130 / 533
6章
パパ達の限界
しおりを挟む朝起きると、グレンも二日酔いから復活していてテンションが高かった。
宿の朝ごはんを食べてみんなで教会へ向かう。
教会には住民よりも冒険者がお祈りに訪れているらしく、ひっきりなしに冒険者が着ている鎧がカシャカシャと音をたてていた。
目立たないようにお祈りの間の隅にあるベンチに座り、目を閉じる。
「((パパー!))」
――「キヒターのいる教会に飛ばすよ」――
ガイ兄の声が聞こえたと思ったら空気が動く気配がして、目を開けるとキヒターのいる元廃教会だった。
《女神様!》
「キヒター、久しぶり。早速で悪いんだけど、キヒターもお祈りしてくれる?」
《はい!》
ジルベルト君は何が起きたのかわからず混乱していたけど、私が再びお祈りするように言うと、不思議そうな顔をしたままお祈りしてくれた。
「パパー?」
「セナさん!」
目を閉じてパパを呼ぶとムギュっとエアリルパパに抱きしめられた。
いつもの花畑で神達四人が揃っている。
ジルベルト君も神界に呼ばれていて、パパ達を見て目をこれでもかと見開いていた。
「今日はジルベルト君も一緒だね」
「あぁ、一人放置はさすがに可哀想だから一緒に呼んだ」
エアリルパパに抱きしめられている私の頭を撫でながら、アクエスパパが説明してくれた。
「そっか。ありがとう。新しい街に着いたよ。神界に来たってことは何かあったの?」
「「「「セナ(さん)!」」」」
「ぴぇ!?」
四人にズイッと顔を近付けられて名前を呼ばれ、変な声が出てしまった。
「え? な、なに? 私なんかした?」
「セナ!!」
「ひゃいっ!」
イグ姐に大声で呼ばれて体がビクッと反応する。
なにかしでかしたつもりはないけど何を言われるんだろうかと、ゴクリと喉が鳴った。
「妾も飲みたい! セナの料理を腹いっぱい食べたいのじゃ!」
「へ?…………え? えぇー!?」
怒られるのかと思ったのに、まさかの食の催促!
え? まさか、そんなことで呼んだの? ロッカーに入れていたご飯じゃ足りなかったの?
「レニーレムマッシュのご飯もとても美味しかったです。ありがとうございます」
「それは良かった」
「ですが! 僕達もセナさんと焼肉したいです! セナさんは僕達にもご飯を作ってくれていますが、あんな風に楽しくセナさんとご飯食べられません! うぅ……」
「そうだ! それに、前から……」
私を抱えたままエアリルパパが泣き出してしまった。
泣いているエアリルパパを継いでアクエスパパが説明してくれている。
エアリルパパをヨシヨシと撫でながらこの状況をどうしようかと逡巡する。
エアリルパパとアクエスパパの話をまとめると……
ずっと一緒にご飯を食べたいと思っていたけど騎士団と一緒だったから我慢していた。私があまりパパ達にご飯を作らなくなって寂しかった。焼肉をしながらお酒を飲んで楽しそうに騒いでるのを見て我慢できなかった。神達も一緒に楽しく食べて飲んで、とワイワイしたい!ってのことらしい。
「あんまり差し入れできなくてごめんね。気を付けるよ」
「違うよ。そうじゃない。セナさんが大変なのはわかってる。“ちょっと家政婦みたい”って思っていることも知ってる。私達はセナさんの負担になる気はないんだ。私達はセナさんに頼って欲しいけど、セナさんは自分で解決しようとするでしょう? セナさんの中に私達がいない気がして寂しかったんだよ。あとは単純に一緒にご飯が食べたかっただけだよ」
私が謝ると、私の頭を撫でながらガイ兄がパパ達の言葉を言い換えた。
つまり極端に言うと、あんまり相手してくれないから寂しい!ってことか。
ほんのちょびっとだけ、「私と仕事どっちが大事なの!?」ってセリフを思い出しちゃったよ。
「そっか……あんまり教会も行ってなかったもんね。ごめんなさい」
「セナさんに会いたかったんですよぉー」
私が謝ると、エアリルパパが再びギュッと抱きしめてから下ろしてくれた。
「さて、とりあえず固まっているジルベルトに説明しないとね。私とエアリルが説明するから、アクエスとイグニスといつもの部屋で待っていてくれるかな?」
「わかった! ジルベルト君にまた女神扱いされたくないからちゃんと説明してくれる?」
私が不安を口にすると、ガイ兄が笑いながら請け負ってくれた。
「じゃあ妾達と行こうかの!」
連れ去られた宇宙人のようにイグ姐とアクエスパパに両手を繋がれ、イグ姐の指パッチンでいつものソファのある部屋に移動した。
今日はなぜかアクエスパパとイグ姐に挟まれる形でソファに座らされ、グレンとキヒターは対面のソファに座っている。
「はぁー。癒されるの」
イグ姐が私を抱きしめながら頭にグリグリと頬ずりをしてくる。
「どうしたの? お疲れなの?」
「ふむ。ちょっとな……それよりも、セナはあのホットプレートを作ったやつに何を頼むんじゃ? 妾が作ってやるぞ?」
話題を逸らすようにイグ姐に言われたけど、せっかく紹介状を書いてもらったからタルゴーさんの好意を無駄にしたくない。そう説明するとイグ姐は肩を落としてしまった。
『ねぇ、主様。前にイグニス様に何かお願いしたいって言ってたわよね?』
「本当か!? なんじゃなんじゃ! 妾に言うてみよ」
何を頼みたいって言ってたっけ?
記憶を掘り起こすとそう言えば一つあったと思い出した。
「あぁ! そう言えばお魚焼く用の金網が欲しかったんだ!」
でもあれは私がまだ鍛冶ができなかったときの話だ。今なら自分でも作れるけど……キラキラとした目を向けられ、見てわかるくらいテンションの上がったイグ姐には言えなかった。
形状を聞いてくるイグ姐に絵を描きながら説明する。
「ほう。網で挟むと身が縮まらぬのか」
「うん。まぁそれはイカとかタコなんだけど、たき火でもお魚焼けたらいいなって思って」
「そうかそうか! セナは魚が好きか!」
アクエスパパまでテンションが上がってしまった。
「あ! パパに聞きたいことあったんだ!」
「なんだ? なんでも答えてやる」
「あのね、にがり知らない?」
「にがり?」
「そう。海水からできるのは知ってるんだけど、どうやってできるのかは知らないんだよね」
「俺も知らないが……海のものなら調べられるから調べてやる」
「本当!? ありがとー!!」
アクエスパパに抱きつくと、アクエスパパにまでグリグリと頬ずりされた。
今日はやたらパパ達のスキンシップが激しい。お仕事のストレスかな?
1,281
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。