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6章
デジャヴ? NO デジャヴ
いいものが手に入ったけど、お目当てのものは手に入っていない。
困ったときはマップでサーチ!
反応があったのは二ヶ所だったけど、一つはタルゴー商会だったため、必然的に選択肢は絞られてしまった。
プルトン達と話しながら向かった先にあったのは目立たないお店だった。
わざと目立たないようにしているくらい目立たない。
「あれ? こんな感じのお店前にも……」
そう。あれはカリダの街だったハズ。お店の佇まいは似ているけど、なにかが違う。なんというか、この街の雰囲気に合っていて溶け込んでいる。
「まさか……いや、そんなこと有り得ないよね」
意を決して中に入ると、そのまさかの人物がカウンターで待ち構えていた。
「!」
「ヒャーヒャーヒャッヒャ。久しいの」
「魔女おばあちゃん!?」
「ヒャーッヒャッヒャ。前にお嬢さんにもらったパンとジャムなるものは美味しくいただいたよ。ヒャーッヒャッヒャ」
「それは良かった!って本物なの??」
「ヒャッヒャッヒャ。茶でも出そうかのぅ。こっちへおいで」
理解が追いつかない私を魔女おばあちゃんが手招きして呼ぶ。
おばあちゃんに付いてカウンターの裏にある目立たないドアを通り抜けると、植物がいっぱいあるこじんまりとしたティールームのような部屋だった。
部屋の植物は発光しているものや胞子を放っているものもあり、神秘的な雰囲気。青い服を着てぶち切れた虫の怒りを沈めたあのアニメの主人公が地下に作っていた部屋みたい。ただ、天井や窓がサンルームのようになっていて、部屋の中はとても明るく温かい光で満ちているけど。
外見からしたらこんな部屋があるとは思えないから、空間拡張だけではなく、何かの魔法が使われているんだと思う。
「ヒャッヒャッヒャ。座ってお飲み」
部屋に入ったところで部屋の雰囲気に圧倒されていた私に、おばあちゃんがお茶を出してくれた。
イスに座ってお茶を飲んでみると不思議な味だった。甘いのにスッキリしていて、緑茶でもほうじ茶でも紅茶でも麦茶でも昆布茶でもない、体の疲れも心の疲れも取れる……そんな不思議なお茶。
「美味しい……」
「ヒャッヒャッヒャ。気に入ったようだね。ヒャーッヒャッヒャ。そっちの精霊二人もお飲み」
!
「おばあちゃん見えるの?」
「ヒャーッヒャッヒャ。これくらいは造作もないよ。ヒャッヒャッヒャ」
《いただこう》
《ありがとうー、おばあちゃん》
エルミスとプルトンもお茶を淹れてもらったけど飲みにくそうなので、いつものストローを出してあげた。
おばあちゃんも対面に座り、お茶を飲んでいる。
「おばあちゃん、お引越ししたの? カリダの街を出る時に挨拶しようと思ったらお店が閉まってたんだよ」
「ヒャーッヒャッヒャ。すまんかったの。ヒャッヒャッヒャ。引越しはしておらんよ」
おばあちゃんはそれ以上は説明してくれなさそうだった。エルミスとプルトンも見えるみたいだし、今までのエスパー具合から言って、ただ者ではない。
もしかしたらおばあちゃんも転移が使えるのかもしれないし、魔法でお店とお店が繋がっているのかもしれない。
深くは聞いてはいけないんだと私の第六感が訴えている。
「またおばあちゃんと会えて嬉しいよ」
「ヒャッヒャッヒャ。やはりお嬢さんは特別だのぅ。ヒャーッヒャッヒャ」
おばあちゃんはクッキーも出してくれたのでありがたく食べると、これも紅茶クッキーのような見た目だったのに何とも形容できない不思議な味だった。ただ、美味しいということだけは間違いない。
「ヒャッヒャッヒャ。これも気に入ったようだの。ヒャッヒャッヒャ。今日はどうしたんじゃ?」
「ゴムボールみたいなのと、ゴムチューブみたいなのが欲しくて探してるの」
「ヒャッヒャッヒャ。そうかい。ちょっと待っておれ。ヒャッヒャッヒャ」
おばあちゃんが持ってきてくれたのは、ピンポン玉サイズの軟式テニスボールのようなゴムボールにカラフルな羽根が付いているのものだった。
バドミントンの羽根というよりは、小さいインディアカの羽根と言えばいいんだろうか? ボールが丸いからそれもちょっと違うけど。
「おぉー! さすがおばあちゃん! 理想より完璧!」
「ヒャーッヒャッヒャ。もう一つの方は明日までに用意しておくよ。ヒャーッヒャッヒャ」
「ホント!?」
「ヒャッヒャッヒャ。お嬢さんは特別だからのぅ」
「わぁー! ありがとう! とっても助かる!」
「ヒャッヒャッヒャ。またおいで」
「うん!」
紅茶を飲み終わり、おばあちゃんに手を振ってお店を出てから気が付いた。
「あ! お金払ってない!」
《そういえばそうね~。あのおばあちゃんの雰囲気に呑まれて思いつかなかったわ》
急いでおばあちゃんのお店に戻ったけど、お店は閉まっていた。
用意してくれると言っていたから、もうお店を出てしまったのかもしれない。
「あぁ……また明日きたときに一緒にお金払おう!」
《そうだな。それでいいと思う》
《そのままもらおうと思わないところがセナちゃんよね》
「対価を払わないなんてできないよー。もらえるならもらっちゃうことも多いけど……おばあちゃんの場合は完璧だから余計に申し訳ない」
《ふふっ。やっぱりセナちゃんはセナちゃんね》
「どういう意味?」
《悪い意味ではないから気にしなくて大丈夫だ》
いや、そんな言い方されたらめっちゃ気になるじゃん!
何回聞いても濁らされて教えてもらえなかった。
お昼前に宿屋に戻ると、一応みんな起きていた。相変わらず二日酔いは治っていないらしい。
「ふふっ。今日はゆっくり休もうね」
〈なんでセナは平気なんだ……我より飲んでいたのに……〉
「多分耐性のおかげだけどグレン程は飲んでないよー。むくまなくなってラッキー実感中」
〈そういうことか……〉
グレンは頭が痛すぎるのか反応が薄い。
チートなリンゴを食べるか聞いてみたけど、クラオルいわく『こんなことで食べられないわ』だそう。
明日まで引きずるようだったら勝手にご飯に混ぜて食べさせることにした。
とりあえずお昼ご飯は卵とトマトの雑炊とシジミのお味噌汁をみんなに食べさせて、午後は復活したクラオルに協力してもらって宿の部屋で細麺のうどん製作に精を出した。
最後の最後まで二日酔いにうなされていたのはグレンだった。
「ほら、二日酔いに効くトマトうどん作ったから、食べて寝なさい」
〈うぅ……久しぶりに飲んだからこうなったんだ。毎日飲めば頭痛くなったりしない! うぅ……〉
「自分の大声で頭痛くなってどうするの……」
みんなでトマトうどんを食べて、明日の予定としておばあちゃんのお店に行くことを伝えると、クラオルから教会でパパ達に挨拶した方がいいと言われた。
「じゃあ、明日は午前中に教会行って、午後におばあちゃんのお店に行こうか」
『それがいいわ。それにしてもあのおばあさんがこの街にもお店持っているなんて不思議ね』
「ね! でもおかげでいいものが手に入ったよ」
『ふふっ。嬉しそうね』
グレンにプルトンがちょっかいを出して鬱陶しそうにされていたりしたけど、穏やかに時間が過ぎていった。
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