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6章

ティータイム

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 パパ達みんなと楽しい朝ごはんを食べて、昨日と同じ時間に廃教会経由でピリクの街の教会に送ってもらった。
 昨日プレゼントしてもらったパーカーとショーパンを着て私の気分はルンルン。
 グレンはお披露目のときは元気だったのに、今は二日酔い真っ最中。

〈うぅ……頭が痛い〉
『調子乗って飲むからよ』
「お酒好きなら毎日飲んでもいいけど、程々にしてね」
〈気を付ける……うっ……〉

 宿に戻り、ベッドで唸るグロッキーなグレンにピシャリと言い放つクラオルは、二日酔いにならないように気を付けていたらしい。
 グレンに宿でゆっくり休むように言ってから私達は魔女おばあちゃんの雑貨屋へ向かう。


 おばあちゃんのお店のドアの来客を知らせるベルがカランカランと鳴った瞬間、おばあちゃんの笑い声が響いた。

「ヒャーッヒャッヒャ。今日は初めて見る顔もいるねヒャッヒャッヒャ」
「おばあちゃん、おはよう!」
「ヒャッヒャッヒャ。おはようさん」

 おばあちゃんは挨拶をすると、私達を手招きしてまた小部屋に案内してくれた。

「ヒャッヒャッヒャ。みんなお飲み。ヒャッヒャッヒャ」
「わーい! おばあちゃん、ありがとう! いただきます!」

 おばあちゃんが全員に前回飲んだときと同じお茶を淹れてくれたので、みんなにはストローを出してあげた。
 不思議な味のお茶は肩のチカラが抜けていく。

「おばあちゃん、ごめんなさい。ボールのお金払ってなかったのをお店出てから気が付いたの。すぐに戻ったんだけど、お店閉まってて……」
「ヒャーッヒャッヒャ。やはりお嬢さんは特別じゃの。ヒャッヒャッヒャ」

 おばあちゃんは特に気にしていなさそう。と、言うよりもむしろ少し嬉しそうにお茶を飲んでいる。

「おばあちゃんに紹介するね。家族になったジルベルト君」
「ジルベルトです。よろしくお願い致します」
「ヒャッヒャッヒャ。また面白い子を仲間にしたもんだね。ヒャーッヒャッヒャ」
「本当はもう一人いるんだけど、今日はベッドで休んでるの」
「ヒャーッヒャッヒャ。そうかい。それならこのお茶を飲ませてやるといい。ヒャーッヒャッヒャ」
「お茶? わかった! ありがとう!」

 私がお茶の葉が入った袋を受け取ると満足そうに頷かれた。
 おばあちゃんが「ちょっと待ってな」と、席を離れて持ってきてくれたのは黒と青のマーブル模様のホースみたいなものだった。
 伸ばしてみると完全にゴムチューブ!

「おぉー! 見た目ホースなのにめっちゃ伸びる!」
「ヒャーッヒャッヒャ」
「ボールのも合わせて全部でおいくらですか?」
「その前に……あの箱は他の人にも渡したのかい?」

 おばあちゃんは私を見極めるように問いかけた。いつものような独特の笑い声はない。

「ううん。アレはで、私が作ったやつじゃないの。だからおばあちゃんにしか渡してないよ」
「ヒャーッヒャッヒャ。そうかい。なるほどね」

 おばあちゃんはいつもの調子に戻り、一人何かに納得したように頷いた。
 おばあちゃんに渡した保存箱はガイにぃに作ってもらったやつだから、そうそう壊れたりはしないと思うんだけど……

「ヒャッヒャッヒャ。すまんの。そうだね……前にもらったパンと、銀貨二枚くらいにしておこうかね」
「えぇ!? 安すぎだよ!! それにおばあちゃんならパンも普通に渡すよ?」
「ヒャーッヒャッヒャ! ヒャーッヒャッヒャ! ヒャッヒャッヒャ」

 そんなに安いわけがないと私が驚いて返すと、こちらがビックリするくらい大きな声で笑われてしまった。
 おばあちゃんの爆笑にみんな目をパチクリさせている。

 爆笑が収まったおばあちゃんに本来の値段でいいと何回言っても値段は覆らなかった。
 いつも安く売ってくれるおばあちゃんがパンが好きだと言うなら、せめてパンでお返ししようじゃないか!
 おばあちゃんに何が好きか聞いてみると、やっぱりジャムパンが好きらしい。
 この世界ジャムパン人気すぎじゃない??

「たしか前のときはメロンパンとクリームパンは入れてなかったから、よかったら食べて」
「ヒャッヒャッヒャ。ありがとうよ」

 おばあちゃんは嬉しそうに私からパンを受け取った。以前渡していたジャムの容器に違うジャムを入れてあげると、笑い声がいつもよりも大きくなったので、ノーマルなジャムも好きなんだと思う。

 お礼を言っておばあちゃんの雑貨屋を出たらその足で冒険者ギルドに向かう。
 冒険者ギルドはお昼が近いからか、食堂の方はそこそこ混んでいるけど受け付けの方は空いていた。
 受け付けにいたお兄さんにギルマスを呼んでもらうと、てっきり倉庫に案内されると思ったのに、職員さんに案内されたのは応接室だった。

 ノック音がして入ってきたのは前回同様やる気のなさそうなギルマスと、知らない小太りのおじさんだった。

「お待たせしましたー。商業ギルドも素材を売って欲しいらしいんで連れてきましたー」

 商業ギルドの小太りおじさんはこの街の商業ギルドのギルマスだと挨拶してくれた。汗っかきらしく、しきりにハンカチで汗を拭っている。

「見本として少しずつ出すので、買うものが決まったら欲しい量を教えて下さい」
「わざわざですかー?」
「王都での経験から全ての買い取りは無理だと思います。出していないからといって、素材の鮮度が劣化しているということはありません。むしろ出したのに買い取ってもらえなかったものが劣化しますので」
「かしこまりました。見せていただいたものから買い取りリストを作ります」

 やる気のない冒険者ギルドのマスターは面倒臭そうだけど、小太りのおじさんは文句はないみたい。
 素材を一通り出したら、私達は一度宿に戻ってお昼ご飯タイム。

 食後に魔女おばあちゃんからもらったお茶をグレンに飲ませると、グレンの頭痛はすぐに治ったらしい。
 さすがエスパーの魔女! おそるべし!

〈これはすごいな! これがあれば飲みすぎても大丈夫だ!〉
「そのお茶、魔女おばあちゃんからもらったやつだからそんなに量ないよ? たぶんあと二回か三回分」
〈買えないのか?〉
『あんたが飲みすぎなきゃいいのよ。毎日二日酔いだったら移動できないじゃないの』
《馬車でずっと留守番だな》
《そうね。役に立たなくて飲んだくれるドラゴンなんていらないわね》

 クラオルが呆れ、エルミスとプルトンがニヤニヤと追い討ちをかけると、グレンがわかりやすく焦りだした。
 こういうところは素直で可愛い。
 結局、エルミスとプルトンに乗せられて、“たまにほどほど”くらいにすると約束させられていた。
 ギルマス達に指定された時間までゆっくりと午後のティータイムを満喫した。


 復活したグレンも一緒に冒険者ギルドに向かい、素材を売ったら今日やることは終わり。
 案の定冒険者ギルドも、商業ギルドも少しだけの買い取りになった。量は少しなのにまた高額で買い取ってもらえて、私はまたお金持ちに。
 もう気にしたら負けな気がする。

 その後は商店を回り、大量消費してしまったお肉を中心に爆買いした。
 夜ご飯は八百屋さんオススメの食堂へ。

 八百屋さんオススメだけあって野菜がふんだんに使われている料理や、サラダの種類が豊富で私には嬉しいお店。グレンは普通にお肉料理を特盛りで頼んでいた。
 美味しい野菜をたっぷり食べて大満足!

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