文字の大きさ
大
中
小
137 / 502
8章
オープンな王様
御者さんに「着きました」と言われて、ジルに手を支えてもらいながら馬車から降りた。
目の前にそびえ立つお城は大理石のような石材で作られていて、頑丈そうに見える。
「おぉー。キアーロ国より大きいね」
〈この国はキアーロ国より建国が古いからな〉
「王城の敷地内に闘技場などもあると聞いています」
「なるほど。さすが強さを優遇するお国柄だね」
緊張しているジルと手を繋いだままお城を見上げた。
その闘技場で戦えとか言われないように、先にクギ刺さないと。
「セナ様、お待ちしておりました。秘書官をしておりますリシクと申します。どうぞよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
リシクさんはメガネをかけた真面目そうな細身の女の子だった。髪の毛を緩くサイドでまとめていて、大きなリボンが目立っている。背が高いけど、顔の作りから日本で言えば高校生くらいだろうか?
タルゴー商会の支店長であるリシータさんと名前が似ているから気をつけないと……
「さ、アーロン様がうるさいので参りましょう」
リシクさんの案内で特に荷物チェックなどもされずにお城の中に入った。
お城の中は外観同様に大理石のような石材でできていた。
キアーロ国とは違って、ツボや絵画などは見当たらないけど、魔物の素材と思われる毛皮や骨、牙なんかと共に、大剣や大盾など武器や鎧が飾られていた。
「国民性が出てるね~」
『そうねぇ』
「ふふふ。そうですね。飾ってあるのは歴代の国王が使っていたと言われているものです」
小声だったのにリシクさんが反応してくれた。
二メートルはありそうな大盾を持って動き回れるくらい、昔の人は大きかったのか……
「こちらです。アーロン様、セナ様がご到着になられました」
リシクさんが扉の前でノックをすると「おー。入れ、入れ」とアーロンさんの声が聞こえた。
私達が部屋の中に入ると、部屋は執務室らしく、アーロンさんの他に二人ほど男性がいた。
「久しぶりだな! 待ってたぞ! 座れ、座れ」
私達がソファに座ると、正面にアーロンさんが座り、部屋にいた男性二人はアーロンさんの後ろに着いた。
私達を案内してくれたリシクさんは紅茶の準備をすると、続き部屋に入っていった。
「ミカニアとニャーベルの件礼を言う」
「ミカニア?」
「セナが水質改善とそれに伴った井戸掃除の案を出してくれたんだろ?」
領主から「お礼を言いたかったが、言う前に旅立ってしまった。我が使用人がご迷惑をおかけして申し訳ない」と連絡がきたらしい。
「あぁー。あの呼び出しはお礼だったのか……」
「あぁ、それで……」
「ゴホンッ!」
「ん? なんだ?」
「陛下。勝手に話し始めるのは構いませんが、せめて私共に挨拶させていただけませんか?」
「おぉー。悪い、悪い」
アーロンさんの話し途中で遮った男性が宰相、宰相の隣りで黙ってこちらを見ているのが暗部の人らしい。
宰相はレナードという名前で、ライオン族。ライオン族だけど、ケモ耳やしっぽはなく人族と変わらないから隠しているんだと思う。カチューシャのようなもので黄色っぽい金髪をオールバックに押さえつけているけど、髪質が硬いのか、毛先の方はツンツンしていて正にライオンっぽい。
暗部の人はドナルドという名前で蝙蝠族。目付きが鋭く、職業柄か髪の毛も服も黒っぽい。
暗部なのに姿を見せても大丈夫なのか聞いてみると、私には会わせておきたかったんだそう。
それでいいのか、隠密よ……
私達が簡潔に自己紹介をすると、ドナルドさんから鑑定をかけられた気配がした。今回は反射させずにニッコリと笑いかけると、決まり悪そうに目を逸らされた。
「この前一緒にいた人じゃないんだね」
「ん?」
「前にキアーロ国のパーティでアーロンさんを影で守ってた人だよ。あの人隠密でしょ?」
「ハッハッハ! 気が付いていたのか。さすがだな。あいつは今、冒険者ギルドと商業ギルドのギルマス達とセナが持っている素材の買い取りの話しをしている。後でくるから紹介しよう」
なるほど。だからギルマス達も一緒にお城にきたのか。
私が一人納得していると「話しを戻すぞ」と、アーロンさんが話し始めた。
「ミカニアの街もそうだが、国全体として井戸掃除は冒険者のペナルティとすることと、年に一度大掃除させることにした。常設依頼として出しておくことは変わらないがな」
「ふーん。いいんじゃない? リシクさん、ありがとうございます」
リシクさんが淹れてくれた紅茶を一口飲むと、リシクさんに「言葉遣い、気にされなくて大丈夫ですよ。陛下がコレですので」と言われた。
「それでセナにお礼をできなかったから、こちらからニャーベルの街の報奨と共に礼をしたいと思うが、何か希望はあるか?」
「うーん。王族の許可が必要なダンジョンとは別でしょ? スパイスも買っちゃったから特に思いつかないんだよね。何か新しい食材でもあれば別だけど」
「そうか……とりあえず報奨金を渡そう。レナード」
「はい」
リシクさんのコレ発言を気にしていないアーロンさんから指示を受けたレナードさんが、サービスワゴンを二台引っ張ってきた。二台のサービスワゴンには山盛りの袋が乗せられている。
「こちらが魔物大量発生の報奨金になりまして、コチラがダンジョン発見の報酬になります。詳細はこちらをご覧下さい」
「わーお」
レナードさんから受け取った紙には、目眩がしそうな金額が書かれていた。
さすがにウツボの三十億まではいかないけど、億は軽く超えてる。
またお金持ちになってしまった。
私こんなに大金持ってても使わないんだよね……
「そしてこちらがミカニアの街のお礼になります」
「ん? これは?」
お金の入った袋を全て回収したのを見計らってレナードさんが渡してくれたのは、キアーロ国でもらった王家のメダルに似ているものだった。こちらは赤茶色だけど。
「それはオレの国のメダルだ。キアーロでももらっただろ?」
「やっぱそうなんだ」
「立場をわきまえない貴族なんかにはそれ見せて叩きのめしていいぞ」
「えぇ……」
それって絡まれるの前提じゃない? 絡まれないように対策して欲しい……
私のジト目に気が付いたのか、「通達しておりますが、念の為です」とレナードさんに言われた。
「あと、約束のダンジョンの許可だな。これだ」
「ありがとう」
アーロンさんが渡してくれた紙には“許可証明書”と書かれていた。ダンジョンの許可についてつらつらと綴られていて、最後にアーロンさんのサインと押印がされていた。
「このダンジョンは、ここ王都の城から馬車で二日ほどだ。ただ、このダンジョンは成長ダンジョンらしい。オレが生まれる前ですら最奥には到達されていない。正確な階層すらわかっていない」
「なんで最奥にたどり着いてないのに成長ダンジョンってわかるの?」
「…………そう言われるとそうだな。なぜだ?」
アーロンさんが首を捻ると、ドナルドさんが「昔の文献を調べればいい」と呟いた。
当時の文献が残っているかはわからないけど、レナードさんとドナルドさんが調べてくれるらしい。
「ダンジョンに入るなら指名依頼にしよう。セナがダンジョンのものを持ち帰ってきたら国が買い取る。王家の許可が必要だから冒険者ギルドでは売れん」
「わかったー」
「中の魔物は手強いと聞くが、まぁ、セナなら大丈夫だろ」
「アーロンさんは入ったことないの?」
私が聞くと「ないな!」と堂々と返された。
なんでも、入れば強くなれると言われているけど、私達がキアーロ国でその話しをするまで存在すら忘れていたらしい。今回、私が許可をもらうにあたって、場所など調べてくれたんだそう。
アーロンさんが見た資料には、三百年以上前に入った人物が、入る前と入ったあとでは強さが明らかに違っていたんだそう。それに倣い冒険者がこぞってダンジョンに入ったけど、戻ってきたのは数人。その数人はとても強くなっていて、いろいろな意味で“危険”だと王家の許可制になったらしい。
「なるほどね。人の成長の強さの危惧と、ダンジョンの魔物の強さの懸念ってことか」
「セナ様はそこまで読み取れるのですか……」
「ん?」
なんかリシクさんにキラキラした瞳を向けられているけど、なんでそんな目をされるのかがわからない。
まぁいいかと、どんな魔物が出るのか聞いてみると、それは資料には載っていなかったらしい。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。