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7章
信者の理詰め
グレン達が戻ってきたのは二時間ほどしてからだった。
待ってる間ヒマだったので、みんなのお皿は完成したよ。
みんなはネラースに持ってもらってたマジックバッグに、狩ったダチョウを回収してきたらしい。
〈逃げたやつも、他のやつも狩ってきた!〉
『殺ってやったっち!』
「ありがとう」
「褒めて! 褒めて!」と言わんばかりにみんな報告してくれた。
ご飯が途中だったけど、暴れてきたからかスッキリした顔をしている。
◇
戻ってきたネラース達に再び乗せてもらって、山を降りていく。
《ちょっと待って。ダンジョンの近くに誰かいるわ》
「……ホントだ。サブマスに人近づけるなって言ったよ?」
《こっそり近付いて確認しましょ》
プルトンが教えてくれたけど、私は集中しないとわからなかった。
みんなで気配を殺して近付いていく。
《(あ! あれ、山の中でセナちゃんをストーカーしてた貴族よ!)》
「(えぇ!? あれが?)」
ダンジョンの前のオークが溢れていた場所にいたのは、少年と執事の青年だった。
少年は貴族だと思えないほど土まみれで、隣りに立っている執事も少年ほどじゃないけど土で汚れていた。
プルトンが《会話が聞こえないわね》と言うと、ネラースが風魔法で音が聞こえるように風向きを調節してくれた。
「本当にここに…………のか?」
「は……街で調べ…………で、依頼…………ダンジョ……」
中途半端にしか聞こえないよ! 今度私も練習しよう……
とりあえずわかったのは、街で調べ、何か目的があってここへきたらしいこと。
『(依頼って言ってたわ。主様が受けた指名依頼のことじゃない?)』
「(でもアレって、討伐隊組む前でしょ? 私達誰にも言ってないし、部屋は結界張ってたし……さっきダンジョンみたいなこと言ってたよね?)」
「(つまり、内部からの情報漏洩ですね)」
『(あ! アイツらダンジョンに入って行ったわよ!)』
クラオルの声で顔を向けると、既にダンジョンに入ったらしく、広場からいなくなっていた。
「他に人の気配しないけど、あの子と執事の二人でダンジョン攻略できるのかね?」
「サブマスには“誰も近付けさせるな。命の保証はしない”と伝えましたので、セナ様は相手になさらなくてよろしいかと思います」
『そうよ。自己責任だわ』
〈うむ。セナを狙うヤツなど放っておけばいい〉
《気になるならギルドに責任を持ってもらえばいいのではないか?》
「そっか。そうしよう!」
それならばと急いで戻ることにした。
◇
街に着いて冒険者ギルドに向かうと、あの貴族の馬車がギルド横の馬車置き場に停まっていた。
ギルドに入りサブマスを呼んでもらうと、なぜか機嫌の悪いギルマスと共に応接室に現れた。
「待たせた」
「報告の前に、セナ様があの場所には誰も近付かせないでと注意しておいたはずですよね?」
「あぁ」
「では、なぜ貴族と思わしき少年と執事らしき若い男性がいたのでしょうか?」
「なんだと?」
サブマスは知らなかったみたいだけど、実際いたしね。ジルが話したいって言ってたのは怒ってたのね……
「そいつらはどうした?」
「ダンジョンに入って行きました」
「なんだと! 助けに向かわず見捨てたのかっ!?」
「セナ様はどんな人物であろうと近付かせるなと言っていたと先程も説明致しました。あなたの耳は飾りですか? 黙っていてください」
「なんだとっ!」
ギルマスがドンッとテーブルを叩き、私達を睨みつける。
「彼らはダンジョンのことを知っている口ぶりでした。僕達はあなた方に30匹だと虚偽の報告を受け、討伐に向かったあの日から、今日この時間まで街には戻ってきていません。なぜダンジョンのことを知っているのでしょうか? 公表したのですか? なぜダンジョンに容易く近付けたのでしょうか? 説明していただけますよね?」
ジルは無表情で淡々と話しているけど、怒っているのが伝わってくる。
「そんなことより、なぜ助けてやらなかった!」
「なぜ? なぜギルドのミスの尻拭いをセナ様がしなければならないのですか? あなた方が情報を漏らし、安易に近付かせたことが原因でしょう。そもそもあの時点ではダンジョンだと確定しておりません」
「そんなことっ」
「そんなこと? あなたはご自分の責任を棚に上げるつもりですか? セナ様が場所をお聴きしたときにもあなたのワガママを聞き、道中では自分の力も把握できずに見栄を張り、100匹以上のオークを前にロクな状況判断もできず、足元はフラフラで足を引っ張り、手も足も出ず気絶。あなたがここにいられるのはセナ様が助けたからです。30匹程度のオークを倒すための冒険者ならば大怪我ないしは死んでいます」
「陛下が強いと言っていた……」
「ハッ。笑わせないでください。セナ様の実力も疑っていたではありませんか」
〈見栄とプライドだけはいっちょ前だな〉
笑わせないでって言ってるのに、全く笑えてないよ! 能面復活しちゃってるよ!
ジルの事実口撃にギルマスはギュッと唇を噛み、グレンを睨みつけている。
「えっと、とりあえず強い人向かわせたらどうですか? そろそろ日も暮れるし。その少年が乗っていた馬車がギルドの馬車置き場にあったので、調べれば誰かもわかると思いますよ」
「いや、今から普通の冒険者には向かわせられない。助けに向かう冒険者が危険だ。馬車については情報感謝する」
「見捨てるのかっ!?」
助けに向かうなら早い方がいいだろうと話に割り込むと、サブマスが首を振りながら否定した。
それもそうかと思ったけど、ギルマスは感情的になっていて状況判断ができないらしい。
「黙れ。相手が貴族だろうと関係ない。冒険者も雇わずたった二人でダンジョンに入るなんて、ロクな貴族じゃないことくらいお前にもわかるだろ。あの岩山を暗闇の中進むなんぞ危険極まりない。適切な判断をしなければ助けに向かう冒険者が死ぬ。それにオレはあの人以外、お前にしかダンジョンだと説明していない」
「わたしのせいだと言うのか!」
サブマスが説明している内容を聞いてはいるけど、納得はできないらしい。
サブマスの言い方だとギルマスが情報を漏らしたっぽい。本当のところはわからないけど。
「あそこは普段ならばほとんど人が立ち入らない。余計な詮索をされないようにギルド員にすらオークの巣のことは公表されていない。それはお前も知っているだろ」
「だがっ「お黙りなさい」」
え……誰?
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