転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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7章

山岳の街ニャーベル



 昨日みたいに馬車渋滞に巻き込まれないように、日が昇る前から活動を開始する。日課のストレッチもそこそこに、パパっと朝ごはんを食べたら出発だ。
 まだ休んでいる冒険者や馬車もいるので、うるさくしないように出たハズなんだけど……なぜかあの貴族の馬車がまたもや後ろに付いてきた。
 エルミスやプルトンに昨夜のことを聞いてみても、特に近寄ってくることもなかったらしい。

「ピッタリくっ付いてきてるワケじゃないけど、なんかストーカーみたいで気持ち悪いね」
『なんなのかしらね』
「馬車に乗ってる人見た?」
《お金持ち風の男の子だったわ。年はジルベルトと同じくらいじゃない?》
《特に監視している感じはしないが、こちらを窺っていた。気を付けた方が良さそうだ》

 まだ薄暗いので歩いている人も対向馬車もいないので、ニヴェスに少し急いでもらう。
 私達がスピードを上げると、後ろの馬車もスピードを上げた。ただ、優秀なニヴェスと違い、御者の腕が顕著けんちょに出る山道は彼らと私達の差をハッキリとさせた。

 二つほど休憩所を通りすぎ山を降りると、今度はなだらかな上り坂が待っていた。この道を進むと低めな岩山の中にあるニャーベルの街が待っている。
 大きめな岩山を越えたことで、道幅は再び広くなっていて、対向馬車がきてもスピードを落とさなくて済む。
 今日中に街に着けそうでホッと胸を撫で下ろした。
 おそらく、あの貴族の馬車は今日も野営を余儀なくされると思う。

 日が陰る前にニャーベルの街に到着できて、ミカニアの街と同じく兵士の人が取ってくれた宿に入れた。
 本当は違う宿だったんだけど、「貴族が泊まらない宿がいい」とお願いして冒険者達が泊まる宿にしてもらった。
 宿は良く言えば庶民的、悪く言えばちょっとボロい。一般的な冒険者にはお手頃価格で人気の宿らしい。
 部屋自体は三人部屋だからそこそこの広さがあるけど、部屋の大半をベッドが占領していて狭く感じる。お風呂はもちろんシャワーもなく、トイレは共同だ。

「あの貴族が街に着いても、さすがにこの宿には泊まらないよね」
『そうねぇ、きっと「こんな宿に泊まれるか!」って言うと思うわ』

 セリフを言いながら、ビシッと指を差したあとにフンッと顔を背ける仕草をしてクラオルが笑いを誘う。
 ブラン団長とフレディ副隊長は騎士団だから別として、街の人達はいい人が多いのにいい貴族には会ったことがない。アーロンさんも国王だから別だろう。
 クラオルも貴族にはロクな思い出がないんだなーと思った。そりゃあ一緒にいるもんね。

 宿のご飯は付いておらず別払いなので、少し休憩したあとに宿の食堂へ向かう。
 食堂はむさ苦しい男性達で賑わっていた。冒険者が多いため、鎧を着ている人がいるグループが半数以上。他は着ている服から街の住人だと思う。
 下町のような賑わいでワクワクしてしまう。

「あんた達はそっちのテーブルに座んな!」

 忙しなく動いている店員さんは両手に料理を持ったまま、アゴで私達に示した。
 私達が席に着くと、乱雑にメニュー表をテーブルに置かれてグレンの眉間にシワが寄る。

「まぁまぁ。グレンは何食べたい? お昼も急いでたからあんまり食べられなかったでしょ? 好きなの頼んでいいよ。もちろんジルベルト君もね」
「ありがとうございます」

 私はいつも通り店員さんのおまかせだけど、グレンは嫌がらせのように大量に頼んでいた。
 私とジルベルト君の料理もあり、グレンの大量注文はテーブルの上に乗り切らないと思っていたのに、グレンは運ばれてきた先から流し込むように食べ始め、「料理が乗らない!」なんてことにはならなかった。
 ここの料理も味が濃く、ミカニアの宿で食べたものより大ざっぱな味付け。私は半分も食べられなかったけど、例のごとくグレンが食べてくれた。

「よう! あんちゃん、よく食べるなー! これもウマいぞ!」
〈それはなんだ?〉
「アクラーフォンの煮込みだ!」

 グレンは絡んできた顔の赤いおじさんが差し出したお皿に、無遠慮にフォークを突っ込んだ。

〈ふむ。なかなかいけるな〉
「ガッハッハッ! だろー?」
「嬢ちゃんは少食なんだなー。そうだ! おーい! 旦那ぁ! 今日卸したやつひとつ剥いてくれー!」

 違うおじさんが私にも絡んできたと思ったら、キッチンに向かって大声を上げた。
 絡んできたおじさんを見てジルベルト君の瞳に剣呑な色が浮かび、「大丈夫だから」とフォローしておく。
 「はいよ!」と店員さんが持ってきたのは大きな赤い柑橘系のフルーツ。
 食べてみると、あっまーいグレープフルーツだった。

「ん゛~!!」
「そうか! ウマいか! ちゃんと食えよー!」

 おじさんは私が食べた顔を見て判断したらしい。甘くて美味しいので私は笑顔が抑えられない。

「なんだと!? てめぇ、このやろう! もっぺん言ってみろや!」
「何回でも言ってやるよ! オレの方がデケェだろうが!」

 お酒でも入っているのか冒険者同士でケンカを始めているし、グレンはさらにおじさん達からご飯を分けてもらっている。
 冒険者を冷やかすおじさん、構わずお酒のおかわりをするおじさん、女性冒険者をナンパしている冒険者、泣き上戸、笑い上戸……
 うん。実にカオス。
 こういう雰囲気は混ざれないけど、結構好きだったりする。

「ちょいと! 狭いんだからケンカするなら外でやっておくれよ! 宿の修理代を上乗せして請求するよ!?」

 ケンカをしていた冒険者に店員さんからカミナリが落ちた。
 お店が広ければケンカしてもいいのか……とちょっと思ってしまったことは内緒だ。
 おじさん達と冒険者達はまだまだ飲むらしく、私達は先においとまさせてもらう。
 ご飯代は金貨二枚。
 グレンさん……どんだけ食べたのよ……

 部屋に戻り、コテージのお風呂でゆっくりと疲れを取って眠りにつく。
 階下から盛り上がっている声がずっと聞こえていた。

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