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6章
万能スライム
しおりを挟む今日も今日とて実験のために作業部屋に籠る。
アホスライムの核を水と一緒に煮ると、銀色の水になったけど何に使えるのかわからない。
【アホスラの粉末】は金属の粉みたいだったので魔力を込めて捏ねてみると大きさの割に軽い金属の塊になった。
試しに指輪とネックレスにしてみたけど重さもなく、なんとも安っちい。
「こんな感じの金属あったような……あ! もしかして……」
伸ばすために麺棒を作ったり、四角くするために料理で使うバットを作ったりと四苦八苦しながら挑戦したものの上手くいかない。
「プレス機みたいなのが欲しい……」
ダメ元で空間魔法と無魔法を使ってプレスするようにしてみると、とりあえず形になった。
「うはー! やっぱアルミホイルだ!」
日本で売っていたアルミホイルのロールにするべく、木筒を作って魔法で薄くプレスしたアルミホイルを巻き付けていく。
アホスライムの核を煮てできた銀色の水溶液は、乾燥させるとこちらもアルミホイルになった。ただ、ドロップ品の方が水で薄まっていないからか金属性が濃い。
作っちゃったけど、料理とかに使うアルミホイルとしてなら核を使った水溶液の方で充分だった。
「ドロップ品の方はイミテーション的なアクセサリーにいいかも。軽いし、材費的にも安いだろうから安価で売れそう」
もっと他に使い道がないかと記憶を探ると、アルミ鍋があったことを思い出した。
コンビニの冷凍鍋焼きうどんが入っている使い捨てタイプと、普通の鍋と同様の大きなアルミ鍋タイプ。
使い捨てタイプは水溶液の方から、普通のアルミ鍋はドロップ品から作ってみた。
アルミ鍋の方は熱伝導率が上がるように魔力を込めると、形状記憶され何故か破壊不可まで付与されてしまった。ちゃんと使えるか試してみたら使えたのでよしとしよう。
「あとは、サッシとかパイプとか建築素材的なのに使われるくらいしか思いつかないや」
かんざし、ヘアピン、木と組み合わせてバレッタと、満足するまでアルミの装飾品を作り続けたら、最後のスライムであるプラプラスライムの核と【プラスラ液】の実験だ。
「ふふっ……ふふふ。これは名前から予想してたんだよね~! きっとプラスチック! いや、プラスチックであって欲しい!」
【プラスラ液】は常温でも固まらず、トロトロした粘液で匂いは無臭。
味は……プラスチックであることを予想して、さすがに食べてないよ。無毒だから食べても大丈夫らしいんだけどね。
少量の【プラスラ液】を木の板の上に広げてみても自然乾燥はしてくれないみたい。生活魔法の【ドライ】で乾かしてみても乾いてもらえず、水魔法で水分を蒸発させたらようやく乾いてくれた。
「ん? これってビニールじゃない?」
先程の実験よりも大きめに広げた【プラスラ液】を乾かしてみると、材質はビニールっぽいのにゴワゴワ感がなんとも紙袋っぽい。
薄いのならどうかと、プラプラスライムの核の水溶液で作ってみるとちゃんとビニールになった。
水溶液からビニールができることがわかったので、ラップやチャック付きのプラスチック袋を大量生産。
水溶液に紙を浸したら耐油紙ができるんじゃないかと作ってみたり、以前購入していた薄い布を浸してレインコートやウインドブレーカーが作れるんじゃないかと試してみたりした。
結果は大成功!
ポラルを呼んで説明すると大喜びで服飾部屋へ糸でまとめた布を引きずって行った。
「持ってくよって言う間もなかった……」
喜んでくれたならいいかと、実験を再開する。
私が欲しいのはタッパー。タッパーがあればボウルが空くし、深皿を使わなくてもいい。
コーティングした木型を作って【プラスラ液】を流し込んで乾燥させる。
「うーん……一応できたけど、なんかちょっと違う。前にテレビで見た鋳物製造を真似てみたんだけどな……」
乾燥が上手くいかないのかキチンと蓋が閉まらない。と言うよりも蓋が硬すぎてクッション性のないお弁当箱みたいになってしまった。
「クッションって言えば魔女おばあちゃんに用意してもらったゴムも使ってなかったや。あれも作らなくちゃ」
どうせならと、魔女おばあちゃんに用意してもらったゴムを使って、失敗したタッパーをお弁当箱にしてみた。
柔らかさを出そうと外側だけを乾燥させてみると、折れて中から【プラスラ液】が漏れ出てしまった。
考えて、何かを混ぜればいいのかと【スライム液】を混ぜてみたら大成功!
「スライム液が万能すぎる!」
大小さまざまなタッパーを量産して、ゴムを使ってパチンコを人数分作った。
パチンコ玉とジルベルト君が使う弓用の鏃を作るために、ルフスも鍛冶ができるとイグ姐が言っていたのを思い出し、ルフスとグレンを呼んで二人に手伝ってもらう。
グレンとルフスに鍛冶を教えてもらい、手順もコツもバッチリ覚えられた。
みんなにパチンコを披露すると、夜ご飯後の遊び時間のダーツと吹き矢に仲間入りして盛り上がった。
ジルベルト君から「さすがセナ様です! 吹き矢だけではなく、他にも遊びながら戦闘力を上げる方法を思いつくなんて!」と賞賛を浴びてしまい、「ただの遊びだよ」と説明してもわかってもらえなかった。悲しい。
ポラルが素晴らしい裁縫の腕前を駆使して、ポンチョ型のレインコートを作ってくれた。しかもちゃんとフード付き!
道中の魔物も任せっきりだったジルベルト君の弓が壊れたと報告を受けていたので、前に目を付けていたしなる木とポラルの糸で弓を作ってあげた。
泣いて喜んでくれたのはいいんだけど…………寝るときも私が作った弓を抱きしめて寝ていて、喜んでもらえて嬉しい気持ちと、そんなに感動するほど立派なものじゃないから申し訳ない気持ちとで複雑な気分だった。
ご飯と夜以外は実験三昧の七日間を送り、気が付いたら国境間近。
ニヴェスに「この先は国境近くだから街道を進んでね」とお願いして、魔馬車と同じくらいのスピードで走ってもらう。
馬車の窓から外を見てみると、いつの間にか草原地帯を抜けていて、荒野地帯に入っていた。
グレンが言うにはシュグタイルハンは農作地以外は土がむき出しのところが多いらしい。ちゃんと森もあるらしいけど、見えている限りでは草が所々に生えているくらいだった。
国境に近付くにつれて万里の長城のような壁が現れ、通れる門は検問所の役割りをしているらしく、身分証の掲示と水晶玉のチェックが待っていた。
「身分証を見せろ」
「はーい」
「ハッ! セナ様でいらっしゃいましたか! 大変失礼致しました! 我が国王より仰せつかっております!」
ギルドカードを見せた途端に担当していた門番さん以外にもビシッと敬礼されしまい、私達は顔を見合わせた。
「お疲れでございましたら、兵の待機所をお使いになられますか?」
「えっと……気遣いありがとうございます。馬車に乗ってるだけなんで大丈夫です」
「かしこまりました。あちらに見えますのが、ミカニアの街になっております。あと、こちらをどうぞ」
門番さんが渡してくれたのはシュグタイルハンの地図と、シュグタイルハンのダンジョン地図だった。
「わぁ~! ありがとうございます!」
「っ! い、いえ! 喜んでいただけて嬉しいです! 我が国王より「国に入ったら王都の冒険者ギルドに手紙を出して欲しい」と伝言であります」
「はーい!」
門番さんにお礼を言って、一番近いミカニアの街に向かう。
門番さん達は、並んで検問を待っている人達を放置して手を振ってくれた。
それでいいのか門番さん達よ。
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