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6章
こういうテンプレもありますね
今日中に街に着けそうな距離なので、今日は馬車移動することにした。馬車を牽引するのはニヴェス、御者は毎度お馴染みジルベルト君だ。
私は昨日パンケーキを作っている間に思い付いたので、ひたすらマンションのキッチンで同じものを量産している。
グレンは馬車の中でクラオルとポラルと一緒にダーツと吹き矢で遊んでいる。
《セナちゃん、これはなーに?》
「これはクレープの生地だよ。昨日思い付いたの。きっと今日もクラオルの特訓があるだろうから、そのときに食べようと思って」
《パンケーキみたいにフワフワじゃないのね》
「ふふっ。これはねぇ……こうやってフルーツを包んで食べるんだよ。はい! 食べていいよ」
《やったー!》
プルトンにイチゴとイチゴジャムをかけて包んだクレープを渡してあげる。
「エルミスは……おかず系ね。はい! どーぞ」
《儂もいいのか?》
「みんなには内緒だよ? グレウスもね」
『はい! 秘密です!』
エルミスにはレタスとウィンナーのおかず系のクレープにしてあげて、私とグレウスはイチゴとカスタードクリームのクレープだ。
三人とも気に入ってくれたみたいなので、他のメンバーも大丈夫だと思う。
お昼ご飯までクレープ生地を作り続け、午後はフルーツのカットとジャムとカスタードクリーム作りだ。
『((ご主人様、血の匂いがしますン))』
ニヴェスから念話が届いたので、急いでキッチンを片付けて馬車内に戻り気配を探る。
「あ! この先の街道で馬車が盗賊に襲われてるっぽい! 15キロくらい。ニヴェス飛ばして!」
『はい!』
グレンは放っておけばいいって言ってるけど、これから通る道で遺体とご対面なんて勘弁して欲しい。
御者席のジルベルト君の隣りに座り、弓を構える。
「見えた! ニヴェス怪しまれるからスピード落として! もうちょっと。もうちょっと…………今だ!」
リーダーっぽい護衛が戦っている盗賊の一人に向かって弓を射ると肩に命中した。続けて別の護衛と戦っている盗賊に向けて弓を飛ばしていく。
護衛はどこから弓が飛んできたのかわからないらしく、キョロキョロしていて、戦闘中そんなことしちゃダメでしょと弓を射りながら思った。
馬車を横付けするころには馬車を囲っていた盗賊は倒されていた。
「助かった」
「まだ残ってるよ」
リーダーっぽい護衛の人が武器を下ろしたので、近くの樹上に隠れていた盗賊を弓で撃ち落とした。
「本当だ……すごいな」
派手な音を立てながら落ちた盗賊を見てリーダーに言われた。
パッと見た感じでは護衛さん達は怪我をしていなさそうだけど、お馬さんが足を怪我していた。
ジルベルト君と話している護衛達にバレないようにお馬さんに【ヒール】をかけてあげると、喜んでくれた。
「じゃあ、後始末はお願いします」
「お待ちください!」
「うわ!」
私が馬車に戻ろうとすると、おばさんに腕を引っ張られて抱きしめられた。
豊満はボディは張りがありつつも柔らかい。でもむっちゃ苦しいです!
「ム゛ー! ム゛ー」
「お、奥様! 恩人を殺す気ですか!?」
「ぷはっ! ゴホッゴホッ」
「セナ様!」
執事の人が叫ぶようにおばさんを止め、ジルベルト君が気付いて駆け寄ってきて背中をさすってくれた。
「はぁー……死ぬかと思った」
〈なんだと? どいつだ?〉
「「「「ヒィッ」」」」
グレンがいつの間にか真後ろに立っていて、護衛さん達とおばさん達を睨み付けた。
「グレン。大丈夫だから、威嚇しないの」
グレンの服をちょいちょい引っ張って威嚇を止めさせる。不服そうだけど、殺気を収めてくれた。
「なんでしょうか? 護衛の人達も怪我をしていないようですし、もう用はないかと思いますが」
「いえ、命の恩人ですもの。わたくしはカルリーノ・タルゴーと申します。この先のピリクの街でタルゴー商会を営んでおりますの。あなた方のお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「名乗るほどのものではありません」
「そうですか……盗賊をほとんど倒して下さったのはあなた方です。懸賞金がかかっているかもしれません。この道を通っているということは、ピリクの街に向かっていると予想します。ご一緒していただいてもよろしいでしょうか? お礼はもちろん致しますわ」
なんだこのおばさんの有無を言わさない感じ。悪い人ではなさそうなんだけど、こう全身を見られると鳥肌が立つぞ……
「私達は手助けしただけで、実際馬車の周りにいた盗賊を倒したのはこちらの護衛の方々です。懸賞金はこの護衛の方々がもらうべきでは?」
「それならハッキリ申し上げます。ピリクの街まで護衛をしてもらいたいのです」
「この護衛の方々に失礼では?」
「もちろんこの護衛もそのまま護衛してもらいますわ! あなた達も賛成でしょう?」
「え、えぇ……心強いですね」
護衛さん達は困惑しながら答えた。完全におばさんに言わされた感満載だ。
このおばさんはどうにか一緒に街に向かいたいらしいけど、真意がわからない。
「私達は旅をしています。ピリクの街で定住する気も、誰かに仕える気もありません。街に着くまでという条件でしたら構いません」
「街に着いたら、ぜひお礼をしたいですわ! 命の恩人に何もしないなんてタルゴーの名が許しませんわ! 我が商会にぜひ足を運んで下さいませ! きっと気に入るものがありますわ!」
鼻息荒くおばさんに言われて、あぁ……それが目的かと納得した。おそらくお礼をしたいんだろう。親切の押し売りみたいな感じだ。
「わかりました。それくらいなら。私達は後ろから付いて行きましょう」
「ありがとうございます!」
護衛の人達が盗賊をまとめ、ロープで縛っていた。
どうやって持っていくのかと思って見ていると、結界石のようなものを発動させ風船のように盗賊を空に浮かべた。よく見てみると透明な箱みたいなものに八人の盗賊が入れられている。
あれはなんだと鑑定すると、空間石というもので、範囲内のものを空に浮かべて運ぶ魔道具らしい。
おばさんの馬車は徒歩とほとんどスピードが変わらず、進みが遅い。護衛の人達は馬車の周りを歩いている。
今日中に着く予定だった街には着けなさそうだ。
〈セナ、良かったのか?〉
「ん~。助けちゃったからねぇ……これもある意味テンプレだよね……まぁ、おばさんが言うお礼が役に立つものかもしれないし、おばさん自体は悪い人じゃなさそうだから」
予想通り街には着けず、野営することになり、いつもよりは簡単な夜ご飯を作る。黒パンと干し肉の護衛さん達が可哀想で私達用に作った串焼きとスープを分けてあげた。
私達は見張りを免除され、馬車のマンションに移動した。ニヴェスだけはおばさん達が何もしないように見張ってくれるらしい。
ベッドに入って、あのおばさん達のことを考える。
私達を見て、普通ならグレンが代表だと思わないかな? 私が代表として話していたけど、疑うこともなく普通だったよね? まだ警戒は解かない方がいいのかもしれない。
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