転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

文字の大きさ
179 / 533
8章

国王推奨レシピ【1】

しおりを挟む


「それはワタクシ達も気になりますナ!」
「も、もも、もしかして……」

 数日前に私が買い占めたことを思い出したのか、ガッチガチに緊張していたリシータさんが呟いた。

「リシータさんはわかると思うけど、あのときに買い占めたやつの一つだよ。タルゴーさんから新しいものを思い付いたらレシピ登録して欲しいって手紙に書いてあったんだよね。私が買い占めたからゾヌセアの街で買い取りを強化したらしいし」
「それはぜひ聞きたいな。登録したなら城での調理許可をもらおう」
「ここで作ってもいいけど、料理人さん達に説明しなきゃなんだよね?」
「はい」

 リシータさんには敬語で話していた気がするけど、アーロンさん達と一緒に話すとタメぐちになってしまった。リシータさん本人は気にしていなさそうなので、そのままにさせてもらおう。
 昨日と同じく厨房に向かう途中で、レナードさんに他の人の感想も聞きたいと相談すると、兵士の人から数人見繕ってくれることになった。

 厨房に着くと、料理人さん達は私を見て、握った右手で左胸をトントンと叩く仕草をする。

「これは国に伝わっている目上の方にする挨拶です」

 首を傾げているとレナードさんが説明してくれた。
 なるほど。敬礼みたいなものなのね。

「えっと……まず、昨日のすき焼きの説明からだね。ちょっと黒っぽい液体は割り下って言われているものなんだけど……見せた方が早いね」

 キッチンの作業台に割り下の材料を並べて説明していくと、案の定ショユの実に驚かれた。

「ふざけるな! 我々をバカにしてんのか! これは食いもんじゃねぇ!」

 料理人さんの一人が怒りながらにじり寄ってくる。
 グレンとジルがサッと私をかばうように前に出てくれた。

〈セナがわざわざ説明してやってるのに、大人しく話を聞くこともできないのか?〉
「ふざけてんのはそっちだろーが!」
「黙れ。こちらがお願いしている側だ。分をわきまえろ」

 アーロンさんがひと睨みすると、騒いでいた料理人さんは引き下がってくれた。納得していないらしく視線が突き刺さってくるけど、今はスルーさせてもらう。

「見た方が早いだろうから説明を続けるね。分量は……」

 説明をしながら割り下を作っていく。
 料理人さん達の様子を見ていると、つい先ほど怒鳴っていた料理人さんもメモを取っていた。私を睨む瞳の鋭さは変わらないのにそこは真面目らしい。

「昨日と同じ匂いだ……」

 誰かが呟くとグレンがフンッと鼻を鳴らした。

「昨日のお肉が一番合うと思うけど、豚肉……オークのお肉でも鳥のお肉でも食べられるよ。ただ、卵は新鮮なものじゃないとおなか壊すかもしれないから気を付けてね」
「卵がないとダメなのか?」
「卵はお肉の熱冷ましと味の濃さの緩和とお肉のくさみを取るんだよ。鳥なんかは淡白だから味に深みを出す役割りもあったと思う」

 疑問を呈してきたアーロンさんに説明すると「ちゃんと理論があるのだな」と納得してくれた。

「納得してくれたところで、付け合わせのスープの説明するね」

 これもミソの実を出すと揃って驚かれたけど、ショユの実のときみたいに怒鳴られたりしなかった。

「すき焼きは別として、基本的にショユの実は炒め物で、ミソの実はスープに使うことをオススメするよ。その方が失敗しないと思う」
「炒め物だと?」

 見なきゃ納得しないかと干し肉出汁のお味噌汁と簡単な野菜炒めを作って見せると、先ほど怒鳴っていた料理人さんがプルプルと震えだした。
 再びサッとグレンとジルが私の前に出てくれたので、背中から顔を覗かせて様子を窺うと、俯いた料理人からポタポタと床にしずくが落ちてギョッとしてしまった。
(え!? えぇ!? なんで泣いてらっしゃるの!?)

「さっき言っていた注意事項とはなんだ?」
「え、えっと……このショユの実とミソの実は木にみのるけど、全部収穫すると実ができにくくなるらしいんだよね。だから乱獲に気をつけないと、手に入りにくくなるよっていう注意事項」
「なるほど。それは重大だな」

 泣いている料理人さんを放置してアーロンさんの質問に答えた。
(これは放っておいた方がいいってことかな?)

「えっと、じゃあ私が元々登録する予定だった料理の説明に入りますね。今回は料理人さん達にも協力してもらいたいんですけど大丈夫ですか?」
「あぁ、やらせてもらおう」

 涙を耐えてすごい顔になっている怒鳴っていた人が反応してくれたので、野菜のカットとひき肉作りをお願いした。
 レナードさんが準備している間に兵士の人を呼びに行ってくれた。

「今回はこのカレー粉を使います」
「あぁぁぁぁ! そ、それを食べるのですか!? め、めめめめ目潰しですよ!?」

 盛大に反応をしてくれたリシータさんに笑ってしまう。

「大丈夫。ちゃんと食べられるハズだから」
〈この匂いはタンドリーチキンを作るのか?〉
「ううん。アレは調整が難しいから今回はドライカレーだよ」
〈初めてのやつか! われも食べられるのか?〉
「うん。そのために料理人さん達に手伝ってもらうんだよ」

 トマト缶があれば普通のカレーの方でもいいんだけど、ホールトマトの説明が面倒なので今回はドライカレー。
 フライパンがないので浅鍋で炒めたものを寸胴鍋に移してから、カレー粉やコクを出すためにウスターソースの粉を加えていく。

〈タンドリーチキンとは匂いが違うな〉
「なんだこの食欲をそそる匂いは……」

 グレンやアーロンさんが何か言ってるけど、ちょっと真剣な私は反応できない。
 この世界でのドライカレー作りは初めてなので、味を見ながら調整していく。レシピ登録があるからちゃんと記憶しておかないと……

「うん。大丈夫。できたよー!」

 私がみんなに声をかけると、全員がギラギラとした捕食者のような瞳をしていてちょっと怖い。
 レナードさんが呼んでくれた兵士の中には手紙を届けてくれた犬耳の人もいた。

 もう既にお昼ご飯の時間を過ぎていたので、ドライカレーがお昼ご飯扱いになった。
 お皿に盛り付けてみんなに渡してから食堂の席に移動する。
 どうやって食べるのかと私の説明を求める視線を感じる中、ちぎったパンに付けて食べてと説明すると、早速みんなはパンに手を伸ばした。

「ピリッとくるスパイス加減が美味しいです」
〈んまい! これはご飯とも合いそうだな〉
「そうだねぇー。ご飯も美味しいけど、今は我慢して?」

 カレーの匂いのせいか昨日よりも使用人や兵士さん達からの視線を感じてグレンにお願いすると、グレンもわかってくれたらしい。
 ドライカレー自体は美味しいけど、ナンが食べたくなってしまった。
 ドライカレーを使ってカレーパンもいいかもしれない。

「美味い! 美味すぎる!」
「陛下、美味しいのはわかりますが飛ばさないで下さい」
「むぐっ! もにひぃしゅ」
「アーノルド、くちの中のものを飲み込んでから話してください。それにしてもあの粉がこんな料理に化けるなど思ってもいませんでした」
「…………」
「コレは素晴らしいですネー! とても美味しいデース!」

 アーロンさん達は昨日よりも食べるスピードが早く、山盛りパンがすぐになくなって料理人の人に追加の指示を出していた。
 リシータさんはひとくち食べては何かをメモしている。


 食べ終わった後、再び私達は厨房にお邪魔した。

「国を上げてこの料理を普及させたい」
「え」
「ダメか?」
「いや、構わないけど……」

 困るとすれば私にカレー粉が回ってこなくなること。私もカレーが食べたい。
 それを伝えると、リシータさん達タルゴー商会が私の分として一定量確保してくれることになった。

しおりを挟む
感想 1,816

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。