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7章
増える信者
◇
買い物とお昼ご飯を済ませて、プルトンがあの子供がいないかをチェックしてくれた後ギルドに入ると、ニコニコと笑顔を振りまくお兄さんに迎えられた。
「お待ちしてました。グレン様の解体の腕は素晴らしいですね! 魔物大量発生だとお聞きしていたので、損傷の激しいものが出されるかと思っていたんです。ギルマスには丁寧に解体しろと言われていて、ドキドキだったんですよー。しかし! 我々を気遣っていただき、解体されたモノも腕もいい。オーク肉を氷のテーブルに出すなど扱いも繊細で、我々も見習わなければならないと話しておりました」
「そうなんですね」
応接室に案内されている間に、お兄さんが説明してくれた。
つまり、グロいオークを解体しなくて済み、素材の質がいいからあんなに喜んでたのか。謎が解けたわ。
応接室ではギルマス親子とサブマスが既に待っていてくれた。
「大変申し訳ございませんでしたっ!」
「どうぞおすわり下さい」
私達が応接室に入るなり、娘が土下座になって私達はビックリ仰天。
しかも母親ギルマスは娘を放置して、私達にソファを勧めてきた。
「ええっと……」
「セナ様はお気になさらずとも大丈夫です」
いや、気にするなって無理でしょ。
「とりあえず、娘さんもソファに座りましょうか」
「本当に慈悲深いお方だったのだな……」
はい? 王様とか貴族ならいざ知らず、普通の人は目の前の土下座をスルーはできないと思うよ?
さすがの私もそこまで図太くはない。
全員が座ると、母親ギルマスから「こちらが当ギルドの買い取り金額になります」と一覧表を渡された。
「素晴らしい品の数々でした」
「そうですか」
チェックすると、あのしょっぼい微々弱魔道具と真珠が意外にも高かった。
真珠もクラオルに言われて劣悪品中心に出したんだけど……
それ以外は全体的に少し高いくらいで、特に間違いもなかったので了承して大量の金貨が入った袋を受け取った。
エメラルドとまだ使えそうな魔道具類は、みんなに言われて売り物リストには載せていない。
もちろん使える蜂蜜やフンコロガシのフンや黒真珠も。
載せていたなら買い取り金額はいくらになったんだろうか……いや。買い取ってすらもらえないかもしれない。
「大変申し訳ございませんでした! セナ様の言う通り、鍛えることに致しました!」
私達の精算が終わった瞬間に娘がガバッと頭を下げた。
「セナ様は迷惑をかけたわたしにもずっと優しかった。その……漏らしてしまったときもわたしのことを気遣ってくれた。そこでようやく冷静になれたんだ。セナ様を慕いたい気持ちがわかった。セナ様に言われた言葉を昨日一日考えたんだ……セナ様は正義感は立派だと、心と身体を鍛えるべきだと。だから鍛えたいと思う」
「あぁ……えっと……頑張ってください?」
最後が疑問系になってしまったのは仕方ないと思う。だって私は「正義感だけは立派」って言ったんだもん。
ものすごくポジティブに捉えられているらしい。
〈付いてこようなどと思うなよ?〉
「えぇ、本当に。この愚女までも気遣って頂けるなんて、ジルベルト様がセナ様を女神様のようだと仰る意味がわかりました。付いて行ったところで邪魔にしかならないでしょう」
「ぐぅっ……しかしっ、強くなったあかつきには……」
いや、ご勘弁願いたい。私には秘密が多すぎる。酔っ払ったあげくに情報漏洩をするような人とはなるべく関わりたくない。
「私は大した人間じゃないですし、付いてこられても困ります。あなたの周りには素敵な人が多いんですから、私ではなくギルマスとサブマスを見習った方がいいと思いますよ。まずは初心に返って冒険者として経験を積むべきでは?」
「私達を素敵なんて……やはりお優しいのですね」
いや、違うよ! 押し付けてるだけだよ! ごめんね!
そんなことは言えないので、微笑むに留めておいた。
「そういえば怪鳥は狩ったのか?」
「えぇ。狩りましたね。その帰りにあの少年を見つけたので」
「そうか……売ってもらいたいが可能か?」
肉は食べたいし、骨は鶏ガラスープとして使いたい。
グレンから〈売るのか? 売らないよな?〉と視線で訴えてくる。
「部位によりますね」
「肉は〈ダメだ〉」
サブマスに被せてグレンが拒否すると、「嘴や爪は?」と聞かれたので「大丈夫です」と答えた。
いくつ欲しいのか聞いてみると「そんなにあるのか!?」と驚かれた。
「えっと……三十はありますね」
「あの怪鳥を三十……」
ブチ切れたみんながダメにしちゃった素材もあるし、少ない数字を言ったんだけどそれでも多かったらしい。
「あの怪鳥はバラけて行動していて、生息する場所も場所ですので、一匹狩るのも大変なのです。それを三十もだなんて、さすがセナ様ですね」
「その情報行く前に教えて欲しかったです……」
うっとりとした表情で語るギルマスに、本音が漏れてしまった。
「すまん。言ってなかったな……買い取りした後だから……五匹分でもいいか?」
「いいですよ」
五匹分ってことは……嘴一に対して足の爪が四だよね? ちょっと自信ないから無限収納に「五匹分の嘴と爪」と念じながら出したものをテーブルの上に広げた。
良かった。合ってた。
「まぁーーーーーー! 怪鳥まで解体してあるのですね! しかも傷も見当たらないなんて!」
テンションの上がったギルマスの勢いに、私は乾いた笑いで誤魔化した。
サブマスがすぐに精算してくれ、再びお金の入った袋を受け取る。怪鳥の嘴と爪はそこそこいい値段だった。
「グレン様の解体の腕は素晴らしいです! ぜひうちのギルドの者にコツなどを教えていただきたいです!」
〈我はセナのためにしか動かん〉
「そう……ですよね。大変失礼いたしました」
これ以上ここにいたらボロが出ちゃいそうな私はさっさと退散するに限る。
挨拶もそこそこにギルドを後にした私は、その後応接室でどんな会話が繰り広げられていたのかを知る由もない。
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