浮かばないまま野営することになってしまった。

『(主様? どうしたの?)』
「(んー。手加減を覚えてもらうのってどうすればいいのかなって思って)」

 夜ご飯を食べ終わった頃、小声でクラオルが聞いてきてくれたので、じゃれ合って遊んでいるネラース達には聞こえていないと思う。

『(そうねぇ……本番で失敗したら大変だものね……あ! グレンに相手を頼んだらいいんじゃないかしら?)』

 クラオルは私が考えている間にグレンを呼んで理由わけを説明した。

〈ふむ。構わんぞ。素材を確保するためだろ?〉
「うん。ごめんね?」
〈そんな顔をするな。あやつらもセナの役に立ちたいだろうからな〉

 私の頭を優しく撫でて、グレンがネラース達の元に向かって行った。

『ね、大丈夫だったでしょ? グレンもわかってると思うから任せとけば大丈夫よ』
〈獣ども! われが手加減を教えてやる!〉

 クラオルがグレンを信頼している発言をした途端にグレンの偉そうな発言が響き渡った。

「えぇー!?」
『ハァ……主様、ワタシが言ってくるわ』

 クラオルがグレンの元に走って行くと、ジャンプして思いっきりグレンの頬にパンチした。

「えぇー!?」

 ちょっとクラオルさん、なにしてんの!

〈痛いではないか!〉
『あんた、ちゃんと言葉選びなさいよ! ネラース達! 主様がネラース達のこと気にしてたのよ! 役に立ちたいなら手加減を覚えなさい! じゃなかったら戦闘に参加させないわよ! わかった!? わかったら返事!』
『『『『っはい!』』』』

 クラオルさん……クラオルさんも言い方……
 私が驚いている間もクラオルは鬼軍曹ばりに歩きながらネラース達に『大体あんた達は……』とお小言を言い、事ある毎にネラース達に返事を強要している。

「どうしよう。止めた方がいいかな?」
《大丈夫だ。グレンもネラース達もあるじの役に立ちたいだろうからな》
「そんな気負わなくていいんだよ。確かに手加減は覚えて欲しいけど、私はみんなと楽しく過ごしたい。役に立たない子はダメなんて言わないよ? 可愛くて大切な家族だもん」
《フッ。わかっている。あるじが優しいのもな。だからこそ役に立ちたいんだ。放っておいて大丈夫だ》

 エルミスは大丈夫だと言うけど、グレンまでクラオルからのお説教をくらってネラース達の隣りに正座させられている。

「でも……」
《んもぅ! セナちゃんったら優しいんだから。それなら、頑張ったご褒美を用意してあげればいいのよ!》
「ご褒美?」
《そうねぇ~、パンケーキがいいんじゃないかしら?》

 そんなのがご褒美になるのかと思ったけど、プルトンが自分の胸をドンッと叩いて自信満々にそれがいいと言うのでパンケーキを作ることにした。
 ジルベルト君にもフルーツをカットしてしてもらい、パンケーキを全員分。ご褒美ということで、クラオル・グレン・ネラース達は一枚多めだ。

 クラオルのお説教が終わると、クラオル監督の元、グレン相手に手加減の練習を始めて私はホッと胸を撫で下ろした。
 時々クラオルがドスの効いた声でダメ出しをしていて、私は耳を疑ったけど……グレウスが懐かしいと言っていたので、ファミリーをまとめるときは軍曹バージョンだったのかもしれない。

『ふぅ。今日はこれくらいかしら。今日やったこと忘れるんじゃないわよ!』
『『『『〈はい!〉』』』』

 グレンまで返事をしていて笑ってしまった。

「みんなお疲れ様。【クリーン】。うん、キレイになったね。疲れたときは甘いものだよ。パンケーキ作ったから食べよ」
『まあ!』
〈おぉ!〉

 クラオルとグレンは一瞬にして目が輝いたけど、ネラース達は食べたことがないからわからないみたい。
 説明するより食べた方が早いだろうと、みんなの前にお皿を出していく。

『主様のパンケーキ久しぶりね!』

 いつものクラオルに戻っていて安心感からモフモフを撫で回してしまう。

『ふふっ。主様ったらどうしたの? くすぐったいわ』
「ごめん、ごめん。さ、食べようか」

 うん。安定の美味しさ。
 みんなも笑顔で食べていて、ネラース達も気に入ってくれたらしい。先程の特訓が嘘みたいにホンワカした雰囲気になっていた。


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