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8章
オープンな王様
御者さんに「着きました」と言われて、ジルに手を支えてもらいながら馬車から降りた。
目の前にそびえ立つお城は大理石のような石材で作られていて、頑丈そうに見える。
「おぉー。キアーロ国より大きいね」
〈この国はキアーロ国より建国が古いからな〉
「王城の敷地内に闘技場などもあると聞いています」
「なるほど。さすが強さを優遇するお国柄だね」
緊張しているジルと手を繋いだままお城を見上げた。
その闘技場で戦えとか言われないように、先にクギ刺さないと。
「セナ様、お待ちしておりました。秘書官をしておりますリシクと申します。どうぞよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
リシクさんはメガネをかけた真面目そうな細身の女の子だった。髪の毛を緩くサイドでまとめていて、大きなリボンが目立っている。背が高いけど、顔の作りから日本で言えば高校生くらいだろうか?
タルゴー商会の支店長であるリシータさんと名前が似ているから気をつけないと……
「さ、アーロン様がうるさいので参りましょう」
リシクさんの案内で特に荷物チェックなどもされずにお城の中に入った。
お城の中は外観同様に大理石のような石材でできていた。
キアーロ国とは違って、ツボや絵画などは見当たらないけど、魔物の素材と思われる毛皮や骨、牙なんかと共に、大剣や大盾など武器や鎧が飾られていた。
「国民性が出てるね~」
『そうねぇ』
「ふふふ。そうですね。飾ってあるのは歴代の国王が使っていたと言われているものです」
小声だったのにリシクさんが反応してくれた。
二メートルはありそうな大盾を持って動き回れるくらい、昔の人は大きかったのか……
「こちらです。アーロン様、セナ様がご到着になられました」
リシクさんが扉の前でノックをすると「おー。入れ、入れ」とアーロンさんの声が聞こえた。
私達が部屋の中に入ると、部屋は執務室らしく、アーロンさんの他に二人ほど男性がいた。
「久しぶりだな! 待ってたぞ! 座れ、座れ」
私達がソファに座ると、正面にアーロンさんが座り、部屋にいた男性二人はアーロンさんの後ろに着いた。
私達を案内してくれたリシクさんは紅茶の準備をすると、続き部屋に入っていった。
「ミカニアとニャーベルの件礼を言う」
「ミカニア?」
「セナが水質改善とそれに伴った井戸掃除の案を出してくれたんだろ?」
領主から「お礼を言いたかったが、言う前に旅立ってしまった。我が使用人がご迷惑をおかけして申し訳ない」と連絡がきたらしい。
「あぁー。あの呼び出しはお礼だったのか……」
「あぁ、それで……」
「ゴホンッ!」
「ん? なんだ?」
「陛下。勝手に話し始めるのは構いませんが、せめて私共に挨拶させていただけませんか?」
「おぉー。悪い、悪い」
アーロンさんの話し途中で遮った男性が宰相、宰相の隣りで黙ってこちらを見ているのが暗部の人らしい。
宰相はレナードという名前で、ライオン族。ライオン族だけど、ケモ耳やしっぽはなく人族と変わらないから隠しているんだと思う。カチューシャのようなもので黄色っぽい金髪をオールバックに押さえつけているけど、髪質が硬いのか、毛先の方はツンツンしていて正にライオンっぽい。
暗部の人はドナルドという名前で蝙蝠族。目付きが鋭く、職業柄か髪の毛も服も黒っぽい。
暗部なのに姿を見せても大丈夫なのか聞いてみると、私には会わせておきたかったんだそう。
それでいいのか、隠密よ……
私達が簡潔に自己紹介をすると、ドナルドさんから鑑定をかけられた気配がした。今回は反射させずにニッコリと笑いかけると、決まり悪そうに目を逸らされた。
「この前一緒にいた人じゃないんだね」
「ん?」
「前にキアーロ国のパーティでアーロンさんを影で守ってた人だよ。あの人隠密でしょ?」
「ハッハッハ! 気が付いていたのか。さすがだな。あいつは今、冒険者ギルドと商業ギルドのギルマス達とセナが持っている素材の買い取りの話しをしている。後でくるから紹介しよう」
なるほど。だからギルマス達も一緒にお城にきたのか。
私が一人納得していると「話しを戻すぞ」と、アーロンさんが話し始めた。
「ミカニアの街もそうだが、国全体として井戸掃除は冒険者のペナルティとすることと、年に一度大掃除させることにした。常設依頼として出しておくことは変わらないがな」
「ふーん。いいんじゃない? リシクさん、ありがとうございます」
リシクさんが淹れてくれた紅茶を一口飲むと、リシクさんに「言葉遣い、気にされなくて大丈夫ですよ。陛下がコレですので」と言われた。
「それでセナにお礼をできなかったから、こちらからニャーベルの街の報奨と共に礼をしたいと思うが、何か希望はあるか?」
「うーん。王族の許可が必要なダンジョンとは別でしょ? スパイスも買っちゃったから特に思いつかないんだよね。何か新しい食材でもあれば別だけど」
「そうか……とりあえず報奨金を渡そう。レナード」
「はい」
リシクさんのコレ発言を気にしていないアーロンさんから指示を受けたレナードさんが、サービスワゴンを二台引っ張ってきた。二台のサービスワゴンには山盛りの袋が乗せられている。
「こちらが魔物大量発生の報奨金になりまして、コチラがダンジョン発見の報酬になります。詳細はこちらをご覧下さい」
「わーお」
レナードさんから受け取った紙には、目眩がしそうな金額が書かれていた。
さすがにウツボの三十億まではいかないけど、億は軽く超えてる。
またお金持ちになってしまった。
私こんなに大金持ってても使わないんだよね……
「そしてこちらがミカニアの街のお礼になります」
「ん? これは?」
お金の入った袋を全て回収したのを見計らってレナードさんが渡してくれたのは、キアーロ国でもらった王家のメダルに似ているものだった。こちらは赤茶色だけど。
「それはオレの国のメダルだ。キアーロでももらっただろ?」
「やっぱそうなんだ」
「立場をわきまえない貴族なんかにはそれ見せて叩きのめしていいぞ」
「えぇ……」
それって絡まれるの前提じゃない? 絡まれないように対策して欲しい……
私のジト目に気が付いたのか、「通達しておりますが、念の為です」とレナードさんに言われた。
「あと、約束のダンジョンの許可だな。これだ」
「ありがとう」
アーロンさんが渡してくれた紙には“許可証明書”と書かれていた。ダンジョンの許可についてつらつらと綴られていて、最後にアーロンさんのサインと押印がされていた。
「このダンジョンは、ここ王都の城から馬車で二日ほどだ。ただ、このダンジョンは成長ダンジョンらしい。オレが生まれる前ですら最奥には到達されていない。正確な階層すらわかっていない」
「なんで最奥にたどり着いてないのに成長ダンジョンってわかるの?」
「…………そう言われるとそうだな。なぜだ?」
アーロンさんが首を捻ると、ドナルドさんが「昔の文献を調べればいい」と呟いた。
当時の文献が残っているかはわからないけど、レナードさんとドナルドさんが調べてくれるらしい。
「ダンジョンに入るなら指名依頼にしよう。セナがダンジョンのものを持ち帰ってきたら国が買い取る。王家の許可が必要だから冒険者ギルドでは売れん」
「わかったー」
「中の魔物は手強いと聞くが、まぁ、セナなら大丈夫だろ」
「アーロンさんは入ったことないの?」
私が聞くと「ないな!」と堂々と返された。
なんでも、入れば強くなれると言われているけど、私達がキアーロ国でその話しをするまで存在すら忘れていたらしい。今回、私が許可をもらうにあたって、場所など調べてくれたんだそう。
アーロンさんが見た資料には、三百年以上前に入った人物が、入る前と入ったあとでは強さが明らかに違っていたんだそう。それに倣い冒険者がこぞってダンジョンに入ったけど、戻ってきたのは数人。その数人はとても強くなっていて、いろいろな意味で“危険”だと王家の許可制になったらしい。
「なるほどね。人の成長の強さの危惧と、ダンジョンの魔物の強さの懸念ってことか」
「セナ様はそこまで読み取れるのですか……」
「ん?」
なんかリシクさんにキラキラした瞳を向けられているけど、なんでそんな目をされるのかがわからない。
まぁいいかと、どんな魔物が出るのか聞いてみると、それは資料には載っていなかったらしい。
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