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6章
宴
グレンとキヒターは前回の面談のような対面で慣れたのか、以前ほど萎縮していない。
アクエスパパもイグ姐も普通に話している。いや……二人共前回も普通だったか。
「飲みたいって言ってたけど、パパ達はお酒好きなの?」
「え? あぁ! 好きだぞ」
今の間はなに?
「妾は飲むならカー!っとクるのが好きじゃ」
「その言い方だとウォッカとかテキーラとか好きそうだね。私が持ってるお酒って、エールとワインと清酒だよ?」
「セナが飲んでたやつがいいのぅ」
「清酒かな?」
二杯はエールだったけど、三杯目からは日本酒を飲んでいたから多分日本酒だろう。
日本酒……タル二つで足りるかな? 足りなかったら料理に使う分までなくなっちゃう。どっちみちまたグレンにお酒取りに行ってもらわないとか……
「ご飯は焼肉?」
「あのホットプレートで焼いていたやつじゃ!」
「焼肉だね」
正直、一日インターバルがあったとは言え連続焼肉は……私は違うのにしよう。
宴会になったら今日は魔女おばあちゃんのお店に行けなさそうだ。
「じゃあ、私準備するよ。お肉切るのに時間かかるから」
「手伝ってやる。イグニスは危ないからダメだ」
「むっ! 焼くのは得意じゃぞ!」
「準備はできないだろ。大人しく待ってろ」
アクエスパパにいわれてイグ姐は悔しそうだ。
フォローしようかと考えているうちに指パッチンで移動していた。私のコテージに。
イグ姐には後でちゃんとフォローすることにして、アクエスパパに手伝ってもらってスライスしていくんだけど…………パパは神様だと実感した。
スライスして見せると、どこをどうやっているのか魔法であっという間にスライスしていく。
「パパすごいね……」
「見直したか? イグニスは鍛冶以外だと細かい制御が苦手だからな。あいつがやったら焦げる」
なるほど。魔法ならイグ姐も余裕かと思ったけど、謎が解けた。
野菜もお肉も一昨日よりも量があるのに、一時間もしないで全部スライスされてしまった。私はお肉だけで三時間もかかったのに!
神界に戻ると、エアリルパパとガイ兄とジルベルト君もソファの部屋に集まっていた。
ジルベルト君はカチコチに緊張して固まっていて、大丈夫か心配になってしまう。
「一応説明したんだけど、ずっとあの調子でね。おそらくお酒が入ったらもう少し砕けると思うんだけど」
「種族解放のときのことは、緊張よりセナさんの役に立てることの方が大きかったようです。夢の出来事でしたし」
そういえば、眠らせて教会に連れて行ったんだっけ……こればっかりは慣れてもらうしかないよね。
◇
早く飲みたいとのイグ姐の言葉でガゼボのある草原に移動になった。しかも、全員が座れないからとの理由で、新しい大型ガゼボが既に用意されていた。
私がホットプレートを出すと、思っていたよりも小さかったらしく、イグ姐がほんの十分ほどで大きなホットプレートを作ってくれた。
「さぁ! 焼肉じゃ! カンパイ!」
イグ姐の音頭でカンパイをして野菜とお肉を焼いていく。
内容は一昨日と同じだけど、ポラルのリクエストでピリ辛ダレより辛いタレを作った。
「んん~! これはいいのぅ! 気分爽快じゃ!」
「そうだね。外というのもまた開放的だしね」
「美味しいです!」
「このネギ塩ダレがいいな!」
パパ達神様は本当に美味しそうに食べてくれている。
ジルベルト君も少し飲んで緊張が解れたみたい。
ホットプレートが大きく、グレンの食べるスピードにも負けていなかった。
ただ、エルミスとプルトンは連続の焼肉には惹かれなかったらしく、サラダうどんを作ってあげた。
私はサラダをつまみつつクラオルとグレウスに焼けたお肉を食べさせる。
ポラルはお肉も食べているけど、やっぱりキムチが好きらしい。
一応エールとワインも出したけど日本酒の減りが早い! お肉の減りも早い!
少なくなったら追加で出しているけど、スライスしたお肉と野菜足りるかな?
「セナ! 全然食ってないじゃないか! ほら、あーん」
「えっと……あーん」
「妾も! セナ、あーん」
「あ、あーん」
さっぱり系がよかったんだけど、私には断れず、雛鳥みたいにお肉を与えられる。
「パパ達にいっぱい食べて欲しいな」と、苦し紛れに言ってみたら、余計に食べさせられることになってしまった。何がいけなかったのか……
お酒が回ったのか、グレンとイグ姐が肩を組んでなにやら盛り上がっていて、ジルベルト君はガイ兄と話している。
〈セナ! 酒がなくなった! おかわり!〉
「えぇ!? もうタル二つ飲んだの?」
「妾もまだ飲みたい!」
「わかったー。もうこれしかないからね?」
最後のタルを出すと、早速二人が飲み始めた。
グレンだけだったら断った。でもイグ姐に言われたら断れない。
断ったら、イグ姐は了承してくれると思う。ただ私が水を差したくないだけ。パパ二人も、ガイ兄もお酒をおかわりして飲んでいる。
みんなが楽しんでくれるのは嬉しいのに、しばらく日本酒を使う料理はお預けかと、ちょっとテンションが下がってしまう私は性格が悪い。
グレンが二日酔いから復活したらお酒を取りに行ってもらおう。グレンにばっかりお願いしちゃってるから、ガルドさん達と会えたらグレンに日本酒の滝の案内をお願いしないと。そしたら転移で行けるもんね。
もうお肉も野菜も残りわずか。パパ達神様の箸のスピードも落ちてきているけど、止まってはいない。
「ちょっと待ってね」と声をかけてから、ご飯と卵を無限収納から出して〆のチャーハンを作る。
〈おぉ! これは初めてだな!〉
「なんじゃと!?」
グレンがいち早く反応すると、イグ姐が期待の眼差しを向けてきた。
「ふふっ。〆のチャーハンだよ。はい、できた。美味しいと思うから食べて」
〈んまい!〉
「おぉ! これは美味いの!」
グレンとイグ姐の反応を見て、他の神達もチャーハンを口入れていく。
全員気に入ってくれたらしい。
ポラルはまだ元気だけど、クラオルとグレウスはおなかがいっぱいでウトウト。
グレンはチャーハンを食べ終わった後、日本酒を一気飲みして落ちた。
「なんじゃつまらんの。そなたは飲んでおるのか?」
「はっ、はい!」
「そんなに緊張せんでよいぞ。外はどうじゃ?」
グレンが寝た途端にイグ姐がジルベルト君に絡みだした。
イグ姐ってもしかして絡み酒? 神様も酔うの?
「セナさん大丈夫ですか?」
「へ? なにが?」
「先程なにかヘコんでいたように見えたので」
「……ううん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
私が日本酒がなくなることにヘコんだのをエアリルパパに見られていたらしい。
こんな優しいパパ達を見習って私も優しくなりたい。
「ふふふっ」
「どうしました?」
「んーん。パパ達のこと大好きだなって思って」
「セナさん!」
「ブビュッ」
いきなり隣りに座ったエアリルパパに抱きしめられて豚みたいな声が出てしまった。
パパよ、鼻が痛いぞ。
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