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6章
ダンジョン【1】
ゲーノさんにお見送りしてもらったら、聞いておいた場所に向かう。
ダンジョンは、村から近い森にある小さな採石場のようにくり抜かれている場所から入る横穴だった。
〈ほう。本当に坑道がダンジョン化したんだな〉
「そういうことあるの?」
〈あるな。100年以上……いや200年だったか? いつだったかは覚えていないが、とある村の中で井戸を掘っていたらそこが次の日地下型ダンジョンになったことがある〉
「そうなんだ」
〈入るんだろ?〉
「うん」
初めてのダンジョンに緊張とワクワクする心を落ち着けてから、坑道に一歩踏み出した。
坑道は洞窟なのになぜか真っ暗ではなく普通に見渡せる明るさだった。
通路は思っていたよりも広く、大人五人が横に並んで歩けるほどだった。
目の前には魔物は見当たらないが、気配はそこかしこにある。
ダンジョン。迷宮とも呼ばれている。基本的には洞窟型だ。昔の建造物である遺跡などが長い間放置され、ダンジョン化しているものもあるが――今回は置いておこう。
魔物とエンカウント式なのは変わらないけど、遭遇すればレベル差などお構いなしに必ず襲ってくる。
入ってすぐの階は一階層、階段を下りて地下一階が二階層、地下二階が三階層……と呼ばれている。
洞窟内なのにも拘わらず、森・砂漠・火山・草原・水などなど階層によって形態が変わったりもする。
ダンジョンもランク付けされていて低ランクは弱い魔物、高ランクは強い魔物が出る。基本的に階層が下がれば下がるほど、強い魔物になっていく。
ダンジョン内の魔物はリポップ式で、狩り尽くされたとしても一定時間を置けばどこからか湧く仕組みだ。
ダンジョンでは通常と異なり、倒した魔物は消え、代わりに何かを落としていく。落としていくという表現は微妙かもしれないが、ゲームで言うドロップ品だ。それは肉だったり牙や角など素材だったりと、倒した魔物により異なる。俗に言うレアドロップもある。
ダンジョン内で亡くなると、冒険者の骨とドッグタグ以外は吸収されてしまうため、ドッグタグを回収して冒険者ギルドに報告することが良しとされている。鎧や武器も吸収されてしまうが、ダンジョン内の魔物が身ぐるみ剥がし自分の物にすることも多い。
魔物が襲ってこないセーフティーエリアと呼ばれる場所がダンジョン内にはいくつかあり、そこで休んだり睡眠を取ったりするのが冒険者内では常識だ。
隠し部屋や宝箱や罠なんかもあり、日本でゲームをしている人なんかは想像しやすいと思う。
入り口から歩き続けているとズリズリと這う音を響かせながらスライムが現れた。
「ノーマルスライムだ!」
〈フンっ〉
グレンがスタスタと歩いて行きスライムを踏みつけると、何かの液体が入った小瓶を残して消えていった。
小瓶の中身は【スライム液】。使用用途は特にないらしい。
容器である小瓶はどこから出てきたんだろうか?
無限収納で解体したときも血などは勝手に小瓶に入っていたから、そういう仕様なんだと思うことにした。
迷宮とも呼ばれているだけあって中は迷路のようになっている。
マップを開いても今まで歩いてきた場所しか表示されない。地道に二階層への階段を探すしかなさそうだ。
ただ、マップを開いたことでこのダンジョンの名前が判明した。【ペーブル迷宮】という名前らしい。
「ねぇ、クラオル。ダンジョンのスライムの核抜いたらどうなるかな?」
『また主様は不思議なことを……』
「ダンジョンの中だと消えちゃうでしょ? 引っこ抜いた核も消えちゃうのかな?」
『引っこ抜くのは主様くらいだから、誰にもわからないわよ』
わからないことはレッツトライ!ということで、現れたスライムに手を突っ込んで核を引っこ抜いてみた。
「核は残るんだね」
〈ハッハッハ! セナは面白いな!〉
「セナ様、お怪我はありませんか?」
心配してくれているジルベルト君に大丈夫なことを証明してから、核を見てみる。
ポイズンスライムの核は紫色だったけど、ノーマルスライムの核は水色。倒したスライムの色に影響するっぽい。
核を引っこ抜いたスライムからもドロップ品が回収できて、一石二鳥!
パパ達にも渡したいし、自分も実験で使いたい。
グレンとジルベルト君に結界を張って、手伝ってもらった。
「ありがとう! いっぱい集まったねー!」
「セナ様の結界は素晴らしいですね。感覚はそのままなのに、溶かされることも痛みもありませんでした」
「それはよかった!」
二人に手伝ってもらって手に入れた核は四十個ほど。プルトンが精霊の国で魔道具を作っている子にもあげたいって言ってたけど、これだけあれば充分だろう。
「核も手に入ったし、下に降りよう」
スライムを探すのにうろちょろして、一階層は隅から隅までマップに記載された。途中地下に続く階段を見つけたので、階段を下りていく。
二階層は違うスライムだった。黄色のスライム……サンドスライムと、土色のスライム……クレイスライム。
サンドスライムは【スライム砂】、クレイスライムは【スライム泥】が同じく小瓶に入った状態でドロップされた。
この二種も核をたっぷり回収してから三層に下りる。
三層は透明なプラプラスライム。
これは透明なせいで、気配はするのに見つけ難かった。
〈スライムしか現れんじゃないか!〉
「そうだねぇー。ペーブル迷宮って名前らしいけど、今のところ私達が名前付けるとしたらスライムダンジョンだよね」
〈弱すぎてつまらん!〉
グレンがプラプラスライムから核を引っこ抜きながらプンプンと怒っている。
「間引きって話しだったけど、そんなにスライムも増殖してないよね」
〈定期的に狩らないと魔物大量発生が起こるからじゃないか?〉
「それはある意味は合ってるけど、間違った解釈だねー」
「え!? そうなのですか!?」
私とグレンが核を引っこ抜きながら話しているとジルベルト君が驚いた。
「うん。見つかっていないダンジョンもあるでしょ? それだとずっと魔物大量発生が起こっている状態になっちゃうじゃん」
「〈確かに……〉」
ダンジョンは成長するダンジョンと成長しないダンジョンがある。
成長するダンジョンはその名の通り、地下へ地下へと成長して階層を増やしていくダンジョンだ。
成長しないダンジョンは現れたときのままで、階層は増えない。
ダンジョンの最奥にはダンジョンコアと呼ばれる、言わば【ダンジョンのシステムを司る石】がある。大きさも形もマチマチで、ダンジョンを形成する大元だ。
ダンジョンコアを破壊するとダンジョンは崩れ去る。生き埋めになる可能性があるため、自殺希望者でもなければちょっかい出す者はいない。
ダンジョン内の魔物が増えて魔物大量発生が起こる場合は、ダンジョン内で異変が起きた場合が多い。まぁ、その異変がなんで起きるのかがわかっていないんだけど。
この知識はパパからの刷り込み情報だ。
パパ達は魔素が濃すぎるとか、瘴気が影響していると思っているみたいだけど、パパ達もよくわかっていないらしい。
パパ達がわかっていないのに私達がわかるワケがない。
話しながら核とドロップ品である【プラスラ液】をたんまりと回収し終わると、お昼ご飯の時間だった。
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