文字の大きさ
大
中
小
130 / 500
8章
王都マルマロ
王都の近くは冒険者や馬車が多くてスピードが出せず、結局もう一泊野営をすることになった。
「わりぃが、邪魔するぞ」
私達が野営の準備をしていると、冒険者パーティがやってきて野営の準備を始めた。
少し離れた場所でも何組かまとまって野営をしていて、野営時に集まることはこの世界ではよくあることだとグレンが教えてくれた。そう言うグレンが警戒心丸出しだったけど……
シュグタイルハンの王都はとにかくデカい! 街を囲う塀も高く、塀の周りはお堀のように溝になっていた。
お昼少し前に門前に並んで審査を待ち、私達がギルドカードを見せるとすぐに門付属の別室に案内された。
「お待ちしておりました。陛下より、セナ様のご希望の宿に案内するように仰せつかっております!」
アーロンさんは以前「好きな宿に泊まればいい」と言っていたことを覚えていたらしい。
グレンは肉料理が美味しいところ、ジルは安全性の高いところ、私はそこまで高級じゃない宿で信頼できる人物が営んでいるところ、と私達の希望を伝えると、すぐに手配してくれた。
街の地図とこの街にあるダンジョンについて書かれた紙を受け取り、兵士さんの案内で宿に向かう。
道すがら兵士さんのオススメのご飯屋さんや武器・防具のお店や商会などを教えてもらった。
なんとこの王都にもタルゴー商会があるらしい。ただ、他にも商会があるため規模は小さいんだそう。
兵士さんは街の情報や王都の周りに出る魔物など、話題に事欠かない人だった。
私達が案内された宿は“憩い亭”という名前で、宿の主人はイペラーさんという女戦士の女傑のような人だった。
「セナ様、陛下より使いがくると思います。では、僕は失礼いたします。イペラー殿、よろしくお願いします」
「はいよー!」
兵士さんが戻り、私達は宿を案内してもらう。
「セナ様の部屋は五階だよ。この五階はセナ様の部屋だけだから、好きに使ってくれて構わない。ご飯は下で取ってもらいたいが、部屋で食べることもできるけどどうする?」
「下で大丈夫です。持ってくるの大変そうだし」
「ハッハッハ! 気を遣ってくれてありがとうよ。このベルを鳴らしてくれたら用件を聞きに伺う。何か質問はあるかい?」
特に思いつかないので、ご飯の時間だけ聞いて鍵を受け取った。
私達が泊まる五階より上はなく、五階も私達が泊まるこの部屋だけとなれば、この部屋はVIPルームのような扱いなんだと思う。
部屋は簡易キッチン、リビング、ダイニング、ベッドルームが二つ、ウォークインクローゼット、シャワールーム、トイレ、バルコニーと、かなり広かった。
ベッドルームが二つあるのはおそらく貴族と使用人と分かれているんだと思う。
ソファはふかふかで座り心地もバツグン。
《見たけど大丈夫そうよ!》
「プルトン、ありがとう」
〈なかなかだな〉
「バルコニーがあるのは初めてだね!」
バルコニーも広く、ここでBBQなんかもできそうだ。宿の周りはここまで建物が高くないので見渡せるし、諜報員でもなければ覗かれる心配はない。
日課のストレッチはここでやろうかな。
とりあえずお昼ご飯を食べようと下に降りて、イペラーさんに鍵を渡すと「夜ご飯までには帰ってくるんだよ」とお母さんのように言われてしまった。
「賑わってるねぇー。街の人も強そうなのは気のせいかな?」
街を行き来する人も、お店の店員さんもみんなガタイがいい。スレンダーな人は冒険者にチラホラいる程度だった。
「シュグタイルハンは強さが一番ですので、住人も鍛えているのかもしれません」
「なるほど。獣族も多いんだね」
「それも強さによるものでしょう」
〈セナ、どっちだ?〉
「んとね、あっちー」
人が多く弾き飛ばされそうだと心配してくれたグレンの腕の中で、地図を広げて確認する。
「ご飯食べたらどうしようか? ジルは何か欲しいものとかある?」
「可能でしたら、新しい茶葉がないかを見に行きたいです」
「じゃあ、タルゴー商会行ってみようか? せっかくタルゴーさんにカードもらったし」
タルゴーさんのところなら話しも聞いてくれそうだしね!
ジルと話しながら進んでいると、兵士や冒険者が多いエリアに入っていた。女性は冒険者しかおらず、道行く人はほぼ男性だ。
兵士のお兄さんオススメの食堂は、お昼すぎだからかガラガラに空いていてすぐに入れた。
無愛想なオジサンに案内してもらい、メニューを見せてもらう。
「私オススメー。グレンとジルは?」
〈コレとコレで悩んでる〉
「僕はこちらでもよろしいでしょうか?」
「もちろん! 好きなの食べなきゃ。グレンは悩んでるなら両方頼んじゃえば?」
私が案を出すと、グレンの顔がパッと輝いた。いいと言われるとは思ってなかったらしい。
ニャーベルの街ではいっぱい頼んでたのにと笑ってしまった。
ジルがまとめて頼んでくれると、頼んでいない果実水が運ばれてきた。
「サービスだ」
「いいんですか? ありがとうございます!」
「おっ、おう」
笑顔でお礼を言うと、顔を真っ赤にしてそそくさといなくなってしまった。
一応念の為鑑定をかけてから飲んでみる。
「ん~! 甘いのにさっぱりして美味しい!」
甘さはオレンジでレモンのようにさっぱりとしていた果実水はゴクゴク飲めてしまった。
自分で思っていたよりも喉が渇いていたらしい。
みんなも飲むか聞いて、追加でお願いした。
料理が運ばれてきたときにこの果実水のことを聞いてみると、最近発見されたシネンシスという果実にレモン果汁を加えたオジサンのオリジナル果実水だったらしい。これは大量購入決定だ!入れ物持参して頼もう。
料理は味が濃いめだったけど、野菜がいっぱい入っていて私は大満足。やっぱり量が多くてグレンとジルにお願いしちゃったけど。
グレンが頼んだお肉も、ジルが頼んだ炒め物も美味しかったらしい。
オジサンに「また来るね!」と伝えてお店を出た。
感想 1,821
あなたにおすすめの小説
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
由香神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
お飾り継母のはずでしたが、冷酷侯爵家の幼女たちが離してくれません
五十嵐紫義母と異母妹に虐げられながら生きてきた子爵令嬢セシリアは、ある日突然、“氷の侯爵”と恐れられる辺境侯爵レオンハルトへ嫁ぐことになる。
それは愛のない政略結婚——のはずだった。
けれど侯爵家で待っていたのは、冷たい侯爵ではなく、母を亡くして寂しさを抱えた幼い姉妹だった。
「……おかあさま、いなくならない?」
夜泣きをする次女ミーナ。
無理に大人びようとする長女リリア。
セシリアは戸惑いながらも、温かな食事を作り、小さな手を握り、少しずつ姉妹との距離を縮めていく。
やがて冷え切っていた侯爵家に、笑顔とぬくもりが戻り始める。
しかしその裏では、亡き前妻の死にまつわる秘密と、侯爵家を狙う陰謀が静かに動き出していた——。
これは、“お飾りの継母”として嫁いだ女性が、不器用な侯爵と幼い姉妹に愛されながら、本当の家族になっていく物語。
悪役令嬢の幼女時代に戻ったので、お兄様を救います ~断罪回避より家族優先です!~
由香断罪され、すべてを失った悪役令嬢ルシア。
死んだはずの彼女が目を覚ますと、そこは五歳の頃の世界だった。
今度こそ病弱なお兄様を救い、家族の破滅を回避したい!
幼女になった元悪役令嬢が、前世の知識を武器に運命へ立ち向かう家族愛たっぷりの逆行ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
最強の魔王ですが、転生したら公爵家の愛され幼女でした ~平和に暮らしたいだけなのに、家族も王子様も聖獣も過保護すぎます~
由香かつて世界を統べた最強の魔王。
長き眠りの果てに目覚めると、公爵家の五歳の令嬢リリアーナへと転生していた。
今度こそ平穏な人生を送ろうと決めたのに、父も母も兄たちも超過保護。
さらには王子や聖獣まで集まり始めて……?
本人は世界最強なのに、なぜかみんなに守られてばかり。
愛され幼女が巻き起こす、勘違いだらけのほのぼのファンタジー!
旦那様には好きな人がいる
えくれあ私の旦那様である、テオドール・セルヴァン侯爵様には好きな人がいる。
それは、幼馴染であり、王太子妃でもあるマチルダ様だ。
お二人は、いつもとても仲睦まじいご様子で、そんな叶わぬお二人の恋をそっと見守るのが私の日常だった。
そんなある日、夜会にめったに顔を出さない王太子殿下に、ダンスに誘われて。それがきっかけで、私の日常は少しずつ変化し始めた。