文字の大きさ
大
中
小
141 / 502
8章
ホットプレートの村
朝食を食べている最中にお城からのお迎えがきて驚いた。
迎えにくるとは言っていたけど、まさかこんなに早いとは思ってなかった。
迎えにきてくれたリシクさんいわく、冒険者ギルドと商業ギルドの買い取りの件についてもお城でやるんだそう。
「お食事中申し訳ありません」
「リシクさんのせいじゃないのはわかるから大丈夫だよ。食べ終わるまで待ってもらっちゃったし」
「ご迷惑だと言ったのですが、聞き入れてもらえませんでした」
アーロンさん強引なところがあるもんね。まぁ、それくらいじゃ私も怒ったりしないさ。多分だけど、“朝ごはん食べてなかったら城で食べればいい!”とか思ってそう。
お城に着くと、昨日とは違って応接室に案内された。
会議室のように広い部屋には、ドナルドさん以外とタルゴー商会の支店長であるリシータさんが集合していた。あれ? と不思議に思っていると、「彼は暗部の者なのであまり人前に出ないのです」とリシクさんが説明してくれた。昨日は挨拶どころか一緒にご飯も食べたのに……
私達がソファに座ると、待っていましたと言わんばかりにボンヘドさんがズイッと近付いてきた。
「ひとまずコチラを確認してもらえますカナ?」
渡された紙を見てみると、今回の買い取ってくれるものの一覧表だった。次いでグティーさんからも一覧表を、タルゴー商会のリシータさんからはタルゴーさんからの分厚い手紙を渡された。
ササッと一覧表を見たあと、それをジルに渡して確認してもらう。
「パッと見は計算間違いとかもないけど、ジルは気になるところある??」
「そうですね……この真珠について、いささか気になります。セナ様が預けたものは等級が異なるものですので、詳細を明記していただきたいです。この個数が全て良質のものとすれば安すぎると思います」
「ほう。さすがセナに忠誠を誓っただけのことはあるな」
「オォー! セナ様の従者は優秀ですネ! 今スグ書き足しマス!」
え……そうなの?
渡した良質ものって言っても、日本のイミテーション……いや。小さい子がお姫様ごっこをするときに使うオモチャみたいなモノだったハズ。形もまん丸ではなく歪なものを出していた。
それに、腐るほどある真珠を多少ぼったくられたとしても私は痛くも痒くもない。
っていうか、見るからにすごい上等の真珠はいったいいくらくらいになるんだろう……値段が付けられないとかありえそう。
「こちらの冒険者ギルドの方は素材の質を考えると少し安い気が致しますが、不備は見当たりません。ですが……魔道具は買い取らないのですね。それが少し意外です」
「あぁ。それはオレが買い取る予定なんだ」
「アーロンさんが?」
「あぁ。それにしてもセナはその早さで計算したのか?」
「え、うん。これくらいの計算なんてすぐできるでしょ?」
端数とか小数点とかあるワケじゃないし、単純なかけ算とたし算だもん。小学生でもできると思う。まぁ、ケタはおかしいけど。
「うむ。まぁ、セナだからな……とりあえず魔道具は国が買い取る」
「ふーん」
「こちらの金額をお確かめ下さい」
あんな弱々魔道具を買い取るなんてもの好きだよねー、と思いながらレナードさんに渡された紙を確認すると、ニャーベルの街の買い取り金額と差がなかった。
ジルもグレンも納得の金額だったのでレナードさんから魔道具代を受け取った。
ボンヘドさんが書類を書いてくれている間に、部屋に置いてある大きなテーブルの上に冒険者ギルドの一覧表に書いてあった物を出していく。
「ちょっと待ってくれ。これはこちらが想像していたより状態がいいものが多いぞ」
「だから最上級だと言ったではありませんか」
グティーさんの反応にジルが不満そうに呟いた。
今まで目安となる素材を出していたのに出さなかった私が悪いし、計算をし直すとなったらグティーさん達は大変だろう。面倒なことはちゃっちゃと終わらせたいし……
「面倒だからこの紙に書いてある金額でいいよ。これ以上膨れ上がったらギルドも大変でしょ?」
「いや、しかし……」
「気にするならさ、もし冒険者とか不快な人達が絡んできたときに手を貸してくれた方がありがたいよ。基本的に指名依頼とか断ってもらいたいし」
「それはもちろん……だがっ」
「ジルもグレンもそれでいいでしょ?」
二人共、私の意図を理解してくれたらしく頷いてくれたので「それでお願い」と話を打ち切らせてもらった。
ボンヘドさんが詳細を書き出した紙をジルに確認してもらって、私は商業ギルドの一覧表に書いてあるモノをテーブルの上に出した。
「これで全部だよ」
「ありがとうございマス。確かに受け取りましたヨ。ではコチラが商業ギルドからの代金でソッチが冒険者ギルドからの代金デス。そしてコチラが返品の真珠になります」
「はーい」
受け取った袋をそのまま無限収納にしまったら、買い取りの話は終了だ。
「では、先ほどのタルゴー殿からのお手紙を確認していただいてもよろしいでしょうか?」
レナードさんに促されて手紙を開いた。
リシータさんがこの部屋にいることで予想はしていたけど、やっぱりたこ焼き器とレシピ登録についてだった。
まさかシュグタイルハンの国王と知り合いなんて! という驚きが書き綴られているところから手紙は始まった。
ゲーノさんの屋台のラップサンドが好評でそれに伴ってホットプレートも売れているらしい。生産が追い付いていない状態で、ゲーノさん一人では無理だと人を雇って量産中。
ゲーノさんの村は今やホットプレートの工房村として発展していて、スライムのドロップ品をタルゴー商会が買い取ると冒険者ギルドで発表したため、スライムダンジョンにも人がたくさん訪れているらしい。
私達が訪れたときは宿屋とかもなかったけど、宿屋も建ち、食事処もできたんだとか。
そしてブラン団長達に頼んでいた通り、ピリクの街の管轄になったんだそう。
ゲーノさんが作っていたホットプレートもたこ焼き器もレシピとして登録してあるから、ここ王都でも作って構わない。私が望むならここ王都にも工房を作らせるから遠慮なく言って欲しい。
“そしてソイヤ村と取り引きを始めましたわ! セナ様は村を救った英雄ですのね! 村人から、またセナ様に会えるのを楽しみにしていると伝言されましたわ!”と締めくくられていた。
「おそらくこちらにきた手紙と似た内容が書いてあると思うが、セナが心配していた魔道具作りの許可が下りた。その職人については商業ギルドとタルゴー商会に頼もうと思う。それでセナにレシピを登録して欲しいんだが…………」
なんだか煮え切らない態度のアーロンさんに首を傾げる。
「昨日の夜メシの鍋も教えてもらいたいんだよ。あんな美味いもの初めて食った。昨日お嬢ちゃんが帰ったあとに料理人に問い詰められたんだ。あの液体はなんだ!? ってな」
「あぁー、なるほど」
言い淀むアーロンさんに代わってアーノルドさんが発言に納得した。
普段醤油に馴染みがないから余計だね。付け合わせにお味噌汁も作ってたし……
醤油と味噌はキアーロ国でブラン団長達にも教えたから構わないんだけど……
「ダメか?」
「うーん。いいんだけど、多分驚くんだよね。あと、材料に関しては注意事項もあるんだよ」
私が注意事項と言うと、部屋にいた全員がゴクリと唾を飲んだ。
「いや、そんなヤバい注意事項ではないから大丈夫だよ。私的にはタルゴーさんからも言われてたし、違う料理と便利道具のレシピを登録したかったんだけど……」
「違うレシピ?」
「うん。ここシュグタイルハンのダンジョンで手に入るものから作れるやつ」
「なんだと!?」
いきなりソファから立ち上がったアーロンさんに驚いて、ビクッと反応してしまった。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。