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6章
使えるスライム
ブラン団長にゲーノさんの村の現状を伝えて、可能ならピリクの街の領主の管轄にして欲しいという主旨の手紙を送り、タルゴーさんに旅に出る挨拶を済ませた。
ゲーノさんの屋台に関して、しっかりと面倒を見てくれると約束してくれたので大丈夫だと思う。
パパ達に新しいスライムの核をプレゼントついでに一緒にランチを食べた。
早速イグ姐が作ってくれた魚用の金網を受け取ると、アクエスパパに謝られてしまった。調べたけど、にがりはわからなかったらしい。
買い物を済ませ、次の日丸一日ゆっくりと過ごしたら出発だ。
スライムの核で実験をしたいので、ニヴェスに馬車の牽引をお願いして、私はコテージに引きこもる。
みんなは馬車に残ったり、コテージの中で遊んだりと各々好きなことをしているためバラバラ行動だ。
ノーマルスライムの核は水と一緒に火にかけるとトロトロの水に変わった。鑑定を使ってみても、無味無臭で毒なんかは入っていないらしい。
ドロップ品である【スライム液】の方がドロドロボテボテしているけど、核から作ったトロトロ水の水分が少なくなっただけに見える。
「これって……使えるんじゃない? みんなに内緒で作ったら怒られるかな?」
思いついたが吉日ってことで早速キッチンへ移動した。
「私の予想が当たってたら、料理のレパートリーが広がる!」
よしっ!とエプロンを締め、気合い充分に作業開始。
一気に大量に作って失敗したくはないので、少量からスタート。
出汁をとった鍋にスライムの核を入れて煮込んでみると、出汁がトロトロになっていく。そのまま煮込み続けているとプルンプルンに固まってきた。
「いざ! 実食!」
鑑定で安全を確認してから、ドキドキの心臓を抑えつつスプーンですくって口に入れてみると、ちゃんと出汁ジュレになっていた。
「むはー!! きたきたきたーーー!!」
これは!……素晴らしく使えるぞー!
ウヒャッホーイ!と歓喜の舞いを舞いたいくらいに私は今猛烈に感動している!
そうとなれば、今日のご飯はアレに決定だ! ついでにデザートも作ってみよう!
心を弾ませながらクラオルから声がかかるまで作り続けていた。
『んもう! 主様ったら夢中になったら没頭しちゃうんだから!』
「ごめん、ごめん」
〈セナ、これはなんだ?〉
プリプリと怒っているクラオルを撫でているとグレンがお昼ご飯の丼を見ながら不思議そうに聞いてきた。
「よくぞ聞いてくれました! これは中華丼です!」
〈チュウカドン?〉
「中華丼ね。食べてみて!」
みんながどういう反応をしてくれるのかワクワクしながら勧める私に、みんなは首を傾げながらも口を付ける。
《まぁ! プルプルしてる!》
『プルプルじゃなくてトロトロじゃない?』
〈んまいな!〉
特に疑問にも思わず食べ進めていくみんなを見て、私はしてやったりと内心ニンマリしてしまう。
「今日はデザートもあるよ~」
〈おぉ!〉
みんなが食べ終わった頃を見計らい、作ってみたデザートを「ちょっとずつ食べてねー」とテーブルの上に出すと、初めてのデザートだからか、見つめたまま食べようとしない。
「どうしたの?」
《ねぇ、セナちゃん。粉がデザートなの?》
「中に何か入っています」
不安そうに聞いてくるプルトンに、上にかけている粉を避けるジルベルト君。
「ふふっ。これはわらび餅モドキだよ。中のモチモチと一緒にこのきな粉を食べるの。きな粉もちゃんと甘いから安心してね。ただ……」
〈んぐっ! ゴフォーッ!〉
『キャー!』
説明している途中で一度に大量のきな粉を食べたらしいグレンがむせて、きな粉を噴き出した。
『汚いじゃないの!』
「一度にいっぱい食べるとむせるから気をつけてって言おうとしたのに……大丈夫?」
〈ゴホッゴホッ〉
飲み物を飲ませて、背中をさすってあげて咳が治まるなりグレンは〈これは危険だ……〉と呟いた。
わらび餅モドキが危険なんじゃなくてグレンの食べ方だと説明したのに、〈なんと恐ろしいものだ〉と誤解されてしまった。
ジルベルト君が、グレンが噴き出したきな粉を掃除してくれていて、いつの間にか元通りのテーブルに戻っていた。
説明を続けてなんとか納得してもらい、気を取り直して食べ始めたものの、みんなはグレンを見ていたからか、いつもより慎重に食べている。
『美味しいけど、前歯にくっつくわ』
『はい』
「そっか……クラオルとグレウスのはきな粉少なめにすれば良かったね。気付かなくてごめんね。残しても大丈夫だよ」
『美味しいのよ! とっても美味しくて味は好きよ!』
私が謝るとクラオルはフォローしてくれて、グレウスはブンブンと頷いている。
「無理しなくても大丈夫だよ?」
《クラオルが残すなら私が食べるわ! とっても美味しいもの!》
《なら、グレウスが残すなら儂が食べよう》
プルトンとエルミスが余分なきな粉を食べてくれると言ってくれているのに、クラオルとグレウスは『好きなのに』『美味しいのに』と渋っている。味は好きだけど、食べにくいだけみたい。結局プルトンとエルミスに圧されて渋々渡していた。
次作るときはみんなの身体的特徴も考えて作ってあげよう。
食べ終わって休憩をしていると、プルトンに呼ばれた。
《ねぇ、セナちゃん。さっきのわらび餅って何からできてるの?》
「美味しくなかった?」
《違うわ。あんなにプルプルとして美味しいの初めて食べたもの!》
「それは良かった! ふふっ。聞きたい?」
プルトンと話していたハズなのにいつの間にやら注目を集めていた。
『主様、何その言い方。何か変なものでできてたの!?』
私が笑ったのを不審に思ったのか、クラオルが詰め寄ってきた。
「変なものって言えば変なものかなぁ?」
『『〈え〉』』
「中華丼はスライムの核と一緒に煮て、わらび餅は【スライム液】でできてるんだよね」
『『〈え?……えぇー!?〉』』
グレンはこれでもかと目を見開いていて、クラオルとグレウスは顎が外れるんじゃないかってくらい口を開けて驚いている。
《本当にスライム液なのか?》
「そうだよ~。鑑定で確認もしたし、味見もしたけど、特に害はなかったからみんなも大丈夫かなって思って」
エルミスに確認されて、えへへと笑いながら答えると信じられないものを見るような目で見られてしまった。
「あれ? ダメだった? 美味しくなかった?」
《美味かったが……スライムとは……》
「片栗粉の代わりに使えるみたいなんだよね~! これであんかけ系が食べられるし、とろみのあるスープも作れるよ! 和食と中華のバリエーションが増えるのは嬉しいよね~!」
しばらくは片栗粉使う料理にさせてもらおうとニヤニヤが止まらない私に、みんな呆れた視線をチクチクと送ってくるけど、ハイテンションの私には痛くもかゆくもない。
実験に籠ることを告げてから私は再び錬金部屋へ移動した。
◇
セナが移動したことで、ジルベルトも御者席に移動して馬車は走り出した。
『やたら機嫌がいいとは思ったけど、まさかスライムを料理に使うなんて……』
《そうねぇ~。食べられるとは思ってなかったもんねぇ》
《いや、あれを食そうとは思わんだろ。そこに考えつくのが主ならではだな。しかし、美味かった》
『ハァ……そうね。美味しかったわ。食べにくかったけど』
《ふふっ。アハハ! ホンットにセナちゃん面白すぎだわ~》
『ふふふ。型破りな主様だもの。きっと今日の夜ご飯もスライムの核を使った料理だわ』
セナがいたときは呆然とするばかりだったが、自分と同じ感覚の者同士話したら皆落ち着けた。
セナのなんにでも料理と結びつける思考に呆れつつも笑ってしまう。
きっとこの先、また予想だにしないモノを食材として使うことが容易に想像できた。
そんな会話をしていたなんて錬金部屋で素材の実験に夢中になっているセナが知る由もない。
◇
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