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6章
魔物にだって好みがある
いつものように結界を張るわけにもいかず、朝起きてニヴェスに確認するとプロンバットというコウモリ型の魔物がチョロチョロと襲ってきたらしい。
主におばさんの馬車の方が襲われていて手伝ったらしく、ニヴェスが倒したプロンバットの小山ができていた。
それを聞いてグレンが首を傾げた。
「どうしたの?」
〈プロンバットはこんな平地には普通はいない。森ならまだわかるが、洞窟や山に生息していることの方が多かったはずだ〉
「そうなんだ。もうすぐ街なのにおかしいね」
グレンの言葉も気になるし護衛さん達のことも気になるので、今日は私も御者席に座った。
ジルベルト君と並んで護衛さん達を見ていると、やはり疲れているらしい。
「なんだろう。なんか引っかかるんだよねぇ……あ、ゴブリン二体。周りにはいないからハグレかな?」
「おそらくは。しかしなにかおかしいですね」
「ジルベルト君もそう思う?」
「はい。ですが、何がおかしいのかはハッキリわかりません」
ゴブリンは護衛さん達が退治したので私達が出ることはなかった。
「ん? また魔物……今度は鳥だね」
「あれは、プレリーホークですね。平地にも出る魔物です」
「上からかぁ。しかも一匹……真っ直ぐ向かってきてるし撃っちゃおう」
弓を構えて、前ではなく横に落ちるように撃ち落として回収しておく。
結局その後二回ほど弱い魔物と遭遇して、護衛さん達が狩っていた。
やっぱりおかしいと、お昼ご飯のスープを配るときに護衛のリーダーを呼び出して聞いてみることにした。
おばさんは幌馬車の中でご飯を食べるらしく、降りて来ていないので今がチャンスとリーダーを手招きして呼ぶ。
「ねぇ、お兄さん。ずっとこんな感じで魔物と戦ってたの?」
「あぁ。あんた方が助けてくれた盗賊以外は強いのは出てきていないが、頻度は高いな……夜は確実に戦闘になるからちゃんと休めていなくて盗賊に遅れを取っちまった。あんた方が来てくれて助かったよ。夜も助けてもらったしな。感謝している」
「いや……お礼を言って欲しかったわけじゃないから大丈夫。教えてくれてありがとう。スープできたからみんなで飲んで」
「感謝する」
リーダーは疲れを滲ませていたもののまだ大丈夫そうだけど、他のメンバーは眠いのか目をシパシパしていた。
あと数時間だろうから、倒れるとかはないと思う。
お昼ご飯を終え出発すると、前方には何組か冒険者のグループがチラホラ見えてきた。
「もう魔物は現れなさそうですね」
「そうだね。気配もしないし大丈夫だと思う」
二時間ほどで街に着き、街の門前にできていた列に並ぶ。
カリダの街では並ばなかったけど、この街は訪れる人が多いみたい。
ギルドカードを掲示して犯罪の有無を確認する水晶に手をかざし、馬車の中のチェックを受けて街に入った。
盗賊達は門で待機していた騎士団に引き取られるらしく、護衛さん達が説明していた。
「恩人方はこのまま商会の方へ来ていただいてもよろしいですか?」
おばさんに付いていた執事のおじさんに言われて、護衛さん達はどうするのか確認すると、護衛さん達はギルドへ報告に行くらしい。
「あんた方のスープ美味かった。助けてくれてありがとう。また会ったら今度何か奢らせてもらうよ」
「ふふっ。ありがとう。楽しみにしてる」
「おう! じゃあな!」
護衛さん達と別れておばさんの馬車にそのまま付いていくと、着いたのはでっかい邸だった。パッと見では商会には見えず、豪華な貴族の家みたいだ。
おばさんは馬車から降りて、荷物を下ろすように指示したあと、私達の馬車の方まで歩いてきた。
「ぜひ中へお願いしますわ!」
「馬車はどこに置けばいいんですか?」
「はっ! そうですわね。気が急いて失念しておりました。ダーリ!」
(ダーリン!?)
おばさんが呼んだのは先程の執事だった。
「ダーリ! 馬車置き場に案内して差し上げて」
「かしこまりました。コチラへどうぞ」
執事に付いて馬車置き場に案内してもらうと、ニヴェスは馬車を守ると待っていてくれることになった。一応軽めな結界を張って、何か起きそうなら念話を飛ばすようにニヴェスにお願いした。
再び執事の案内の元、邸の玄関に向かうとおばさんが待っていた。
「どうぞ中へお入りになって!」
おばさん自らの案内で玄関を入ると、思っていたよりもしっかりと商会らしかった。
(もっと成金っぽいかと思ってたよ)
そのまま応接室に案内された。
「昨日は助けていただいてありがとうございますわ。そのままで申し訳ありませんが、先に護衛の報酬をお渡ししますわね」
おばさんが手を二回叩くと女中さんと思われるメイド服を着た女性が小袋をトレイの上に乗せて入ってきた。
「こちらをお受けとり下さいまし」
小袋の紐を緩めて中を見てみると金貨五枚が入っていた。
「多くないですか? たった一日だけ。しかも私達はほとんど魔物と戦っていません」
「命の恩人ですもの! これくらいは当たり前ですわ! 正直、今回の旅は魔物との遭遇率が高くまいっておりましたの。護衛を頼んだ冒険者も疲れており、そこへあの盗賊ですわ! 護衛の冒険者も疲れているのがわかったので、彼らの安全のためにも、どうしてもご一緒して欲しかったのですわ。ですから、これは正統な報酬ですわ!」
語尾の“ですわ”が気になってあまり内容が入ってこないけど、特に他意はないみたいなので受け取ることにした。
そしていい人だったらしい。おばさんではなく、ちゃんとタルゴーさんと呼ぶことにしよう。
〈ふむ。呪いの魔道具でも持っているんじゃないのか?〉
「呪いの魔道具?」
〈その名の通り呪われている、もしくは呪いの効能を持った魔道具だ〉
「そんなもの持っておりませんわ!」
「奥様! もしかしたら今回仕入れた中にあるのでは? きちんと鑑定しておりませんよね?」
「……」
指摘したグレンに叫ぶように否定したタルゴーさんに、見守っていた執事が声をかけるとタルゴーさんは黙ってしまった。
「そうね。そうだわ。鑑定していない物も多いわ……鑑定士は?」
「本日休みとなっており、三日後に来る予定になっております」
「なんてことなの!? どうしましょう! 呪いの魔道具があるなんて仕入れた物を触れませんわ!」
タルゴーさんは執事のおじさんとどうするか相談し始めてしまった。
「((ねぇ、グレン。呪いの魔道具のせいだとしたらこの街危ない?))」
〈((なんとも言えん。道中のような弱い魔物ならば害はないと思うが、無作為に魔物を呼び寄せるとしたらそこそこくらいのが街を襲うかもしれん))〉
「((なるほど……))」
私が鑑定した方が早そう。冒険者に依頼するとしても隠蔽でもかかっていたら見破れないかもしれない。王都ではそれで私が鑑定頼まれたわけだし。
街では買い物もしたいし、私達が滞在中に襲われるとかは止めていただきたい。
「わかりました。私が鑑定します」
「「え?」」
「その代わり、目立ちたくないので内々に処理してください」
「え……鑑定、できるんですの?」
「はい。これ、ギルドカードです」
「まぁ! 本当だわ! セナ様とおっしゃいますのね! 商業ギルドに登録しているなら安心して任せられますわ!」
タルゴーさんのテンションが上がり、仕入れてきた物が置いてある部屋に案内された。
タルゴーさんの好みなのか今回の仕入れの系統がそうだったのか、箱の中にはアクセサリーがいっぱい詰まっていた。
鑑定を始めると呪いの魔道具はすぐに見つかった。モヤっとするゴテゴテした装飾に大きな石の付いた指輪を見つけて、鑑定したらビンゴだったのだ。
鑑定結果は……魔物に好かれる指輪。指輪の持ち主に好意を抱く魔物を引き寄せるらしい。
タルゴーさんはハツラツとしているけど、おそらく五十代。人によっては熟女と言いそうな年齢だ。つまり寄ってきていた魔物はおば好みだったということ。
呪いではないけど、それに近いものがある。
「えっと……見つけました」
「本当ですか!?」
「ええ。これです」
「この指輪が……どういった効能なのでしょうか?」
タルゴーさんがちょうど席を外していたので執事のおじさんに教えてあげると、なんとも言えない表情になってしまった。
うん。あのタルゴーさんにどう説明しようか考えちゃうよね。気持ちすごくわかる。
「とりあえず指輪自体は安全なことがわかりましたので、教会に頼んで封印してもらいます。冒険者の手に渡らなくてよかったです」
「そうですね」
普通の冒険者はこんな邪魔になる指輪はいらないと思うと思ってしまったのは内緒だ。
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