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8章
王都マルマロ
王都の近くは冒険者や馬車が多くてスピードが出せず、結局もう一泊野営をすることになった。
「わりぃが、邪魔するぞ」
私達が野営の準備をしていると、冒険者パーティがやってきて野営の準備を始めた。
少し離れた場所でも何組かまとまって野営をしていて、野営時に集まることはこの世界ではよくあることだとグレンが教えてくれた。そう言うグレンが警戒心丸出しだったけど……
シュグタイルハンの王都はとにかくデカい! 街を囲う塀も高く、塀の周りはお堀のように溝になっていた。
お昼少し前に門前に並んで審査を待ち、私達がギルドカードを見せるとすぐに門付属の別室に案内された。
「お待ちしておりました。陛下より、セナ様のご希望の宿に案内するように仰せつかっております!」
アーロンさんは以前「好きな宿に泊まればいい」と言っていたことを覚えていたらしい。
グレンは肉料理が美味しいところ、ジルは安全性の高いところ、私はそこまで高級じゃない宿で信頼できる人物が営んでいるところ、と私達の希望を伝えると、すぐに手配してくれた。
街の地図とこの街にあるダンジョンについて書かれた紙を受け取り、兵士さんの案内で宿に向かう。
道すがら兵士さんのオススメのご飯屋さんや武器・防具のお店や商会などを教えてもらった。
なんとこの王都にもタルゴー商会があるらしい。ただ、他にも商会があるため規模は小さいんだそう。
兵士さんは街の情報や王都の周りに出る魔物など、話題に事欠かない人だった。
私達が案内された宿は“憩い亭”という名前で、宿の主人はイペラーさんという女戦士の女傑のような人だった。
「セナ様、陛下より使いがくると思います。では、僕は失礼いたします。イペラー殿、よろしくお願いします」
「はいよー!」
兵士さんが戻り、私達は宿を案内してもらう。
「セナ様の部屋は五階だよ。この五階はセナ様の部屋だけだから、好きに使ってくれて構わない。ご飯は下で取ってもらいたいが、部屋で食べることもできるけどどうする?」
「下で大丈夫です。持ってくるの大変そうだし」
「ハッハッハ! 気を遣ってくれてありがとうよ。このベルを鳴らしてくれたら用件を聞きに伺う。何か質問はあるかい?」
特に思いつかないので、ご飯の時間だけ聞いて鍵を受け取った。
私達が泊まる五階より上はなく、五階も私達が泊まるこの部屋だけとなれば、この部屋はVIPルームのような扱いなんだと思う。
部屋は簡易キッチン、リビング、ダイニング、ベッドルームが二つ、ウォークインクローゼット、シャワールーム、トイレ、バルコニーと、かなり広かった。
ベッドルームが二つあるのはおそらく貴族と使用人と分かれているんだと思う。
ソファはふかふかで座り心地もバツグン。
《見たけど大丈夫そうよ!》
「プルトン、ありがとう」
〈なかなかだな〉
「バルコニーがあるのは初めてだね!」
バルコニーも広く、ここでBBQなんかもできそうだ。宿の周りはここまで建物が高くないので見渡せるし、諜報員でもなければ覗かれる心配はない。
日課のストレッチはここでやろうかな。
とりあえずお昼ご飯を食べようと下に降りて、イペラーさんに鍵を渡すと「夜ご飯までには帰ってくるんだよ」とお母さんのように言われてしまった。
「賑わってるねぇー。街の人も強そうなのは気のせいかな?」
街を行き来する人も、お店の店員さんもみんなガタイがいい。スレンダーな人は冒険者にチラホラいる程度だった。
「シュグタイルハンは強さが一番ですので、住人も鍛えているのかもしれません」
「なるほど。獣族も多いんだね」
「それも強さによるものでしょう」
〈セナ、どっちだ?〉
「んとね、あっちー」
人が多く弾き飛ばされそうだと心配してくれたグレンの腕の中で、地図を広げて確認する。
「ご飯食べたらどうしようか? ジルは何か欲しいものとかある?」
「可能でしたら、新しい茶葉がないかを見に行きたいです」
「じゃあ、タルゴー商会行ってみようか? せっかくタルゴーさんにカードもらったし」
タルゴーさんのところなら話しも聞いてくれそうだしね!
ジルと話しながら進んでいると、兵士や冒険者が多いエリアに入っていた。女性は冒険者しかおらず、道行く人はほぼ男性だ。
兵士のお兄さんオススメの食堂は、お昼すぎだからかガラガラに空いていてすぐに入れた。
無愛想なオジサンに案内してもらい、メニューを見せてもらう。
「私オススメー。グレンとジルは?」
〈コレとコレで悩んでる〉
「僕はこちらでもよろしいでしょうか?」
「もちろん! 好きなの食べなきゃ。グレンは悩んでるなら両方頼んじゃえば?」
私が案を出すと、グレンの顔がパッと輝いた。いいと言われるとは思ってなかったらしい。
ニャーベルの街ではいっぱい頼んでたのにと笑ってしまった。
ジルがまとめて頼んでくれると、頼んでいない果実水が運ばれてきた。
「サービスだ」
「いいんですか? ありがとうございます!」
「おっ、おう」
笑顔でお礼を言うと、顔を真っ赤にしてそそくさといなくなってしまった。
一応念の為鑑定をかけてから飲んでみる。
「ん~! 甘いのにさっぱりして美味しい!」
甘さはオレンジでレモンのようにさっぱりとしていた果実水はゴクゴク飲めてしまった。
自分で思っていたよりも喉が渇いていたらしい。
みんなも飲むか聞いて、追加でお願いした。
料理が運ばれてきたときにこの果実水のことを聞いてみると、最近発見されたシネンシスという果実にレモン果汁を加えたオジサンのオリジナル果実水だったらしい。これは大量購入決定だ!入れ物持参して頼もう。
料理は味が濃いめだったけど、野菜がいっぱい入っていて私は大満足。やっぱり量が多くてグレンとジルにお願いしちゃったけど。
グレンが頼んだお肉も、ジルが頼んだ炒め物も美味しかったらしい。
オジサンに「また来るね!」と伝えてお店を出た。
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