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8章
気分はお祭り【3】
ガイ兄が浴衣になると、イグ姐やパパ達も指パッチンで浴衣姿になり、お互いに見せ合っている。
神様は服も指パッチンで変えられるのかと思って眺めていると、イグ姐に呼ばれた。
「セナ、ちとこっちへ」
「どうしたの?」
「ハナビを想像するのじゃ」
私を抱っこして、おでことおでこをこっつんこしながらイグ姐に言われた。
想像しろと言われると、思い出すのは日本有数の花火大会。大輪の花が夜空に咲き誇る所謂尺玉、柳、千輪菊、ナイアガラと想像していく。
「面白いのぅ! もうよいぞ」
イグ姐の声で閉じていた目を開くと、ワクワクした様子のイグ姐の笑顔のドアップが視界いっぱいに広がった。
「セナは驚いた顔も可愛いの」
イグ姐は私の額、頬、髪の毛にチュッチュとキスを落としていく。
会う度にスキンシップが激しくなっている気がする。
相当ストレスが溜まっているのかもしれない。大丈夫かな?
「あ! そうだ! ダンジョンでね、新しいスライムの核手に入れたからいろいろ作ったんだよ」
「ほう! 妾達に見せてくれるかの?」
「うん! 前に報告しようと思ったんだけど、ちょっと忘れちゃってた。ごめんね?」
イグ姐は謝る私に再びキスを落とし、イスの上に座らせてくれた。
「ずっと気になっていたんだけど、この入れ物かな?」
「うん! これはプラプラスライムの核から作ったの」
お好み焼きを入れていたプラスチック容器を指さしているガイ兄に教えてあげる。
テーブルの上を片付けてから、スライムダンジョンで手に入ったスライムの核をテーブルの上に出すと、パパ達も興味深そうに見ていた。
「何作ったんだ?」
「んとね、いっぱい作ったんだー。まずは~……」
ノーマルなスライムの核から作ったミルクプリンを出すと、全員に食べていいのかと聞かれたので全員分出した。作り置きしておいて良かった……
みんなが食べている間に、テーブルの上に作ったものを広げていく。
「んぐっ。セナさんこれはなんですか?」
「これは保冷剤だよ。凍らせると、時間をかけて溶けていくから冷たさが長持ちするの。熱が出たときとか氷枕としても使えるし、暑いときとかは冷たくて気持ちいいよ」
「これはなんじゃ?」
「それは……」
順番に全ての説明をしていくと、イグ姐が特に食い付いたのはクレイスライムの核だった。泥パックに惹かれたらしい。
「これが一番需要がありそうだね」とガイ兄が手に取ったのはサンドスライムの核から作った中敷き。
ブーツの中に入れたら蒸れないんじゃないかな? と思って作ったんだけど、私のブーツはパパ達の付与で蒸れないから効果が確かめられなかったやつだ。
「それ、ちゃんと効果があるのかわからないよ?」
「大丈夫だと思うよ。よく、足の痒みが治りますようにと教会に祈りにくる人がいるからね。たぶん発売したら爆発的に売れるんじゃないかな?」
「もしかして騎士団とか兵士さん?」
「そうだね。でも冒険者にも多いよ」
「な、なるほど……」
(この世界にも水虫が存在するのか……伝染されたくないな……)
「セナさんが想像しているのとは少し違うかな? 人に感染したりはしないから安心して」
「そうなの? 良かった……」
「乾燥したら治まるからね。そうだな……“あせも”みたいな感じかな?」
「なるほど。治るけど、また発症するのね」
売るとしたらタルゴー商会か、デタリョ商会だろうなぁ……タルゴーさんは私のせいで忙しそうだから、ちょっと悩む。
「この核はまたもらっても大丈夫かな?」
「うん。もちろん! いっぱいあるから大丈夫だよ」
パパ達四人に各核を一つずつ渡すと、「ポイズンスライムの核でわかったことがある」とアクエスパパが教えてくれた。
ポイズンスライムの核は、中に込められている魔力が消費され尽くしたら、倒した後の核のように灰色になって使えなくなるらしい。ただ上手く使えばそこそこ長く使えるんだそう。
偶然かはわからないけど、私が使っているスライムの核はいまだに使えている。
パパ達いわく、「セナは無意識に上手く使っているんだろう」とのことだった。
「セナがいろいろと作ったことも考えて、おそらくドロップ品の下位互換だな」
「やっぱそうなんだ」
「あぁ。だが、使い方次第では同等にもなるから一概には言えなさそうだ。まさかこんなにセナがいろいろ作っているとは思わなかった」
アクエスパパが笑いながら私が作った実験結果を見ながら言う。
「まさかスライムを食べる日がくるとはの。ほんにセナは面白い!」
「それって褒めてる?」
「もちろんじゃ! スライムは多いからの。きっとこの先もセナの気に入るやつも出てくるじゃろ」
スライムは何種類いるのか聞いてみると、環境によって進化するためパパ達でも把握できていないらしい。以前グレンが言っていた通りだった。
「そういえばお仕事は大丈夫なの?」
「今日は大丈夫です! 明日からまた少し忙しくなりそうですが……」
「もしかして、私と会うために無理してくれた?」
無理させてしまったかと心配になって聞くと、「僕達がセナさんに会いたかったんです!」とエアリルパパが言ってくれた。
そうだ……パパ達は私に激甘だった……たぶん無理したんだな……少しでもパパ達がお仕事頑張れるようにご飯の差し入れをしてあげよう!
◇
「ふむ。そろそろいい頃合いかの?」
「そうだね。せっかくならキヒターも呼んであげようか」
イグ姐とガイ兄が話している内容がよくわからなくて、私は首を傾げた。
ガイ兄が指パッチンをすると、ジョウロらしき物を持ったキヒターが私達のいるガゼボの前に現れる。
「へ!? あ! 女神様! と、神様!」
「ふふっ。私達はオマケだね」
「わぁー! 女神様の衣装初めて見ました! とってもキレイです!」
「ふむ。妾達は完全にオマケじゃの」
キヒターの反応にイグ姐とガイ兄が苦笑いしていて、ちょっと申し訳なくなった。
ガイ兄がせっかく呼んでくれたのでキヒターにも作った浴衣を着させてあげる。帯はウェヌスとエルミスがやってくれた。
エルミスもすぐ覚えてくれたけど、一回見せただけで覚えちゃうウェヌスもすごい。
ガゼボの草原にいる全員が浴衣姿。キヒターは「女神様とお揃いっ!」と語尾に音符のマークが付きそうなくらい喜んでくれている。
「あ! そうだ! みんな出てきてー」
私が影に向かって言うと、ネラース達はすぐに出てきてちょこんとおすわりしてくれた。
クゥッ……可愛い!
「あのね、みんなとお揃いでいつも身に付けられるモノ作ったの」
『『『『!?』』』』
『それワタシ達も?』
「うん! ここにいる全員のだよ」
『ほんとですか?』
心配そうに聞いてくるクラオルとグレウスを撫でながら「そうだよ」と返すと二人とも嬉しそうに体を擦り寄せてくる。
「みんなを驚かせたかったからね。エルミスとポラルは巻き込んじゃったんだけど。まずはクラオルからね」
クラオルの腕に作った私のイニシャルブレスレットを「いつもありがとう」と付けてあげると、腕を持ち上げて『わぁ~』と見つめ始めた。
特にデザインは疑問に思わないらしい。
グレウス、エルミス、プルトン……と全員の腕に付けて、動きが邪魔にならないか確かめてもらう。
ネラース達には小さいサイズから巨大サイズまで大きさを変えてもらって、付け心地を確認してもらった。
自動サイズ調整の付与がちゃんと機能したらしく、問題はないらしい。浴衣のベストも気に入ってもらえたみたい。
「大丈夫そうで良かった。最後はパパ達ね」
「僕達のもあるんですか!?」
「うん。いらなかった?」
「とんでもない! とっても嬉しいです!」
「えへへ。良かった」
私が立っている場所に素早く寄ってきたパパ達にも順番に付けていく。
「これはあっちの文字だね?」
「うん。私のイニシャルだよ」
「いいね。セナさんと繋がっている感じがする」
ガイ兄の呟きがどういう意味かわからないけど、喜んでくれているみたいだから気にしなくてもいいかな? 悪い意味じゃなさそうだし。
「気分も上昇したことじゃし、やるかの!」
「そしたらみんなはここに座ってくれるかな?」
気合い充分のイグ姐と、草原に大きな敷物を用意するガイ兄。
私達が座ったのを確認すると、パパ達四人は手を高く挙げ同じタイミングで指を鳴らした。
瞬間――草原は暗闇に支配された。
再び指を鳴らす音が聞こえると、ポンッポンッと提灯のような柔らかな光が空に浮かび上がった。
「おぉっ」
「お楽しみはこれからじゃ」
ニヤリとイグ姐が私に笑いかけ、パチンッパチンッと両手で指を鳴らす。
――――ヒューー……ドンッ!
「おおおおお! 打ち上げ花火だー!」
一発、二発と夜空に大輪の打ち上げ花火が咲いていく。
前の人生でも久しく見ていなかった打ち上げ花火に私の目は釘付け。
「ふふっ。成功だね」
「目が輝いておるの」
「喜んでくれましたね」
「あぁ。それにしても花火はキレイだな」
パパ達の会話が聞こえていたけど、特等席で見る花火が美しすぎて私は言葉にならなかった。
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