139 / 537
6章
できる女と汗っかき男
グレンを筆頭にみんなにいつも使っている馬車はダメだと言われて、人数が少ないのに大きな馬車に乗り込んだ。
村長が連れてきた村人への説明をジルベルト君に丸投げして、私はグレンと共に御者席に陣取った。
冒険者ギルドに到着して、依頼完了報告をするとブラン団長とサルースさんからのお手紙が届いていた。
報告の間ウサ耳お姉さんとゲーノさんが仲良く話していて、依頼を受けたときにお姉さんが泣いた理由が鑑みれた。
手紙を受け取り、タルゴー商会に寄ってタルゴーさんと執事のおじさんに一緒に商業ギルドへ行って欲しいとお願いすると快諾してもらえた。
「なんだか予感めいたものがありましたので、一日空けておりましたの」とタルゴーさんが嬉しそうに言っていた。
女の勘なのか仕事の嗅覚なのかはわからないけど、大変ありがたい。
商業ギルドでギルマスを呼んでもらい、全員で応接室に移動した。
再び説明をジルベルト君に任せ、私はひとまずサルースさんからの手紙を開いた。手紙には無事で安心したということ、王都の近況、宿屋“渡り鳥”とネライおばあちゃんのお店の様子などが書かれていた。そして「また何か登録するときに手間取ることがあれば気軽に連絡おし」だなんて、タイムリーなメッセージで締めくくられていた。
最後の一枚はネライおばあちゃんからの手紙で、近況が書かれていた。私がデザインした服が好評で、お店が忙しくなり子供夫婦と孫もお店を手伝ってくれることになり、今鍛えているんだそう。文面から生き生きしている様子が想像できて、ほっこりと嬉しくなった。
「セナ様。セナ様はどうお考えですか?」
「ん?」
「タルゴーさんを呼ばれたのは何かお考えがあるのだと推察したのですが」
「あぁ! そうそう! タルゴーさんにはバックアップをお願いしたいんです」
「バックアップですの?」
バックアップとは何かを話してから、商業ギルドには料理人の手配、タルゴーさんには屋台の手配と場所の確保や売り上げの推移のチェックなどオーナーの役割り、村人は読み書き計算が可能とのことなので従業員のシフトや売り上げ計算など店長的な仕事をしてもらいたいと説明した。
「屋台の味が家庭でも楽しめますと宣伝したら、ホットプレートの魔道具も売れると思うので、タルゴーさんも一枚噛んだ方がいいと思ったんです」
「素晴らしいですわ! セナ様は商売を熟知しておりますのね!」
「ただ、そうなるとどんなに屋台の売り上げが悪くても、従業員の給料を払ってもらうことになるんですけど……」
「そんなの些細なことですわ! もちろん全面的に協力させていただきますわ!」
どんなものを屋台で売るのかもまだ話していないのにタルゴーさんは乗り気になってくれたらしい。
ギルマスが汗をハンカチで拭きながら料理人の手配をしてくれている間に、ゲーノさんに屋台用のホットプレートを作らないといけないと話すと、鉱石と魔石の確保をどうするかと話題が変わった。
「こちらが手配をしても構いませんが……」
「いいえ! わたくし達が手配致しますわ! セナ様のお話ではダンジョンで採掘可能なのですわよね? しかも、質が良いと。それでしたら、冒険者を雇えばいいのですもの。ダンジョン内の間引きにもなりますし、先程の全面協力すると言った言葉通り! わたくし達が協力致しますわ!」
手配が終わったらしいギルマスにタルゴーさんがたたみかけ、その様子にギルマスは汗を拭きながらタジタジ。
お昼ご飯を食べ、ギルマスが選んだ料理人さんが集まったらラップサンドの作り方を説明して試食。ラップや耐油紙がないのでタコス巻きの方が正しいかもしれないけど。
試食を出すと、タルゴーさんと執事のおじさんは「さすがセナ様」なんてとろけそうな笑顔で言っていて、ギルマスは汗を拭くのも忘れ固まってしまった。
集まった料理人さんは三人だったけど、一人が「革命だ!」と叫ぶと口々に「革命だ!」と言い始め、大丈夫かと心配になるくらい興奮している。
「生地や肉に使うスパイスの分量を公表しなければ、屋台で売れなくなることはないと思います」
「素晴らしいですわ! わたくし達がこのような美味しいものの販売に携わえるなんて! 商人冥利に尽きますわ!」
タルゴーさんが食材などの手配もしてくれることになり、商業ギルドは関わるうまみがほとんどなくなってしまった。
「オイはこんなに大変だと思ってなかった……」
「そう思ったので、口を挟ませてもらいました」
「すまねぇ……アンタには感謝してもしきれねぇ」
「私よりタルゴーさんに感謝した方がいいですよ。私が旅に出たあとはタルゴーさんが細かいことをやってくれるそうなので」
最初の勢いがなくなったゲーノさんは販売の大変さを痛感したらしく、意気消沈気味。村長はどんどん進む話しに放心気味だ。
あとはレシピの登録を済ませたら私の仕事は終わり。タルゴーさんなら任せても大丈夫だと思う。
タルゴーさんは「この街一番の屋台になりますわ!」とハイテンションになったかと思えば、執事のおじさんやギルマスと真剣に話したりと忙しい。
話を聞いている限りしかわからないけど、タルゴーさんは商売上手だと思う。その点商売ギルドのギルマスはタルゴーさんの勢いに呑まれ、いいところを持っていかれている。日本の中間管理職を彷彿とさせるギルマスも負けずに頑張ってもらいたい。
タルゴーさんがゲーノさん達を村まで送ってくれることになったので、私達は先に帰らせてもらうことにした。
タルゴーさんが上手くやってくれると思う。
宿に戻り、ブラン団長達からの手紙を開くと、フレディ副隊長とパブロさんからのお手紙も入っていた。
近況も書いてあったけど、主に私を心配する文面だった。相変わらず優しくて心配性で過保護な人達に心が温かくなった。
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
フェンリルに育てられた転生幼女は『創作魔法』で異世界を満喫したい!
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
旧題:フェンリルに育てられた転生幼女。その幼女はフェンリル譲りの魔力と力を片手に、『創作魔法』で料理をして異世界を満喫する。
赤ちゃんの頃にフェンリルに拾われたアン。ある日、彼女は冒険者のエルドと出会って自分が人間であることを知る。
アンは自分のことを本気でフェンリルだと思い込んでいたらしく、自分がフェンリルではなかったことに強い衝撃を受けて前世の記憶を思い出した。そして、自分が異世界からの転生者であることに気づく。
その記憶を思い出したと同時に、昔はなかったはずの転生特典のようなスキルを手に入れたアンは人間として生きていくために、エルドと共に人里に降りることを決める。
そして、そこには育ての父であるフェンリルのシキも同伴することになり、アンは育ての父であるフェンリルのシキと従魔契約をすることになる。
街に下りたアンは、そこで異世界の食事がシンプル過ぎることに着眼して、『創作魔法』を使って故郷の調味料を使った料理を作ることに。
しかし、その調味料は魔法を使って作ったこともあり、アンの作った調味料を使った料理は特別な効果をもたらす料理になってしまう。
魔法の調味料を使った料理で一儲け、温かい特別な料理で人助け。
フェンリルに育てられた転生幼女が、気ままに異世界を満喫するそんなお話。
※ツギクルなどにも掲載しております。
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。